第24話「高貴なお嬢様？」

「君のことをずっと探していた」

　そして、時が止まったかのように数瞬沈黙が訪れる。
　その間に自分がどれほど恥ずかしいセリフを放ったのかを理解し、相手の顔が赤らんでいるの確認した。

「......いやいや！　変な意味じゃないからな！」

　俺は一応反対するが、何かのようで会う理由があるならば何の問題でも無かったことはあとから気づく。

　それはおそらく相手もで、『会わなくてはいけない状況』ではなく『俺がずっと見ている』のように読み取ったのだろう。

「で、ではどういう要件で訪ねたのですか？」

「逆にこれと言って要件がないな......」

　小さな声で呟く。

　早く移動しないと、俺を見つけたとかで迷惑になるかもしれない。
　ここは何とかして用事を作らないと......。

「クラスの皆を知ろうと思って、まずは席が横の君に聞こうと思ったんだ......あはは......」

　苦し紛れの割には中々にいい切り返し！　このまま名前は聞き出せる！

「では、今まで私わたくしの名前を知らなかった、と？」

「いや......えと......が、学年代表として忙しい毎日が続いているもので......」

「しかし、クラスメイトの名前を覚えておくのは常識でしょう」

　嘲るように言い放つ、がその人間として話す態度や姿勢が綺麗なことから怒りや似たようなものは湧いてこない。

「しかも私を忘れたのですか？　貴方からしたら当然なのかも知れませんが、私からしてみればショックです」

　え、この子と接点あったっけー。

「その様子では本当に覚えていないようですね。これから時間あります？　少し外にでもどうですか？」

　これは放課後デート......デートと呼ぶにははやいな、しかし放課後に遊ぶのには変わりない！

「ああ、俺は大丈夫だ。じゃあ、用意するから待っていてくれないか？」

　俺の進んだ先には、セシアである。先に帰ってくれればいいだけの話。

「話、聞こえてたよ？」

「そ、そうか。じゃあ先に帰っていてくれるかなぁ？」

　若干引け腰の俺を見てため息をひとつ付き、

「分かったよ。その代わりあんまり遅くなっちゃダメだよ？」

　凄い上から圧力がかけられながら話しているような感覚だ。

「お、おう」

　これでセシアには先に帰ってもらった。が、本番はここからだ。

　如何に上手く会話を進め親睦を深めるか、相手は俺に興味を持たない珍しい生徒だ。この機会を逃していつ得られようか！

　俺は再び意気込んで待ってくれている女生徒の方へと急ぐ。

「用意は出来たのですか？」

「おう、じゃあ行こうか」

　この位のペースの話し方が良いだろう。俺の感覚としてもしっくりくる。

　◇◆◇

　学園の周りにはいくつかの店があり、中々に賑わっている。そのためか、緊張が和らいでいる。

「こんなに賑やかなのですね」

　女生徒がキョロキョロと身体ごと動かして周りを見る。

「俺も初めて来たからこんなに人がいるなんて知らなかった......」

　少し歩くとカフェのような店が目に入り、雰囲気からして話しやすそうな場所だったので俺は女生徒を連れ、中に入った。

「沢山種類があるから迷ってしまいますね......」

　女生徒は感嘆の声を漏らしているが、俺はおそらく、数世紀後のカフェを知っているせいか、メニューが多いとは感じなかった。

　しかし、特別飲みたい、食べたい物がないため、逆に迷ってしまう。と、そこに現代にもある飲み物を頼むことにした。

「決まりそうか？」

　未だに唸っている女生徒をみると、若干笑いがこみ上げてくる。

「........................」

　シュゥ...と頭から煙がたったところで、

「あなたと同じものをお願いします」

　と、一言言い残し元の体勢に戻る。

　そして現れたのは......今も昔も愛されている『コーヒー』である。

　俺は一口飲んで、女生徒に話しかけようとする。

「あの......」

　しかし、女生徒はプルプルと震えたままこちらを見ようとしない。何かあったのかと思いきや......。

「......に、苦い」

　まさかの一言だった。喋り方が大人っぽかったので、気にしなかったが、まだ年齢は10歳。
　俺がコーヒーに慣れていても彼女が慣れているとは限らない。

　しかし、なにより...

「(か、可愛い......)」

　今の反応が恐ろしいほどに可愛かった。
　ちょっと耐えながら、でも声にすると弱々しく......ってダメだダメだ。変なことを考えては......。

「ところで、名前を教えてくれないか？　俺もクラスメイトの名前くらい覚えていたい」

　咄嗟に話題を変えたのが、成功だったようだ。頭が切り替えられている気がする。

　目の前の彼女は自前であろうハンカチで口元を拭う。

「私の名前はエミリア・ガーナーよ。　......入学式の時、貴方が新入生代表であることを不満で決闘を申し込んだ女よ」

　自嘲気味に言うその口調はトゲトゲしているものの、若干顔を赤らめながらなので、反省を感じる。

　それよりも、だ。

　俺はそんなに重要なクラスメイトを忘れていたのか......。

　圧倒的に遅い投稿。
　もはや読んでくれる人居なくなったのではと思うほど遅い。もし居たら感謝します。

　まだまだ書きたいことはあるのに、やる気とか時間とかが邪魔する......。

　頑張ります(ง •̀_•́)ง!