根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep2/act.8 急げ召喚!


召喚施設は想像よりも狭かった。
たまに見かける道場のような…それでもそこまで広くもない。

正方形の部屋に、四隅には足の長いロウソクが立てられていた。
シンスケさんは僕たちを置いてそそくさと召喚の準備を始める。

「よし、まずはエドからやってみよう」

エドさんはコクリと頷き、細くとも威圧感のある短剣を受け取った。

「自分の手を傷つけるってのは中々に勇気がいるもんだな」

ニヤつきながら言ってみせた。
サッと切り込みを入れ、中央の模様に血を垂らした。
すると、淡い光と共に一体の動物が現れた。

「こいつは…ペンギンか…?」

青い体に鋭いクチバシ。どこからどう見てもペンギンのような外見に、少し違うとすれば小さい羽と大きい羽がついてることだ。

「アンさんがワシの主人かいな。なんやイケメンさんやな、気に食わんわぁ」

なんか言ってる。ペンギンがなんか言ってる。
これには流石のエドさんも呆然としている。

「ワシは氷河海バンブスの番人をしとったヘンリーや。まあ折角なら仲ようしようや」
「俺は雷魔法を扱う転移者のエドだ。相棒としてよろしく頼む」

なんだかんだで打ち解けるのが早いエドさんだった。

ヘンリーがどくと、そこには血の雫の跡はどこかに消えていた。
次は僕の番かと、緊張でいっぱいだった。

同じように進める。血を出すのは怖かったので、無理矢理シンスケさんに協力をしてもらった。

模様に血が垂れる。静かな淡い光に包まれるはずだった。

いきなり地響きと共に地面が揺れる。
物凄い音と同時に施設の天井が崩壊し始め、太陽の光が入って来た。

「敵の襲来だ!戦闘態勢に入れ!」

シンスケさんは叫んだ。
すると、僅かながら外から声が聞こえた。

「無駄だよシンスケく〜ん。君がいることも、ましてや英雄様お二人が揃っていることも我々は知っている。既に君たちに勝ち目はなくなったんだよ〜」

背中が凍りつくように驚いた。
僕らがいることすらバレていて、その上で戦力を確保して攻めて来たのだ。

そりゃあ堂々と攻め込んで来られるだろう。
余計なことを考えていたら、崩壊してきた大きな岩にまで意識が向かず、下敷きになると悟った瞬間。

「出てきて早々これかよ〜」

降り注ぐ天井はいつの間にか木っ端微塵に粉砕され、僕の前には知らない女の人が立っていた。

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