第4話「ギルドと学園」

　父さんが意識を取り戻して1週間。
　父さんと俺が会話する事が減ったように感じる。気のせいだろう......だよな？
　因みにあの日の夜にあったキュバス伯爵の娘のメリーの誕生日パーティは当然欠席した(体調不良ということになっている)。

「リューイ様。昼食のお時間です」

　俺が自分の部屋で一度読み終わった本をもう一度読み返しているとミルシーが声をかけてきた。

「分かった。すぐ行くよ」

　また、あの気まずい空間へ赴かないと行けないのか......憂鬱過ぎる......。そろそろあの空気を打開しなければ。

「まあ、今日も美味しそうな料理ね。ミルシー」

「それはどうも有難うございます」

「............」
「............」

「......リューちゃんも美味しい？」

「うん、美味しいよ」

「............」
「............」

　大抵このあとは父さんが一言挟むことが多い。俺と会話する事が減った訳ではなくて声を発する事自体が減少しているのか。
　その瞬間、食事以外に開かなかった口が開いた。

「......リューイ、この後ちょっと話いいか？」

　喋った。何話されるの？　監禁？　売り飛ばされる？　崇められる？　決闘する？

「う、うん。分かった」

　◇◆◇

　そして今俺は父さんの部屋の前にいる。
　この先に何が待っているのか。ここは父さんを信じるしかない。変な事になるなよ？
　俺はドアを叩く。

「父さん、入るよ」

　部屋の中には向かい合ったソファの一方に父さんが座っていて間のテーブルには紙が置かれていた。

「まあ、そこに座れ」

　緊張が走る。父さんの体は大きい方なので尚更緊張してしまう。

「今回の件、少し考えさせてもらってな。その、リューイのステータスが異常すぎて困ったんだが......こうするのが一番かと思ってな」

　どう......なる......？

「ギルドと学園の試験を受けてもらおうと思う」

「はあ？」

「ギルドは試験で初期ランクがG～Dの間で決まる。試験内容は試験官との決闘だ。簡単だろ？　学園の方は実技、筆記を問われる。実技は剣技、魔法どちらもありだ。筆記は魔法についてが主となってくる。多分リューイなら大丈夫だろうがな」

「ちょ、ちょ、ちょっといきなり試験!?　大丈夫なの？」

「うん？　ギルドの試験はどれだけ悪かろうがGにはなれる。学園の試験は落ちてもいい。受かっても通うのは10歳からだからな。それまでに受かってくれれば十分だ」

　いきなり過ぎる......。どう反応すればいいんだ？　試験を受けるのは良い事なのか？　それなら喜んでおくのが普通だよな。

「ありがとう父さん！　試験日まで精一杯頑張るよ」

　俺は父さんの部屋を出て自分の部屋へ向かう。
　緊張した〜。結果的には試験を受けるだけで済んだわけか。これが凶と出るか吉と出るか。

　◇◆◇

　ギルドの1週間後に学園の試験があると聞いていたので優先して剣技を磨いていた。試験同様竹刀での素振り、時にはこっそり家から遠い所へ行き魔物を狩ったりしていた。

　そして、ギルド試験当日、ギルド試験会場。
　ほとんどが俺より大きい人ばかりだ。
　試験内容は伝えられた通りであった。
　そして、俺の番が回ってきたので竹刀を持ち試験場と書かれた部屋へ入る。
　中には40代程の男性と監視役の人がいた。

「リューイ・ファグゼル。5歳です」

「私が試験官だ。その歳で受けるとは中々の才能があるのか？」

「ええ。おそらく貴方なんて瞬殺ですよ？　でも安心してください。力は抜きますから」

「ははは、舐められたものだな。ではこちらは全力で行くとしようか」

　戦いの火蓋が切られた。
　先手は俺、との事なので遠慮はしない。突っ込む。

「お!?　速い！」

　試験官はぎりぎり受け止める。単純な一直線の攻撃なんだから受けてもらわないと困るけどな。
　後ろへ飛んだ試験官は空中で体勢を取り戻し着地と同時に踏み込んでくる。俺を舐めてはいけないと分かったのか？
　しかし、この数秒後、試験官はたおれた。
　相手も単純な一直線の攻撃だったのでジャンプして上から付いた。目には見えないであろう高速で。

「大丈夫ですか!?」

　監視役が試験官に近寄り安否を確認する。

「ほ、生きてる。ああああ貴方はもう戻って結構です。これで試験は終了なので」

　終わった。
　当然、俺は勝った。Dは確定だろう。
　後味すっごく悪いけど。
　試験官ならもうちょっと強くても......俺が強すぎるのか。
　まあ何にせよ無事終わった事が大事だ。
　そしてこれから俺を待ち受けているのは、おそらく楽勝だろうーー

　ーー学園の試験だ！