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平凡男子の受難

安里あさ

act.28


必死に思考を回転させて声をかける。

「あのッ、とうま、先輩・・・っ」

「コイツが噂の生徒か?」

俺が振り絞って出した声は聞こえなかったのか無視され、先輩と目が合うこともない。

視界の隅で人を掻き分けようとしている沙弥と、その前に立ち塞がるように先輩方がいるのが見えた。
皆の表情までは分からない。
目の前が霞んでよく見えなかったからだ。

俺を囲んでいた男達も随分と驚いたのか上擦った声を上げる。

「西道先輩!な、なぜコチラに?!」
「俺は質問した筈だが?」
「ひっ、そそそうですっ!コイツが一般試験受けた佐竹ってヤローですっ」
「そうか」
「っ、ぐっ」

茫然と床に転んだままの俺を蹴り、肩口を柊真先輩に踏みつけられる。
先輩俺のことなんてとっくに知ってるのに、なんで、どうしてと考えるが思考が追いつかない。

「コイツを昨日締めてくれたやつに礼が言いたくてな。」
「っ!!」

柊真先輩の言葉にズキズキと胸の辺りが悲鳴をあげた。

「礼、ですかっ?」
「どうせウロチョロつきまとったり大きな口たたいてたんだろ?」
「そ、そうなんすよ!!」

つきまとったり・・・?大きな口、たたいたりしたから・・・?こんな見世物みたいに、皆の前で足蹴にされているのか…?


男達はよく回る口で喋り出した。

「昨日も階段の所でぶつかってきたんで分からせてやったんですよっ!」
「ほう、そうなのか?」
「謝れば済むと思ったみたいですが世の中そんな甘くないっすから、」
「悪い頭が少しは良くなるように神堂しんどうが一発壁にぶつけてやったんですよ~!」

ペラペラと喋りながら長身のリーダーを指さしヘラヘラと笑うヤツら。柊真先輩は静かに続きを促した。

「・・・それで?」
「ちょっと荷物拾ってやっただけなのに乱暴に腕掴まれたんで、慰謝料もらおうとしたんですけどコイツ五千円しか持ってなくて~、」
「そしたら沙弥さんが来て、金返すように言われたんで返しましたけど。やっぱり社会の上下関係はハッキリ分からせとかないとですよねェっ!」

もう何が何だか分からない。

あの柊真先輩にこんな扱いを受けたせいなのか、たくさんの生徒がいる前で中傷されたせいなのか、胸が苦しくて息も詰まる。溜まっていた涙が目からこぼれ落ちた。

「うわ、お前泣いてんのかよ!」
「身の程知らずだからこうなるんだよっ!」
「!!、っつ・・・!」

悔しくて涙を拭うがふと視界に入った柊真先輩と目が合った途端、耐えきれなくなった。
涙がポロポロと溢れて嗚咽が漏れそうになり、顔を腕で覆い隠す。

ふと肩から脚が退けられたのが分かったが俺は動くことが出来なかった。

そんな俺の腕をクッと持ち上げ、覗き込んできたのは柊真先輩で。
その目に感情が見えなくて余計涙が出てきてしまう。

「ふ、ぅっ・・・」

それ以上見られたくなくて横を向いた俺を先輩は深追いしてこなかったが、
男たちは野次を飛ばしてくる。

「床に寝そべってないで正座して謝れよ!」
「先輩にも失礼だろうが!」
「昨日ぶつかったことも含めて詫び入れろよっ」

ギャアギャア騒いでいる男達の声を聞いて、のろのろとやっとの事で正座をし、頭を下げようとしたが、

「ストップ!もう、いいんじゃねぇ?」
「まあ、撮れ高バッチリ!ってところかなァ」
「ホントの上下関係教えてやろうか?あ?」
「さすがに"おいた"が過ぎたな。それ相応にコチラも返させてもらうぞ」


急な先輩方の乱入についてこれる人は
果たしてこの中にはいないのではなかろうか。

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