裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

42話



立ち話もなんだということで、市場に戻り喫茶店のようなところに入った。

6人掛けのテーブルに3対1で座った。

4人掛けだと王女の隣にアリアかカレンを座らせなきゃならなくなるからな。


「で、依頼ってのはどんな内容だ?」

「他の冒険者とチームを組んでのダンジョンの攻略です。」

俺らだけでの仕事じゃないのか。
奴隷以外と魔物狩りはしたくないから、報酬は惜しいが断るか。

「悪い「リキ様が奴隷以外とパーティーを組まない主義なのは知っています!チームは別ものだなんて屁理屈をいうつもりはありません!ですが、一度だけでいいのでお願いします!ボス戦以外では他のチームとは別行動でもかまわないので!」」

ガッツリ被せてきやがったな。
断りの返事は聞かないつもりか?
だけどこればっかりは命に関わるから、報酬が良くても了承しかねる。

「せっか「嫌ならボス戦すら参加しなくてもかまわないので、お願いします!私のパーティーと一緒にいてくれるだけでいいので!たまに戦ってもらえたらそれ以上は望まないので!お願いします。」」

机の上で両手を合わせて懇願してくる。

なんでこいつはこんなにも俺を参加させたがる?
ってかこいつって第三王女だろ?
なんで平民の俺にたいしてこんなに下手に出て願ってるんだ?

こいつが第三王女と思いながら今の状況をあらためて見ると、悪い気分ではないな。

それに金も手に入るしな。




…ちょっと待て、逆にいえば俺にこだわる理由があるってことだろ?
それを聞かずに承諾なんかしたら、絶対後悔する。

危なく気分がいいし、金になるってだけで主義を曲げるところだった。

「なぜそこまでして俺にこだわる?」

今度は被せてこなかった。
断る空気とかがわかるスキルでも持ってるのか?

「あなたの力を見たいからです。」

識別で確認すると『本音』と出た。

それだったら他にも手があると思うけどな。

「他にも理由があるんだろ?じゃなきゃ王族が平民に頼み事をするとは考えられねぇ。」

「あなたを今回のクエストに誘う理由は第一があなたの力を見たいからです。なぜこのクエストにこだわるかというのは、私自身がこういった理由でもない限り、この町から出られないからです。」

「本当にそれだけか?」

「はい。」

識別を発動すると『本当』となっていた。

こいつがバカだってことはわかった。
でもぶっちゃけそこまでして俺の実力なんか知る価値もないと思うがな。

まぁ価値観は人それぞれだ。
俺の実力を見てガッカリすれば、興味を失ってくれるだろう。

「アリア。どう思う?」

「…チームというのはレベル上げ目的ではとても効率がいいと思いますが、リキ様の場合、1人でも十分なレベル上げが出来ているので、普通のチームでの討伐依頼は主義を曲げてまでやるべきではないと思います。ですが、今回は内容がダンジョン攻略なので、とても強い冒険者たちが参加すると思います。その人たちの戦い方は見る価値があると思います。」

なるほど。
そういった利点があるわけか。

アリアは見て学べる天才だし、俺より強いやつらを見せておけば、今後の役に立ちそうだ。

「とりあえず詳細を聞いてからでもいいか?」

「もちろんです。それではまず、依頼の内容からです。既に冒険者ギルドには依頼を出しているので、ダンジョン攻略は始まっていますが、現在はチームでの攻略ではなくそれぞれのパーティーでの参加となっています。現在の攻略進行具合から見てチームでの攻略になるのは10日後を予定しております。リキ様に参加していただきたいのはこの10日後の攻略です。10日後の夜明けに北門前に集合してからの出発となります。チームについては厳選したパーティーのみとなるため、現在はリキ様のパーティーを含めて14パーティーの予定です。私の部下にその時の攻略済みの最深階までリスタートで全員を送らせ、残りの攻略を日没までに終わらせる予定です。場所は北門から出て少し歩いたところから森に入り、川を越えた先にあるダンジョンです。森の中のダンジョンは放置すると危険なため、今回の依頼をした次第です。」

どこぞの島ではダンジョンから魔物が溢れ出てるとかいってたもんな。

すぐそこの森でそんなことになったらこの国の王族としては困るか。

それに森の中じゃ勝手に冒険者が退治してくれるってのもなさそうだし。

「報酬ですが、冒険者ギルドに出してる依頼は地下5階まで攻略した全てのパーティーに魔鉄の剣を1つ、フロアボスを倒したパーティーには金貨1枚、さらに10階毎に一番早く攻略したパーティーに金貨1枚となっております。手に入れた魔物の素材は各自の物です。」

ただ攻略するだけで金がもらえるならいいかもな。

もうちょい早く知ってれば行きたかったが、今さら行っても金貨をもらうためにはそうとう頑張らないとダメそうだからやめておこう。

「10日後のチームでの攻略の報酬は貢献度によって、参加者全員で金貨100枚を分ける形になります。最終ボスの討伐に参加者したパーティーはさらに金貨200枚を分けることになります。これは生死に関わらず支払われます。なので、パーティーが全滅した場合は送魂祭そうこんさいの費用とし、盛大に行いたいと思います。」

「送魂祭?」

隣のアリアを見る。

「…名誉ある死を遂げた者に送られる最上級の行いです。」

国を挙げての葬式みたいな感じか?

「理解した。話の腰を折って悪いな。」

「いえ、それでは報酬の続きですが、ダンジョン内での魔物の素材は基本倒したパーティーの物ですが、ボス戦だけは複数で討伐する場合があります。その場合は一度私が預かり、換金後に均等に分けることとなります。ダンジョンのコアについては回収となります。その分が先ほどの200枚となります。リキ様はそれと別で、参加していただいた時点で金貨5枚を差し上げます。」

コアって金貨1000枚の価値とかじゃなかったか?
まぁ200枚を14パーティーで割っても金貨14枚くらいはもらえるから俺はそれでも十分だけどな。俺は見てるだけでもいいみたいだし。

「貢献度ってのはどう決まるんだ?」

「私の部下が全パーティーの戦闘を見るので、依頼達成後に部下から話を聞き、私が決めます。なので、報酬は後日の受け渡しとなります。」

それだけの報酬がもらえて、経験値も勝手に手に入る。
強いやつの戦闘も見れるし悪くもないかもな。

アリアを見るとコクっと頷いた。

アリアが受けるべきだと思ってるなら受けてみるか。
一度ダンジョン攻略をすれば、どんなもんかもわかるしな。

10日後ならガントレットも出来上がってるし、カレンのレベルを上げる時間も十分にある。

パーティーに奴隷以外を入れない主義ってのも裏切られ防止なだけだから、こんな大規模依頼なら裏切るも何もないだろう。

こいつは俺を殺したいとかでもないみたいだし、わざわざ俺だけを裏切るなんて考えづらい。
仮にこいつに裏切られたところで、よっぽどの不意打ちでもない限り負ける気がしないから問題ないだろう。

まだ心の奥では納得しかねてる部分もあるが、そろそろ金が欲しいというのもあるし、今回は受けてみるか。

「わかった。その依頼を受けることにする。俺が役に立たなかったとしても金はちゃんともらうからな。」

「ありがとうございます。貢献度の分に関しては戦わないと支払うことはできませんが、参加費の金貨5枚はお支払いいたします。最終ボス戦で見ているだけだったとしても参加パーティーとして金貨200枚を均等に分けた分をお支払いしますことをお約束いたします。」

「それだけもらえれば十分だ。俺の実力を見てガッカリするだろうから、覚悟しとけ。」

「ご謙遜を。楽しみにしております。」

話が終わり、10日後にまたといって別れた。

喫茶店の会計は第三王女持ちだった。

だったらデザートでも頼んどきゃよかったわ。

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