根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep2/act.11 Mr.エド


前にも似たようなことがあった。
殺し屋は基本的に暗殺が当然。しかし、若い頃にボディーガードに見つかった。
ナイフ等の武器は取り上げられ、力だけじゃまず及ばない大きな肉体。

そんな時に閃いたんだ。突破方法が。

「ヘンリー、いいか、俺の合図で鋭利で小さな氷を無数にアイツにぶつけてくれ」

「追撃もなし。もう諦めたのか?ならば、バロン究極の技で終わらせてやろう」

バロンは斧をぶんぶんと振り回し始めた。

「行くぞ。【獄炎の舞ブレイズ リース】」

斧から全身を纏う程の獄炎。
そのまま一直線に俺の元へ飛び掛る。

「ビンゴだ。頼むヘンリー!」

俺は上体を横に逸らしながら合図をした。
ヘンリーはナイフのような無数の氷をバロンに向けて放った。

「小賢しい」

バロンは獄炎の斧でそれらを溶かした。
バロンの周りに大雨が降り注ぐ。

「作戦か?こんなもんじゃ俺の獄炎が消されることはない」

「バーカ。そんなん予想通りだ」

これは、サクラに見せたかったんだが、しのごの言ってる時間はねえな。
俺はバドムに貰った雷を更に集めやすくしたリングを人差し指にはめた。

すると、今まで全身に散らばっていた雷どころか、周りの微々たる電気すらをも指先に溜められていった。

「これで終わらなきゃ本当に終いだ。頼むぜ」

指先から今までではあり得ない程の電撃をバロンに放った。
バロンの周りの雨が、凄まじい音を立てて感電し、一瞬のうちに消えた。

どうだ…。
じんわりと汗が滲んだ。

砂煙と注がれ尽くした雨。
水浸しの地面には、黒く焦げ、蒸気と共に倒れているバロンの姿があった。

「俺たちの勝ちだヘンリー」

指揮官が倒されたことで逃げ惑う魔族。

「後追いはなしだ。俺たちも加勢に行こう」

俺とヘンリーは城へと向かった。







『閑話小話 エドの過去』
エドがまだ殺し屋を始めたばかりの話。

エドは初めて、大きな依頼を受けた。
大企業の社長を暗殺すること。
理由は、大量の麻薬売買、偽札製造を国から黙認されている為。

雨が降り注ぐ夜、雨音に紛れるようにエドはその社長の家へと侵入した。
家はかなりの豪邸で、使用人や警備が中から外まで多数徘徊していた。

「そこで何をしている」

社長室目前、エドは警備服もスーツも着ていないグラサンにタンクトップの男に見つかる。
社長専属のボディーガードらしく、腕がかなり立つ。
迎撃態勢を取る間も無く捕まり拘束、武器を押収された。

もうお終いかと思ったその時、閃いた。
右腕の袖元に忍ばせておいたナイフで縄を切って逃走した。
肉弾戦ではまず勝ち目はない。
適当な部屋に駆け込み、机の下に隠れる。
呆気なく見つかり、机を持ち上げられる。
エドは隠れたかったわけじゃなかった。

机に手が集中し、前のめりになった瞬間にボディーガードの足を全体重かけて蹴る。
ボディーガードは大きな音を立てて倒れこんだ。そのままアゴを殴りつける。

対象者以外の殺しはしない主義。
そのまま殺せたところを、エドはボディーガードを起き上がれない状態にした。
ボクシングでアッパーがあるように、アゴの先端を思い切り殴ると、直接脳が揺れ、意識があっても身体が動かなくなる。

そのまま袖元の担当で社長の喉をかっ切り、エドは危ないながらも依頼を成功させた。


※非常に危ないことなので真似しないで下さい。
一般の人のパンチでこのような状態になることはあまりないですが、最悪相手に障害を持たせる可能性もあります。

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