裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

250話



ジャンヌとの話が終わってからもとくにすることもなく、部屋でゴロゴロとしているうちに1日が終わりそうだ。

今日みたいに暇な日に一日中ゴロゴロとしているのも、たまにある分には好きだが、これから毎日暇だと飽きそうだな。

近いうちに学校にでも通ってみようかと思ったが、どうせ暇だから明日から通ってみようかな。

さすがにこのまま通うわけにもいかないから変装の必要はありそうだが、町にサングラスとか売ってたっけか?いや、そんな簡単な変装だとすぐにバレちまうだろうから、もっと本格的な変装が必要か。
セリナにバレないための匂い対策は香水でもつければなんとかなるだろうし、髪も染めれば…いや、そのくらいじゃたいして見た目が変わんなそうだし、カツラあたりを探してみた方がいいかもな。

想像の中で髪型を変えたり服装を変えたりとしてみたが、どれもイマイチな気がしてならない。だからといって女装なんかは絶対にしたくないから、いっそ変装せずに堂々と通おうかと諦めかけた時に閃いた。

イーラを纏って変身させれば変わるんじゃねぇか?

試したことはないんだが、なんか名案な気がしてきた。

「…リキ様。夕飯の支度が整いました。」

俺がイーラを呼びに行こうかと思ったところで扉がノックされ、続いてアリアが声をかけてきた。

もうそんな時間かと思いながら、待たせるのも悪いから、すぐに扉を開けて部屋を出た。

「ありがとな。じゃあ行こうか。」

「…はい。」

アリアと並んで食堂へと向かった。

道中話すことはとくになかったが、静かにアリアと2人で歩く時間もなんだか懐かしく、こういうのもたまには悪くないなと思っていたら、アリアと目があった。

「…リキ様。」

アリアが声をかけてきたからしばらく待ったが、名前を呼ばれただけで終わった。

「どうした?」

「………神薬を作りました。まだ1つしか出来てませんが、リキ様のために頑張って作りました。なので……………褒めてほしいです。」

…ん?アリアがそんなこというなんて珍しいな。
親の愛情がほしいお年頃か?いや、この前もっとワガママいえっていったのは俺だったな。

というか、聞き間違いじゃなかったら、神薬を作ったっていったよな?めちゃくちゃ凄えじゃん。

俺はアリアの前にしゃがんで目線を合わせ、出来るだけ優しくアリアの頭を撫でた。

「やっぱりアリアは凄えな。ありがとう。アリアは自慢の仲間だよ。」

アリアがわずかにだが微笑んだ。

いざ褒めろってなってもなんといえばいいかわからなかったが、アリアは嬉しそうにしてるから、一応正解だったのだろう。

アリアには本当に感謝しているが、それを伝えるのって難しいな。

歩を褒めるんだったら脇の下を持って持ち上げて振り回したかもしれないが、アリアに同じことをするのはなんか違う気がするしな。それが出来んのはイーラとテンコ相手くらいだろ。

「…………ありがとうございました。みなさんが待っているので、食堂に向かいましょう。」

しばらくアリアの頭を撫でていたら、アリアが飯のことを思い出させてくれた。
アリアが喜んでいる姿を見るのも悪くなかったから、飯のことをすっかり忘れちまっていた。

「そうだな。」

アリアから渡された神薬をアイテムボックスにしまい、あらためてアリアと並んで食堂に向かった。








俺が着席したことで全員が揃ったようで、俺の「いただきます。」待ちとなった。

つまりは全員が俺に視線を向けている状態で、話すならちょうどいいタイミングだろう。

「飯の前にちょっといっておくことがあるんだが、俺は明日からしばらく日中は出かけることにした。付き添いはイーラとテンコに来てほしいが、他のやつには遠慮してほしい。夕飯までには基本帰ってくるし、出かけるのは朝飯を食ったあとだから、全く会えないわけじゃねぇ。先にいっとくが俺が何をするかの詮索はなしだ。それで、イーラとテンコの予定は空いてるか?」

「空いてるよ!」

「一緒に行く!」

1番重要な部分の確認が後回しになっちまったが、大丈夫だったみたいで良かった。
テンコは念のためだ。さすがに村の中で変なのに襲われることはねぇだろうが、ジャンヌがいるから、俺と気づかず喧嘩を吹っかけられても対応出来るようにしとかなきゃな。

「アリア、なんかあったら以心伝心の加護で呼んでくれれば帰ってくるから、問題ないよな?」

「…はい。」

アリアの返事を聞いた後に周りを見渡してみるが、不満そうな顔をしたやつが1人もいない。

セリナあたりが私も行きたいとか駄々をこねるかとも思ったが、とくに文句はないらしい。
まぁずっといないわけじゃなくて日中いないだけだからな。
今日なんて日中は部屋で1人で寝てただけだし、いてもいなくても変わらねぇよな。

アリアの許可もあったから、安心して明日から楽しめそうだ。

「そんじゃ、待たせて悪かったな。いただきます。」

「いただきます!」

全員の返答のあと、いつもの賑やかな食事が始まった。

コメント

  • 葉月二三

    読み直してくれていたんですね!ありがとうございます!

    ウェブの小説は短いのが多いのであまり好まれないかなと心配でしたが、読み応えがあると思ってもらえているなら良かったです!

    0
  • ユーノ

    最近1話から読み直してたんですけどやっと最新話に追いつきましたw

    1話辺りかなり文字数あるので読み応えがあっていいですね

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