第12話「どこかで聞いた名前」

「ここでお前らとも別れだな」

　1年間ともに過ごしてきた、もう仲間と言っても過言ではない悪魔の2人。

「ああ、意外と楽しかったぜ」
「またどこかであったらよろしくな」

　悪魔からも俺への恐怖は消えている。

「もう一度確認するけど場所、分かるよね？」

「大丈夫だ姫さん。何度か行ったことがあるのでからな」

　この2人はセシアの弟分の住処へと行くようだ。最初にあった受け入れられないのではないかという不安はどこかへ霧散していった。

「あんた......いや、リューイ。お前は俺らよりも強い。でも、1年前の戦いで負けかけている。これからの方が人生は長い。気を付けろよ？」

「......分かってる。ありがとう。......ははは、まさかこんなこと言われるなんてな」

「それほどの仲ってことだな」

　本当にいい奴らだ。
　こんなにいい奴がたまたま悪魔だったのか。
　悪魔は人間から嫌われている存在だ。しかし、改めるべきだ。瘴気がどうとかではなくて。

「じゃあまたね」

「おう」「さいなら姫さん」

　そして、悪魔達は去っていく。
　絶対忘れない2人だ。今後、この1年が薄まる様な濃い人生になってもこいつらの事は忘れない。

「俺らはまず俺の家へ行こう」

「そうしよっか。どうなるのかな〜アタシ。もしかしてリューイの家に居候とか？」

「完全には否定出来ないな」

「ヤッター！」

　セシアには地上で住む場所がない。俺の家で住む可能性は高いのだろう。

　で、ここどこ？

「なあ、嫌な予感がするんだがここがどこか知ってるか？」

「？　初めて、地上に来たのに知るわけないじゃん」

「ですよねー」

　《全感知》でも使って人を探すか......。
　......北に人が居る......あとこの反応は......

「魔物!?」

「え!?　どこ!?」

「いや、違う。すぐに北に向かう。付いてきてくれ！」

「う、うん」

　俺とセシアは急いで魔物のいる方角へ行った。俺の《全感知》はまだそこまで遠くのものは感じられない。つまり近いはずだ。

「キャーーー！！」

　悲鳴が聞こえる。この森？　やはりさっきの魔物か。
　俺はさらに加速する。セシアを置き去りにしているが、大丈夫だろう。

「いた！」

　俺は女の子が魔物に追い詰められている光景を見る。どうやら腰が抜けているようだ。足も震えていて逃げることは不可能だ。

　でも、この距離なら間に合う。
　足を強化しさらに加速、そして、手にも強化を施し魔物を横から思いっきり殴った。

「ギュィィイイイイ！」

　魔物は叫びながら吹っ飛んでいく。さらに俺は風属性魔法の追い討ちをかける。
　すると、魔物は真っ二つに分かれて死んだ。

「ごめんなさいごめんなさい......」

　追い詰められていた女の子はうずくまって泣いている。

「大丈夫か？」

「ごめんなさい......え？」

　顔を上げた女の子は短い金髪で可愛いカチューシャまでしいる可憐な少女だった。
　みんな可愛いなこの世界。
　もう美少女の世界でいいや。

「助けて......くれたの？」

「おう。もう一度聞くが大丈夫か？」

「うん、ありがとう。大丈夫だよ。助けてくれたお礼をしたいから家まで来てくれない？」

「あ、ちょっと待ってくれ」

　がさがさがさ。と、物陰から現れたのはセシアである。

「もう〜。リューイ待ってよ〜」

「悪かったな。それでなんだがこいつも連れて行っていいか？」

「赤い髪の人初めて見た......じゃなくて、うん。いいよ」

　俺達は10分程歩いたところ豪邸のような家へとついた。

「大っきいな......」「大っきいねえ......」

　そこへ一人の女性がやってくる。

「メリー、どこ行ってたの!?」

　メリー、どこかで聞いたような......。

「ごめんなさい......お母様」

「そちらの子はどうしたの？」

「私が森で襲われた時に助けてくれたの」

「またあなたは1人で森へ行って！　まあ、いいわ。あなた達、メリーを助けてくれてありがとう。お名前聞いてもいいかしら」

「リューイ・ファグゼルです。こっちはセシアです」

「その名前どこかで聞いたような......」

　そこへ新たに男性が現れる。察するに父親だろう。

「どうしたんだ？」

「ねえ、あなた。リューイ・ファグゼルって名前を知ってる？」

「......ああ。ファグゼル子爵の息子だろう？　確か約一年前に行方不明になった......」

「あの、それ俺です」

「そうそう、こんな銀髪をしていて......って本当にリューイ・ファグゼルか!?」

「はい。俺が正真正銘リューイ・ファグゼルです」

　作者コメント

　祝・お気に入り数100突破＆日間ランキングイン！！
　ありがとうございます！
　意外にも速いペースで100を越したこと、とても嬉しく思います。
　そして、日間ランキングイン。僕が見た時は27位くらいで驚きました。「こんな事が本当にあるのか!?」と思いました。
　これら全ては読者のおかげです。
　これからもよろしくお願いします。