裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

154話



ダンジョンに到着し、いざ経験値稼ぎ組と戦闘訓練組に分かれようとしたら、ロリコンに文句をいわれた。

約束が違うだのなんだのいっていたが、約束は破ってないはずだぞ?

奴隷はみんなダンジョンまで連れてきたし、全員ダンジョン内にいる。俺と共闘したいっていうのは経験値稼ぎ組にくれば済む話だし、あとは弱すぎる敵じゃダメって話だったが、それはこのまま進んでいけばそのうち手ごたえのある敵に会えるはずだから問題ないはずだ。

「くっ…。納得いかないが、確かに屁理屈は通っている。」

屁理屈いうなし。

「だろ?で、お前はどっちにする?俺と来るかガキどもの面倒をみるか。ちなみに今日は地下50階からだが、魔物が強いかはわからない。どうする?」

地下50階の魔物も今までと変わらないなら間違いなく雑魚だが、わざわざ教える必要はないだろう。嘘はついてねぇし。

「…村の子どもたちは何階からなんだい?」

確かアリアの話では地下5階までの魔物は狩り尽くしちゃったようなことをいってたな。

「たぶん地下6階からだ。」

「なら今日はカンノ君たちについて行くよ。」

予想外だな。こいつのことだから考えるまでもなくガキどもと一緒の方を選ぶと思ったわ。
じゃあ念のためイーラには変身を禁止させないとな。

「イーラ。今日はメタモルフォーゼは禁止だ。わかったか?」

「は〜い。」

念話でイーラに命令すると、了承の返事がきた。理由くらいは聞かれると思ったが、いわずとも理解したのか?

「アオイ。今日は慎重にいけ。体の維持が出来なくなって崩れたら困る。」

「承知した。」

アオイにも念話を送ると念話で返ってきた。

アオイは初日にイーラが生み出した体で一昨日、昨日、今日と生活している。だが、まだ完璧に使いこなせるわけではないらしく、攻撃を受けると再生はできない。だから部位が欠けすぎると崩れるらしい。

今のところ攻撃を一度も受けてないから実際には崩れたところは見ていない。だからあくまでらしいだ。
アオイには感覚でそんなことがわかるんだとさ。

「じゃあチーム設定をと思ったが、お前1人だとお前の方が経験値を多くもらうことになるじゃねぇか。」

俺はこいつとパーティーを組むつもりはないが、チームを組んでこいつに大量の経験値を持っていかれるのは納得いかねぇ。
だからといって、チームを組まなかったらボスを倒したときにトドメをさしたのがこいつだったら総取りされると思うと嫌だな。

「そしたら半分は俺のパーティーに入れるかい?」

確かに俺じゃなきゃこいつとパーティーを組んでもいいか。どうせ離れないんだし。

「じゃあセリナとアオイとサーシャはロリコンのパーティーに入れ。イーラとヴェルはこのままだ。」

ヴェルのレベルは上げときたいからこっちを3人にした。あとは俺自身もレベルを上げとかないと死ぬ確率が高いだろう。
イーラはヘマしそうだから残すしかなく、この選択しかできなかっただけなんだがな。

「わかった。」

若干嬉しそうなロリコンが気持ち悪い。

そういや基本ソロっていってたから、パーティーを組めるのがちょっと嬉しいのか?しかも好みのやつらとだから尚更かもな。


あらためて俺がリスタートで生み出した空間を全員が通り、地下50階に下りた。

視界に映る範囲には魔物はいなさそうだ。
ただ、違和感のある壁がある。隠し部屋もしくは隠し通路だろう。

今までもいくつか隠し部屋があったが、どれもただの空間だった。

「セリナ。ここはどうだ?」

「ん〜…。たくさんいるのかにゃ?弱すぎるからにゃのか、よくわかんにゃい!100体以上いそうだし、10体程度にゃ気もする。でも、音は凄くうるさい。」

弱いなら100体でもなんとかなるだろうが、音がうるさいってどういうことだ?俺はなんも聞こえないぞ?

まぁ考えてたって仕方ないか。

「じゃあ入るぞ。」

いうが早いか、俺は隠し部屋に足を踏み入れた。
微かな抵抗を感じながら中に入ると、本能的な恐怖を感じた。

ブーン…。

羽音がいくつも重なって、凄まじい爆音になっている。というか、この音だけで背中に嫌な汗が流れるが、この羽音の原因が蜂型の魔物なのだから、この世界では雑魚だとしても、日本で育った俺が一瞬よりも長い間体が硬直しても仕方ないことだと思う。

『フレアバウンド』

この数を殴って殺すという方法は考えすらしなかった。

こういうときにふと出るのは慣れ親しんだ魔法なんだな。魔法に慣れ親しんでる時点でこの世界に染まりつつあるみたいだが。

目の前に広がるのは火の海。

自分の魔法だからか見た目のわりには熱くない。

5秒ほどして魔法を消すと、炭と化した魔物が床に大量に散らばっていた。
黒い粒が部屋中にばら撒かれてると、なんかウサギの糞みたいだな。もちろん糞よりはデカいけど。

遅れてイーラたちが入ってきた。

今気づいたが、一歩間違えたら仲間を殺してたかもしれないんだな。イーラたちが来る前に殺せてよかったわ。

「あれ?魔物は一体だけ?」

セリナが首を傾げて俺を見ている。
俺がほとんど殺しちゃったからな。でも、5秒も火の海にいて生きてるってヤバい個体なんじゃねぇか?

あらためて前を見ると、真っ黒な巨体が起き上がろうとしていた。

起き上がる拍子に体から黒いのがポロポロと脱皮のように落ちていく。

中からは俺よりも巨大な蜂が現れた。

羽も燃えてないみたいでホバリングを始めた。

さっき殺したスズメバチを少し大きくした蜂型魔物には恐怖を感じたが、ここまで大きいと逆に怖くないな。

「…カンノ君。君が強いのは噂で聞いているが、ダンジョンの隠し部屋に入るときはもっと慎重にならなきゃダメだよ。こういう部屋には…キラビジェネラルか!なかなか厄介な相手だな。だが、おかしい。」

最後に入ってきたロリコンが文句というかアドバイスをしてきた。まぁもっともなことではあるな。

「俺も馬鹿じゃない。今はちゃんと入る前にセリナに確認するようにしている。それより、何がおかしい?」

まだ何かいいたそうではあるが、魔物退治を優先することにしたようだ。

「キラビジェネラルは多数のキラビを従えているはずなんだが、キラビジェネラルしか見当たらない。この階層ではキラビジェネラルが生まれるということか?」

さっきの蜂型魔物がキラビっていうっぽいな。それなら床にと思って視線を下げると、丸焦げの蜂型魔物がなくなっていた。いや、自然消滅する量じゃなかっただろ?あれが全部崩れたらこの部屋は煤だらけになってるはずだ。

俺がキョロキョロと辺りを見ていると、イーラから念話がきた。というかなんで念話?

「何探してるの?」

「床に大量にあった魔物の死骸はどこに行ったかと思ってよ。」

念話できたからなんとなく念話で返した。

「ごめんなさい!食べちゃった…。」

マジか…。
べつにかまわないっちゃかまわないんだけどさ。それよりも俺の観察眼に違和感を与えずに死骸を回収したことに驚きだ。

「キラビならさっき燃やし尽くした。」

「え?カンノ君が隠し部屋に入ってから俺が入るまでそんなに時間の差はなかったと思うが…そもそもカンノ君は魔法も使えるのかい?」

「魔法くらい誰でも使えんだろ?」

俺らが話していると、キラビジェネラルが顎をガチガチと鳴らし始めた。

まずはこいつを倒すか。

「キラビジェネラルはあの顎と尻の毒針が危険だ。それさえ気をつければ問題ない。」

さすが先輩というか、それなりに魔物の知識があるようだ。まぁ見ればわかる程度だけど。

「ここは僕にやらせてもらえないか?」

ヴェルが俺の横に並んできた。
まぁヴェルの強さは知っておきたいし、やらせるか。今までの敵は弱すぎて相手にならなかったし。

「好きにしろ。」

「ありがとう。」

ヴェルは俺の許可を得て、歩いてキラビジェネラルに近づいていった。近づくごとにキラビジェネラルが顎を鳴らす音が大きくなり、間隔が短くなっている。

「おい!1人で行かせる気か!?」

ロリコンが驚いたような声を上げたが、それに誰かが答える前にキラビジェネラルが動きだした。

あの巨体に似合わない速度でヴェルに近づき噛み付いた。

ヴェルは避けずに左腕を出しただけだから、左腕を噛み付かれた。そして、その流れでキラビジェネラルが毒針をヴェルの脇腹に突き刺した。

「やっぱりこれが正しい結果なんだ。僕より硬い父さんにあんなに簡単に傷を与えたリキ様たちがおかしいんだ。」

ヴェルは小声で何かをいっているが、怪我はしていないようだ。やっぱり龍の鱗って凄えんだな。

ただ、毒針の攻撃を避けなかったからシャツに穴が空いたがな。

今はビキニアーマーの上にシャツと短パンを着させている。ロリコンに変な目で見られたら可哀想だからな。

「おい。俺は魔物の攻撃は避けろっていったよな?」

「すまない。一度、そこそこ強い魔物の攻撃を受けてみたかったんだ。次からはちゃんと避けるよう努力するから許してほしい。」

ヴェルは右手でキラビジェネラルの腹部を掴み、力を加えたようで指がめり込んだ。

キラビジェネラルが顎を開くと、今度は左手でキラビジェネラルの顎を掴んだ。

そして、ミシミシという音が鳴り、頭部と胸部が千切れて取れた。

どんな馬鹿力だよ。

「カンノ君。魔法を使ったようには見えなかったが、彼女は身体強化のスキルでも持っているのかい?」

「確か持っていた気がするが、今は使ってないんじゃないか?」

邪龍のときは身体強化っぽいことをしたときに見てわかったし…まぁヴェルの身体強化は見てわからないってだけなのかもしれないがな。

「素の力だけであれか…俺も負けてられないな。」

こいつはなんの勝負をしてんだ?うちのやつらと戦うつもりか?…それはそれで訓練になりそうだが。

そういや決めてないことがあったな。

「今回はお前の依頼でダンジョンに潜っていることになっているが、そこで手に入れた素材はどっちの所有物になるんだ?」

「そうだね。本来なら先に決めて、納得の上で依頼を受けるんだけど、その話をしていなかったね。まぁ今回はカンノ君やカンノ君の仲間たちと3日も一緒にいられるだけで俺は満足だから素材は全て譲るよ。」

魔物の解体なんてしなきゃならなくなったら面倒だったから助かる。

「そうか、それはありがたい。あと、ロリコンは口は堅いか?」

「ん?いうなといわれれば洗脳でもされない限り口を割らない自信があるぞ。そもそも話す相手もほとんどいないしな。」

そういやこいつは友だちとかほとんどいないんだったな。俺がいえたことじゃねえけど。

一応識別を使ったが、真実とのことだ。なら問題ないだろう。こいつを洗脳できるようなやつなんて限られてるだろうしな。

「なら、このダンジョン内で起こることは一切口外しないと誓ってくれ。もちろんこのダンジョン自体も秘密だ。」

「わかった。このダンジョンの存在と中で起きたことについて一切口外しないと少女を愛でる者として誓おう。」

意味がわからないが、クソ真面目な顔でいってるから大丈夫だろう。

「イーラ。魔物は遠慮なく食っていいぞ。」

「は〜い。」

イーラは手を伸ばそうとしたが、メタモルフォーゼを禁止しているからか動きを止めた。

それに気づいたヴェルが千切れたキラビジェネラルを持って戻ってきた。

「食べる!?悪食のスキルでも持っているのか!?それでもやめておいた方がいい。キラビジェネラルは猛毒を持っている。危険だ!」

さっきからいろいろとうるせぇな。心配してくれてるからこその先輩冒険者のアドバイスだというのはわかってるんだが、この世界に来てからここまでいろいろいってくるやつがいなかったからちょっとイライラするな。

いや、日本にいた頃からいってくるやつなんて家族か数人の友だちだけだったな。

そう考えたらこいつは案外ありがたい存在なのかもしれないが、こんな変態を認めたくはねぇな。

「確かにイーラは悪食のスキルも持ってた気がするが、気にする必要はねぇよ。」

ロリコンがどういう意味だ?と聞きかけたときにはイーラの元にたどり着いたヴェルからキラビジェネラルを渡されて吸収していた。

まるで消えたかのような一瞬の作業だ。

今では無抵抗のものなら体で包む必要もないみたいだから凄えな。

変わらない吸引力どころか進化し続ける吸引力だ。いや、吸収力か。

「…何が起きた?」

「イーラが食べただけだ。」

「アイテムボックスにしまわせたってことか?だがそれにしては速すぎるし、そもそも脳は収納出来ないはずだ。食べた?でも手で持っただけだぞ?どういうことだ?」

ロリコンがぶつぶつと呟き始めたな。というか今気になることをいってなかったか?

「アイテムボックスに脳が収納出来ないってどういうことだ?」

「だが、仮に食べたのだとして、手に口がついていたとしても……ん?悪い、アイテムボックスに脳が入らないって聞いたかい?だとしたらその通りだよ。冒険者の中では普通に知られてると思うんだが、そういえばカンノ君も冒険者仲間はいなかったね。なぜか脳は入らないみたいなんだ。脳を取り除いた頭蓋骨やその他の内臓は入るのによくよく考えたら不思議な話だな。生物が入らないのはわからなくないが、なんで死んでも脳だけ入らないんだろう?」

俺が聞いたのに疑問形で返ってきやがった。
まぁわからないから無視するが、なるほどな。だから今までアイテムボックスに入らないことがあったわけか。ちょっとスッキリした。

「イーラは魔族だ。だから瞬間的に死体を食べられるだけだ。口外されちゃ困るが気にする必要はない。」

「…え?」

人がスッキリできたお礼に教えてやったのにこいつは聞いてなかったのか?

「聞いてなかったなら気にするな。」

「いやいやいや!聞いていたさ!イーラちゃんが魔族だって!?見た目は人間じゃないか。…そういえば吸血鬼やサキュバスは人に似ていると聞いたことがあるが、そういうことか?」

「吸血鬼はサーシャだ。イーラはスライム。もう面倒だから先に進むぞ。」

「「「「「はい。」」」」」

「ちょっと待ってくれ!理解が追いつかない。カンノ君は2体も魔族を従えているのか?」

うるせぇな。

「俺の仲間の魔族は3…たぶん6人だ。理解出来ないなら忘れて、なんも考えんな。」

ドライアドたちの中に何人魔族がいるかちゃんと数えなかったからもうちょいいた気もするが別にいいだろう。
俺はロリコンの返事を聞く前に出口であろう、違和感のある壁に足を踏み入れた。

少しの抵抗を感じながら外に出ると、魔物が3体いた。

階段付近にいなかったから油断した。3体のミノタウルスがいっせいにこっちを向いた。

やっと出会えたな。

これで俺がどれだけ成長できたか確認することができる。ただ、3体いるってのが面倒だ。手前の2体は10メートル程で、さらに10メートル程先にもう一体だ。

自分の強さの確認は1体いれば十分だ。

俺は少し位置をずらして、俺と右側のミノタウルスと奥のミノタウルスが直線で結ばれるところに移動した。

ミノタウルスは斧を持ち上げて走ろうとするが、もう遅い。

『上級魔法:電』

かなりのMPを込めたはずだが、魔導師レベルマックスだと1割程度しか減ってないんだな。

手前の1体は鳩尾を貫かれたようで、まだ立ってはいるがたぶん死んでいるだろう。奥のやつは右肩に当たったようで、膝をついて斧を落とした程度だ。攻撃を仕掛けてくるのは時間の問題だろうが、それだけの時間があれば十分だ。なにせ先頭の攻撃を受けなかった方のミノタウルスは既に目の前で斧を振り上げているからな。

振り下ろされた斧を左手で外に流し、右拳をミノタウルスの脇腹に打ち込んだ。
前は少し押せただけだったが、今回はガッツリめり込んだ。さすがに破裂はしねぇか。

ミノタウルスは苦しそうに唾液を大量に垂らしながら斧を手放して、よろめくように一歩下がった。

空いた鳩尾に左拳をめり込ませながら、『会心の一撃』を発動させて右手に力を集中させた。

俺の右手に光が集まるのを視界の隅で確認しながら、目の前のミノタウルスが立っていられず膝をつく姿を見て、自然とニヤついてしまった。だって向こうから顔を俺の殴りやすい位置に持ってきてくれたんだからな。

そして、力の限りミノタウルスの顔面を殴ると、触れた部分が抉れ、首が180度以上捻れた。さすがに弾けはしなかったみたいだが、間違いなく死んでいるだろう。

視線を残りのミノタウルスに向けると、右肩に電撃をくらったミノタウルスは左手で斧を持って走ってきていた。

あと5メートルほどに近づいていたから、もう一度『会心の一撃』を発動させて、右手に力を集中させる。

ミノタウルスが斧を持ち上げた瞬間、PPを大量消費させて、ミノタウロスに飛びつくように近づき、勢いそのままに顔面を殴った。

一瞬、右肩が外れんじゃねぇかと思うほどの激痛が走ったが、ミノタウルスの抵抗自体が一瞬だったようで、顔面を拳型に潰されたミノタウルスが後頭部から地面に叩きつけられてくれたおかげで俺は怪我をせずにすんだようだ。



…。



うん。どうやら俺は強くなれてるみたいだ。
まぁミノタウルスを無傷で倒すのはセリナ曰くたいしたことじゃないらしいからな。とりあえず多少はマシになったというくらいに思っておこう。もう治っているが、実際右肩が少し痛かったし。

振り向くと、全員が既に隠し部屋から出てきていた。

イーラとセリナとサーシャとヴェルはいつも通りだが、アオイは呆れたような顔をしていて、ロリコンは驚いている。

何かあったかと後ろを見るが、後ろには事切れたミノタウルスが3体いるだけだ。新しい敵が現れたわけではないみたいだな。

「イーラとサーシャはさっさと食え。どうやら階層の魔物が急に強くなったようだ。ここからはフロア内の魔物を掃討しながら進むことになるから急ぐぞ。」

「ちょっと待ってくれ!」

「さっきからいちいち止めやがって、なんなんだよ!?」

「いや、もしかしてカンノ君も『一撃の極み』というスキルを持っているのかと思って…。」

「持ってねぇよ。仮に持っていたとしてそれがどうした?」

急ぐっていってんのに質問うぜぇな。

「持っていないというのに打撃耐性のあるミノタウルスをガントレットで殴り殺したのか!?しかも一撃で!?」

「最後の1体はミノタウルスがこっちに走ってくる勢いと俺が飛び出した勢いが乗ったからたまたま一撃だっただけで、最初のやつは魔法だし、2体目は3発だ。」

…………ん?今こいつ打撃耐性っていったか?

「そうか…。君の仲間もたいして驚いているようには見えないし、カンノ君にとってはこれが普通なわけだな。どうやら君を過小評価していたようだ。」

「ちょっと待て。俺の評価なんてどうでもいいが、今ミノタウルスに打撃耐性があるっていったか?」

「いったが、ミノタウルスと戦うのは初めてか?ミノタウルスと戦う時は普通は剣か魔法を使うものだが、知らずに殴っていたのか?」

だから初めてのときは攻撃がほぼ全く通じなかったわけか。そう考えたらおっさんが補修してくれたこのガントレット凄えな。

「あぁ、知らねぇよ。悪いか?」

「え?いや、悪くはないが、相手の長所と短所を知っておくと戦いやすくなるってだけだ。強いやつならそんなこと必要ないのだろうしね。じゃあこれも知らないと思うから伝えておくが、ミノタウルスの皮膚で作った防具には高確率で打撃抵抗が付くぞ。」

「なんだと!?イーラ………いや、何でもない。次からは食うのは頭だけにしろ。」

イーラとサーシャを見ると、とっくに食べ終えて、俺らが進むのを待っている状態だった。

「は〜い。」

打撃抵抗ってのは打撃耐性の下位互換だろうが、あるのとないのではだいぶ違うだろう。
それもタダで素材が手に入るなら使うべきだ。ちょうどいいし、ガルナに作らせてみるか。

「血はいらんのか?」

イーラに指示を出したらサーシャに質問された。

まぁ必要なのは皮膚っぽいし、いらないだろ。

「好きにしろ。」

サーシャは口角を上げて、艷っぽく舌舐めずりをした。




その後セリナの力でフロア内の魔物を探し出して掃討してから下りる作業を繰り返した。
戦闘にはたいして時間をかけていないし、素材が欲しいと思ったやつは首だけとって収納してあるから解体作業なんかの時間もかかってない。それでもやはり戦闘があるなしで時間が変わるものなのか、それともフロアが広いからってだけなのか、もしくはその両方か。

まぁハッキリいってしまえば5階しか下りていない。つまりは現在地下55階だ。

とりあえずこのダンジョンは地下49階と地下50階で魔物の強さが一気に変わることは村のやつらには知らせとかなきゃな。

さて、そろそろ晩飯の時間だろうから帰るか。

「帰るぞ。」

「「「「「はい。」」」」」

明日のために地下56階に1度下りてから、アリアに戦闘訓練を終わらせるように連絡をし、リスタートで1階に戻った。
1階でアリアと合流して、全員で歩いて村に向かった。

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