裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

274話



応用の5日間はパーティーでの戦闘訓練だけだったようだ。
空の明かりがオレンジがかってきたから、今戦闘しているパーティーが終わり次第、授業は終わりだろうな。

2日目と3日目は6対1の戦いが続き、やっとそれなりの戦いが出来るようになってきたと思ったら、4日目からはセリナとヴェルの2人を同時に相手にすることになり、微塵も勝てる気がしないほどの完敗だった。
加減している相手に負けるとか、パーティー内の空気が最悪だったな。なによりも勝てるビジョンが浮かばないから、たいした話し合いも出来ずに再戦してまた完敗するなんて感じで、空気が悪くなる一方だった。しかも、4日目からはセリナとヴェルの2人ともを相手にするから必然的に1パーティーごとの戦いになったため、自分らが戦った後に5パーティー分の待ち時間があるからと途中の話し合いの時間を取らなくなった。そのうえ1試合にかかる時間が短くなったせいでむしろ回転が早くなり、戦う回数が増えた分負けを積み重ねることになって、空気が急降下だ。

このパーティーで戦ったおかげで、今までのアリアたちとのパーティーが恵まれていたことを本気で実感した。

アリアたちとのパーティーなら、俺が新しい戦い方を試したりして、本気とはいい難い戦い方をしてても敵を倒せないということはなかった。ただ、それは周りがフォローしてくれていただけなんだろうな。
少なくとも、勝てない相手がいたとしても俺以外のやつの空気が悪くなることはなかったと思う。というか、不機嫌になって空気を悪くする前に勝てるように努力しろよ。

いや、違うな。俺は途中から勝ち負けなんてどうでもよくなっていたから、実際は周りの空気なんて気にしてなかったしな。
俺はもともと剣の練習がしたかっただけだし。

たぶん1人だけ未成年のクレハが何もいえなくて肩身が狭そうにしてたから、パーティーの空気の悪さが少しだけ気になっただけだろう。
仕方がねぇから最終日の今日は得手不得手を考慮してセリナとヴェルの相手を完全に分ける作戦を提案したうえでテンコの力を少し借りた。おかげで完敗から惜敗くらいにはなったけど、けっきょく最後まで勝つことはなかった。

まぁ昨日よりは空気が悪くならずに終われそうだから、作戦を提案したのは無駄ではなかったんだろうな。

他のやつらはどう思っているか知らんが、剣の練習にもなったし、普段のパーティーに恵まれていることにも気づけたし、俺としては悪くない授業だった。

授業内容自体は同じような内容で楽しいってわけではなかったが、毎日同じような授業を受けてからクラスメイトと雑談しながら帰路につくってのはなんだか懐かしくて悪くはなかったな。

俺がこの冒険者応用の授業を振り返っているうちに最後のパーティーの戦闘が終了したようで、セリナが倒れているやつらに『ヒール』をかけて回り始めた。

セリナはぶっ続けで戦闘しつつ、倒れたやつに『ヒール』までかけて大変そうだな。
最初の授業で『ヒール』は覚えさせてるんだから、その辺に放置しときゃいいのに。

「冒険者応用はこれで終わりだよ〜。カードを更新するから、通行証を持ってきてね〜。あと、ここにいる36人はみんにゃ合格だから、冒険者実戦の授業が受けられるようにしておくけど、受けたい人は授業開始までに総合受付で詳しい説明を受けてね〜。直近の開始日は明後日だよ。更新終えた人から解散ね!」

ん?冒険者の授業にまだ先があるのか?掲示板に貼られていたのは応用までだったと思うんだが。
わざわざ合格とかいっているから、合格者にしか教えないようにしてるのか?

他のやつらは疑問に思っていないのか、セリナにカードの更新をしてもらっているようだ。まぁ考えていても意味ないし、俺も更新するか。

俺は動き出すのが遅かったせいで、行列の最後尾に並ぶことになった。デュセスとクレハもなぜか俺が動くのを待っていたようだから一緒に順番待ちをしている。
まぁクレハは乙女の集いの中で1人だけこっち側に呼ばれたうえに周りが大人しかいないから知り合いの側にいようとするのもわかるが、デュセスは話しかけるでもなく常に近くにいる意味がわからん。べつにいいけど。

しばらくして俺の番となり、俺が通行証をセリナに渡すと、通行証を魔法陣が描かれた板に挟み、代わりに違うカードを渡してきた。

どういうことだ?一つ前のデュセスはカードを板で挟んだあとに取り出したものを返されてたはずだ。

「これはなんだ?」

かるく周りを見て近くにデュセスとクレハ以外の人がいないことを確認してから、小声でセリナに確認をとった。

テキーラ・・・・の冒険者カードだよ。」

「俺の冒険者カード?」

俺の冒険者カードはアイテムボックスに入れていたと思うんだけどなと思いながら、渡されたカードを見てみると、今まで模様かと思ってスルーしていた部分が文字だったようで、冒険者ギルド、テキーラと書かれていた。
あぁ、俺のというよりテキーラのってことか。

そういやアリアに頼んでいたんだったな。本当に作れるとはさすがアリアだ。

確認のためにの冒険者カードを出して見てみるとこっちは冒険者ギルドとだけ書かれていた。ん?よく見るとセリナに渡された方のテキーラという字はカードの上からペンで書き足しただけっぽいな。字が綺麗だからぱっと見じゃ気づけなかった。たぶんおれがカードを使い間違えないように気を使ってくれたんだろう。

「なんで2枚持っているの?」

俺の手元を覗き込んできたデュセスに質問されたがスルーだ。

「イーラの分も出来てるのか?」

俺の質問にセリナがチラリとデュセスを見たが、セリナも無視することにしたみたいだ。

「イーラの分は明日だってさ。テキーラの分は今日の授業が終わるまでに必要ににゃるかもしれにゃいからって、アリアが授業始まるギリギリまでソフィアちゃんと頑張っていたみたいだけど、イーラの分までは間に合わにゃかったらしいよ。アリアが急ぐってことはこの後冒険者ギルドに行く予定でもあるの?」

「いや、とくにそんな予定は立ててないんだけど。でも、早いに越したことはないから助かるよ。ありがとう。」

セリナにお礼をいってから2枚の冒険者カードをアイテムボックスにしまい、そのあと渡された通行証もアイテムボックスにしまった。

後はいつも通りにリスミナたちと合流し、クレハは他の乙女の集いのメンバーで帰り、俺とデュセスとリスミナとローウィンスの4人は雑談をしながら帰る流れになった。

といってもわざわざ帰る時間をわけたりしてるわけではないから、ほとんど8人で帰っているようなものだが、年齢的に話題が微妙に違うのか、自然と4人ずつにわかれるだけだ。

「ねぇ、明日こそは一緒にギルドの依頼を受けようよ?」

今日の授業でリスミナとローウィンスも合格出来たといって話に一区切りがついたところで、リスミナが俺らに対して聞いてきた。

そういや前回は断ったんだったな。そのせいでデュセスに俺の正体がバレたんだが…。

そういやちょうどテキーラのギルドカードをアリアが作ってくれたところだし、試す意味も込めて使ってみるのも悪くないな。

…ん?

……ちょうどカードができた?

いや、たまたまだよな…まさかな。

「俺はかまわないよ。」

「私も平気。」

「ごめんなさい。私は用事があって行けません。気にせず3人で楽しんで来てください。」

俺が了承したらデュセスも了承したが、ローウィンスは断った。さすがにラフィリアの冒険者ギルドには顔を出せねぇわな。もしかしたら普通に仕事があるだけかもしれんけど。

「そっか…残念だけど、アインはまた今度一緒に行こうね!2人はこの後時間ある?」

「あんま遅くならなければ俺は平気だよ。」

「私も問題ない。」

「じゃあ一緒に冒険者ギルドに行って、依頼を見てみようよ!今日いいのがあったら受ければ明日の予定を組みやすいし、なかったらまた明日探せばいいしね。」

まぁ依頼探しくらいなら飯までに帰れるだろう。だが、一応連絡しといた方がいいか?

以心伝心のブレスレットでアリアに連絡を取ろうかと思ったらローウィンスと目が合い、なぜか頷かれた。
伝えといてくれるってことか?ならローウィンスに任せよう。

「リスミナはずいぶんと楽しそうだね。」

「だってテキーラくんとデュセスが一緒ならいつもより割りのいい依頼が受けられるし、1人で依頼をこなすより楽しいだろうからさ。」

へぇ。リスミナはソロなのか。そこまで強いイメージはなかったが、ソロで冒険者が出来てるってのは凄えな。俺は早々に諦めたからな。正確にはレベルを上げてからソロに戻るつもりだったが、予想外にもアリアが解放されることを拒否ったからな。実際、あのまま仲間でい続けてくれたおかげでかなり助かってるけど。

「一応いっておくけど、俺は討伐依頼以外はたいして役に立てないと思うからね。討伐依頼にしてもあまり期待はしないでね。」

「私は指示をもらえればたいていはできると思う。でも、冒険者ギルドカードは持っていないから、依頼を受けたり素材を換金したりは任せる。」

「じゃあ討伐依頼で探してみようかな。雑務は私がやるから大丈夫だよ。」

この後の予定を決めているうちに村の入り口近くに来たからローウィンスとは別れて、3人でどんな依頼がいいかなどを話し合いながらラフィリアの冒険者ギルドへと向かった。







ラフィリアの冒険者ギルドに入ると人が多く、面倒ごとが起きる予感が半端ない。

今までちょいちょい面倒な絡まれ方をしたからそういうイメージが染みついているだけだったようで、リスミナについて掲示板のところまできても誰にもからまれなかった。
ガヤガヤと言葉として拾えない音が重なってなかなかにうるさくはあるが、ほとんどが受付に並んでいるか、テーブルで話し合いをしているかだから、掲示板に用があるようなやつはほとんどいなかった。そのせいか、いくつかの視線は感じるが近づいてくるやつはいない。

「これなんてどうかな?」

リスミナが見せてきた依頼書はサーベージボアの皮と肉の納品依頼のようだ。

依頼書が読めるというのが不思議な感覚だ。

まぁ読めたところで聞いたことない魔物だから、どんな相手か知らないし、素材回収なんかまともにしたことないから、俺に聞かれたところで答えに困るんだがな。
でも皮は剥いだことあるな。武器防具屋のおっさんに下手くそだっていわれた気がするけど。

「俺はあまり魔物に詳しくないし、素材回収はほとんどしたことないから任せるよ。」

「3人でそれだけだと簡単すぎる。もう少しお金になる依頼を選ぶべき。」

この依頼は3人だと簡単な依頼に入るわけか。

「デュセスは素材回収とかしたことあるの?」

「訓練課程にあったから、最低限は出来る。珍しい魔物の特殊な素材回収とかはわからないけど、ボア系の素材回収くらいは普通に出来る。リ…テキーラは出来ないの?」

「俺はほとんどしたことないからやり方がイマイチわからないかな。じゃあ倒した後は2人に任せるから、その分2人の取り分は多めにするってことでいいかな?」

「私は構わないけど、リスミナはどう?」

「私もいいよ。むしろ素材を剥ぐだけで多めにもらえるなら嬉しいかな。」

なんかこの世界にきて初めて俺が思い描いていた冒険者らしいことをしている気がする。

「ならこの依頼は受けるとして、同時にもっと高難易度の依頼を受ければいい。これなんてどう?出現場所もそこまで遠くない。」

デュセスが指差している依頼書を見ると、アシッドウルフの溶解液の納品依頼みたいだ。名前からどんな魔物かはなんとなく予想できるが、武器防具を劣化させそうな相手だな。

「デュセスがその依頼でも問題ないっていうなら受けるのはかまわないけど、私はDランクだから受けられないよ?2人は受けられるの?」

よく見るとBランク依頼って書かれてるな。

「私は冒険者じゃないから受けられない。」

「俺はFランクだからリスミナが受けれないならダメだね。」

依頼を受けられないことを知ったデュセスがわずかに不満顔になりながら、再度掲示板を見始めた。
リスミナもサーベージボアの依頼と一緒に受けられそうなのを探し始めたようだ。

せっかくだから俺も見てみたが、単なる討伐依頼ってあんまりないんだな。あってもBランク以上だけだ。この辺は冒険者が多そうだから、わざわざ依頼を出さなくても程よく駆除されてるのかもな。近くの村が微妙な強さの魔物に襲われたりなんかの被害があれば低ランク向けの依頼もあるのかもしれないが、今はなさそうだ。
今ある中で俺たちが受けられる依頼は納品依頼や町のお手伝いのような仕事だな。納品依頼は討伐しなければ得られない魔物の素材もあれば、薬草の納品依頼もあるみたいだが、どっちも名前だけだと俺には全くわからん。薬草の本はアリアにあげちまったしな。

依頼選びは2人に任せてなんとなく冒険者ギルド内を見回してみたら、何人かがこっちを見ていた。こっちを見ながら仲間内で笑いあっているようにも見えるが、俺は見たことない奴らだと思うんだよな。だから気のせいだとは思うんだが、気のせいではない気もする。

「テキーラはどう思う?」

こっちを見ているやつらを見返していたら、いきなりデュセスに話しかけられて振り向いた。

「ごめん。聞いてなかった。どうしたの?」

「リスミナと話してこの3つも一緒に受けようと思ったんだけど、テキーラはどう思う?」

デュセスの手元の依頼書を覗き込もうかと思ったけど、どうせ魔物の名前を見たところでわからないし、2人がいいならいいや。

「2人がいいと思うなら俺はかまわないよ。ただ、俺は討伐は出来ても他は何も出来ないからよろしくね。代わりに報酬の割合は俺が1割で残りを2人で半分ずつでいいから。」

「「いいの?」」

2人がキョトンとした顔で声をハモらせて確認してきた。

今まで俺の総取りだったから正しい分け方なんか知らんけど、この反応はミスったっぽいな。まぁべつに俺的には3人で遊びに行くような感覚だから、報酬はなくてもいいくらいなんだけどな。素材を売ってもたいした金にならないことは身をもって知っているし。

あれ?でもあのときは珍しいといわれたけど、イビルホーンってそこまで珍しい魔物じゃねぇよな?もしかしてわざわざ素材を売りに来るのが珍しいとかそういうことか?いや、銀貨27枚は日給3日分くらいだろうから、それなりに高く売れているはずだ。つまり、この辺りでは珍しいということのはずだ。そう思っておこう。

「いいよ。素材回収は本当にほぼ全く出来ないからさ。」

本当は報酬割合は2:5:5がいいかと思ったが、いっても通じなかったときに説明するのが面倒だし、今さら変えようなんていうのもなんだから、このままでいいや。

「じゃあお言葉に甘えようかな。実は学校行きながらのソロだと収入が心許なくてさ。ありがとう。」

「私も予想外の戦闘で思ったより出費がかさんだから助かる。」

学校があると時間がかかりそうな依頼は出来ないだろうから、たしかにリスミナは大変だろうな。
デュセスがいってる戦闘ってのは俺に喧嘩売ってきたときのことだろうから、ちゃんと確認せずに戦闘を仕掛けたデュセスの自業自得だ。

「待ち合わせはどうしようか?」

「4つも依頼を受けるなら明日は冒険者ギルドに寄る必要もないし、日が出きったくらいに誰かの宿屋で待ち合わせて、朝食を一緒に食べながら細かい予定を決めてから向かうのでいいんじゃないかな?」

今から細かいことを決めてしまえばいいのに、なんでわざわざ明日決めるのかと一瞬思ったが、時計がないから待ち合わせの目安にする時間が日の出と正午と日の入りくらいしかねぇのか。だから、早いけど日の出で待ち合わせて時間調節もかねた朝食と話し合いって感じか。…めんどくせぇな。
あぁ、だからうちの村にはあんなに大量な砂時計を置いているのか。いや、なら時計を作れよと思ったが、そういうものがあることを知らなければ作れねぇのか。まぁ俺は時計の存在を知っていても作れねぇけど。
俺の腕時計を提供すれば、アリアなら作れたりするのかね?いや、電池がなきゃ無理か。俺のが手巻きタイプなら真似できたかもしれないが、ソーラーパネルじゃいくらアリアでも見ただけで仕組みなんかわかんねぇよな。

「私はそれでいい。でも、私の宿屋は朝食がない。」

俺が余計なことを考えていたら、デュセスがリスミナに賛同した。俺もべつに反対したかったわけじゃねぇし、それでいいや。

「俺が寝てるところも朝食を一緒に取るのは難しいから、リスミナの宿屋でいい?」

「私が泊まっているところは昼から食堂もやってるから今日のうちにいっておけば大丈夫だけど、朝食がスープとパンで銅貨50枚で、パンを1つ追加する毎に銅貨10枚かかるけど大丈夫?」

リスミナが心配そうに確認を取ってきたが、むしろ安くないか?もしかして俺の金銭感覚がおかしくなってんのか?

「私は平気。パンも1つで十分。」

「俺も問題ないよ。ただ、パンは3つで頼んでおいてもらってもいいかな?」

「けっこうパンは大きいよ?このくらいだけど大丈夫?」

リスミナが両手で丸を作って大きさを教えてくれたが、けっこう大きいな。パン屋で売ってる大き目のブールくらいか。

「じゃあ念のため4つでお願い。」

「増えるんだ!わかった。じゃあ宿の人に2人分の朝食も頼んでおくね。」

リスミナが笑いながら了承してくれた。
この世界に来てから俺自身の食う量が増えたのもあるが、もちろん俺1人で食うわけではなく、イーラのことも考慮しての4個だ。朝早いから村で朝食を取る時間はないだろうし、飯抜きだとイーラが文句いいそうだからな。

「ありがとう。よろしくね。」

俺がお礼をいってアイテムボックスから銅貨80枚を取り出してリスミナに渡すと、デュセスも銅貨50枚をリスミナに渡した。

「じゃあこの依頼を受けに行こう。」

銅貨を受け取ってアイテムボックスにしまったリスミナが依頼書をヒラヒラと振って俺らに見せてきた。

「私は冒険者じゃないから待ってる。」

「じゃあさっさと受けちゃおう。」

俺も待っているといおうとしたら、リスミナに手を引かれ、まだ混み合っている受付の列へと並ぶことになった。

なんとなく振り向いてデュセスを見たら、高ランク向けの依頼書を眺めながら時間を潰すつもりみたいだ。

まぁせっかく冒険者ギルドのカードを作ってもらったんだし、1度くらい使っておくか。

「1度にこんなに依頼を受けるのは初めてだよ。」

「俺も初めてだな。」

俺の場合は冒険者ギルドの依頼を受けること自体が初めてなんだけどな。

「普通はパーティーでもこんなに1度に受けないからね。テキーラくんとデュセスがいれば平気だと思ってたけど、本当に明日1日で終わるのか心配になってきたよ。でも、サーベージボア以外は期限が10日だから明日終わらなくても次の休みにやればいいからなんとかなるよね?」

「依頼に期限とかあるんだね。」

「…え?」

思ったことをそのままいったら、リスミナが固まった。この反応は冒険者なら知らなきゃマズいことっぽいな。

「いや、今まで依頼を受けてからだいたい1日、2日で終わらせてたから、期限とか気にしてなくてさ。学校行くまで字が読めなかったし。」

「あ、そういうことか。でも、いくらすぐ終わる依頼だからって、ギルドの人もちゃんと教えてあげなきゃダメだと思うな。」

なんか納得してくれたけど、ギルド職員が悪者みたいになっちまった。
冒険者ギルドにいるやつらは職員も含めて変なのが多いイメージだが、ここの受付の人たちに限っては全く悪い印象がねぇから、なんか申し訳ねぇな。

「いや、ここの受付の人はけっこう丁寧に教えてくれてたから、俺が聞いてなかっただけだと思うよ。」

「字が読めないのに話もちゃんと聞かないって、テキーラくんもそういうところは冒険者なんだね。」

リスミナが笑いながら馬鹿にしてきたが、不思議とイラつきはしなかった。まぁ冗談だろうからな。

2人で雑談しているうちに俺らの番となり、依頼書と一緒に冒険者カードを出して受付は完了した。

受付の人は2人で大丈夫かと心配するように確認してきたが、1度平気だといってからはしつこく何かをいわれることもなく受け付けてくれた。

そのあとはデュセスとともにリスミナの泊まっている宿屋の場所を確認してから解散となった。



…そういやアリアに剣を壊したことを謝って新しいのを借りねぇとな。

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