裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

127話



忍者女に金のありかまで案内させ、盗賊どもが蓄えていた金の9割をもらった。
忍者女曰く、俺らがさっき倒したお頭は女と強い冒険者以外には興味がなかったらしく、金は奪うけどほとんど手をつけなかったそうだ。

だから金貨40枚分も蓄えてやがった。
そっから36枚分をもらったのだが、忍者女は不満そうにすらしていない。
なんだろう?誰にも文句をいわれない方が悪いことをしている気がしてくるな。

いや、これが初めてじゃないんだ。気にしたら負けだな。

金の回収が終わり、盗賊どもに地下の遺体を埋めるように指示し、改めてアラフミナに向けて出発した。

これからまた道を作るのだと思うと憂鬱だ。




途中、助けた女3人組をカゲロア内の最寄りの村に送る約束だったが、話を聞くと金を即日払えるといった2人は通り道にある町に住んでいて、もう1人はその先の村に住んでいるということだったから、ついでにそれぞれの家まで送って、2人からはその場で金を回収した。

その女たちの親からはかなり感謝され、食事に誘われたがめんどうだから全て断った。
お金以外で何かお礼をしたいとあまりにしつこかったから、女どもの子供の頃の服でガキどもが着れそうな服を何着かもらっておいた。

クリスもいつまでもローブじゃなんだし、ガキどもも服が一着しかないんじゃ不衛生だしな。
せっかく服をもらったから、クリスにはすぐに着替えさせた。



残り1人を村に送ったところで腹が減ったから、ついでにそいつの家族とともにバーベキューをしてから再出発をした。

金は十分貯まったし、ウサギの機嫌も良くなったみたいだから、ここからはイグザードの必要最低限の休憩以外はノンストップで向かうとしよう。
ここからならイグザードを1、2回休ませれば、あとは休みなく走らせても潰れないだろうしな。







ガンザーラを越えて、やっとアラフミナに戻ってきた。

カゲロアとガンザーラ、ガンザーラとアラフミナの国境も森の中を走ったせいで無駄に疲れた。
正確には森の中を走らせるために道を作ったから余計に疲れたんだがな。

ガンザーラとアラフミナの国境を越えるために通った森の中で、前に会った盗賊どもと出くわした。

俺の顔を見るなり跪かれた。
森の中で盗賊が跪いてるとか不思議な光景だ。

せっかくだから金を回収しておいたが、金貨2枚程度しかまだ貯まっていなかった。
もちろん全部もらっていくけどな。

そんな些細な出来事もあったが、無事にアラフミナに戻ってこれて何よりだ。

それにしてもイグ車って凄えな。

ドライガーで休憩含めて4日といわれてたけど、イグ車は山道を苦ともしないし、最高72時間走らせられるから、ドライガーでの予定と同じく4日ほどでアラフミナに戻ってこれた。
まぁここからカンノ村までまだけっこうな距離があるんだがな…。

そろそろイグ車を休憩させるかと思っていたら、俺が声をかけるより先に前のイグ車が止まった。

いう前に察するとかさすがアリアだと思ったら、どうやら違うようだ。
誰かが道を塞いでるっぽいな。

うぜぇと思いながら、歩いて先頭イグ車の前に出ると、フードは被っていないがフード付きのローブを羽織った浅黒い肌をした男が2人立っていた。

1人はブツブツと何かを呟いていて危ない雰囲気だが、もう1人はアリアから俺に視線を移してニヤリと笑った。

「やっと見つけたぞ!リキ・カンノ!」

知り合いか?だけどこんなやつ見たことないぞ?
いや、なんか見たことある気がしなくもない気がしてきた。

「アリア。こいつらが誰かわかるか?」

「…たぶんですが、以前リキ様が奴隷商に売ったエルフの2人が堕ちた姿かと思います。」

「落ちた?」

『呪い』

何に落ちたのかと疑問に思っていると、さっきからブツブツと何かを呟いていたやつが、俺を見ながら言葉を発した。

どうやらブツブツと呟いていたのは魔法の詠唱だったようだな。
急激に体が怠くなった。

動けないほどではないが、戦闘になったらちょっと面倒そうだ。完全に油断した。

「お前にとっては私たちをこんな目に合わせたことは記憶に残らない程度のことなのか。おかげで復讐することに罪悪感を感じずに済む。死んで後悔しろ。」

俺に魔法を使った男は訳のわからないことをいったあと、目と鼻と耳と口から血が吹き出し、その場に倒れた。

確かこいつは呪いっていったよな?
自分の命を代価にしてまで俺に呪いをかけたのか?

血を吹き出して倒れたやつに釘付けになってしまっていたから気づかなかったが、もう1人の男もブツブツと詠唱してやがる。

嫌な予感がする。

「…セリナさん!」

「わかってる!」

アリアがセリナに声をかけると同時にセリナが男のもとへと飛びかかった。

『転移』

男はセリナに首を切断される前に俺を見てニヤリと笑い何かを呟き、その目から光がなくなったのが見えた。

俺は読唇術など使えないが、不思議と男が最後にした唇の動きが“苦しめ”だと理解できてしまった。

そして、男の首が切断された直後、俺は足場を失う感覚とともに暗闇に包まれた。

「裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く