ファルダーミール -明日の世界-

ほむほむ

第22話 黒刀(コクトウ)

 さてと行くか、さっきの電話でおおかた何処に居るかはわかった。

 カヤトはスマホを取りだし西城(さいじょう)に電話をかける。

 「……なんだよカヤト」

 「今どこにいる西城?」

 「え?そこから2km離れた民家の屋根の上だ」

 「何故にそんな所にいるし、頼んでいたことが終わったのならリアの家に来いよ。そんなことより西城仕事だぞ」

 「仕事?あぁ〜、ダルい」

 「黙れ西城!早く仕事をするぞ、詳細はいま送る」

 「……あの、カヤトさん。これ怪異だよね?俺まだ怪異と戦えるほど呪術が使えないんだが」

「いや、別に戦えとは言ってない。ただ調査と怪異の監視を頼む」

「わかった、じゃ」
 西城が電話を切ったのを確認すると、カヤトも電話を切る。
 カヤトは黒刀(コクトウ)を取りだし、巻き付けてある包帯を取る。
「あの、カヤトさんなにをしているんですか?」

「封印を解いているんですよ。まあ、たいしたことじゃありませんよ。リアさん、すみませんがあなたの電話を貸していただけますか?」

「何に使うかわかりませんが、どうぞ」
リアはカヤトに可愛らしい兎ちゃんのカバーケースが付いたスマホを渡す。 

 可愛らしいスマホケースを使っているんだなリアさんは。そんなことを思いながら右手に持っている黒刀(コクトウ)に意識を向ける。
 黒刀、世界に15本存在すると言われているの樹影霊具(ジュエイレイグ)のうちの一つであり、暗闇(クラヤミ)の名を冠する霊具である。見た目はその名の通り、光をも吸収してしまいそうなほど黒く禍々しい。

 「封…解、うぐ!やっぱりこの刀は使い手である俺まで取り込もうとしてくるな」
 並の術者ならば、刀に魂を喰われ操り人形になってしまうだろう。

 「それじゃ、リアさん行ってきます」

 「えぇ、お願いします」

 「それでは」

 リアの家からカヤトは早足気味に出て行く。


「しかし、こいつを使うのも久しぶりだな」

 黒刀を強めに握ったり緩めたりしながら身体に馴染ませる。

 (久しぶりじゃの?)

 黒刀の中の人格が直接思念を伝えてくる。

 (なんじゃ、無視かの〜?)

 (黙れ) 

 (なんじゃ、ひどい言葉じゃのう〜)

 俺は、こいつが何をしたか忘れていない。






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