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平凡男子の受難

安里あさ

act.12


「それで、俺は佐竹結吏って言います。先輩たち、ですよね?」

ランチも終えてゆったりとした時間が流れる中、先程から気になっていた事を聞いてみる。
因みに俺はまだ柊真先輩に抱えられていた。
この人、食べ終わっても
全然離してくれないんだけど・・・。

「え、今更?」
「マイペースだな!」

あははっと笑っている金髪にピンクのメッシュを入れた小柄な先輩と、オレンジ色の長髪長身の先輩。
出会って結構な時間が経ったが聞く間もなく騒いでいたため俺はまだ名前も知らなかった。

「俺のコト、気になるの?」

そう言って長髪の先輩に顎を掬われ
目線を合わせられる。

「え、あの、?」
「フフっ、いいね。こうゆーの慣れてないんだ?俺は緑川 玲みどりかわ れい。よろしくネ」
楠 沙那くすのき さなだ!レイとサナって呼んでいいよー!」

よく分からないが、からかわれたのか?

玲先輩と沙那先輩か、と呟くと俺の胴体に回っていた腕がぎゅうっと力を込めて巻きついてきた。

「つっ、なんすか柊真先輩、苦しいですってば、」
「ん?ふふっ、何でもないけど・・・?」
「そう、ですか?」

気のせいではないだろうが
微笑まれて否定されては何も言えない。
仕方なく前に向き直った、瞬間、

ガブッ―

左耳に噛み付かれた。

「っいってぇ!」

ぐるんと後ろを振り返ると柊真先輩の顔がすぐ近くにあり
とてもいい顔で微笑んでいた。

「な、なにしてんですかっ急に!」
「えへへ」
「いや意味がわからないっ!」
「顔真っ赤だねぇ、耳も赤いけど。ふふっ」
「っ先輩のせいでしょーが!?」

「そう、俺のせい、だね?」
「っ」

更に言い返すつもりで開きかけた口からは
言葉が出てこなかった。

今までニコニコと応戦していた柊真先輩の目が、笑っていない?

まるで猛獣のようにギラギラと
見つめ返す視線に囚われて、逃げられない、

―ポンッ(ビクゥッ)

後方から肩に手を乗せられて
情けないことに酷くビクついてしまった。
そちらを見ると、玲先輩がやれやれと言った風貌で話し出した。

「まあまあ、なんかごめんねェ?とりあえず俺らも3年なんだ。学部は違うんだけどネ。」
「もー、レイのせいだかんね!ユウリは気にしなくていーよ!あ、ユウリって呼ばせてね!」

2人に謝られた意味が分からず、
はぁ・・・、と気の抜けた返事を返す。

それに、後ろの柊真先輩が気になった。
回された腕はそのままだし
身動きが取れない。

時折背中に擦り寄るような感覚があるくらいで何もされないし
何も言われないから、大丈夫かな・・・?

その間も沙那先輩は話し続ける。

「ぼくとレイは幼馴染で初等部からずーっと同じクラスだったから、逆に今離れてるのが不思議な位なんだよね~!」
「まあ、確かにおチビちゃんとはいつも一緒だったからねェ。コイツらとつるみ始めたのは高等部に上がってからだったし?」
「ふっ、そうだったな。」

玲先輩の言うコイツらとは美道先輩、宮原先輩、そして柊真先輩の事だろう。
美道先輩が懐かしむように笑った。

「あの時は、全員ヤンチャしてたからな。」
「え、」

やんちゃ?この先輩達が・・・?

「問題起こさない日は無かったよねー!」
「そうそう、誠なんて頻繁に先生ともやり合ってたよな?」
「アレはあっちが悪い。第一俺なんてまだまだだろ。もっと酷いやつがいたじゃねえか」


酷いやつ・・・?誰の事だ??


「「「なぁ(ねぇ)・・・、柊真。」」」
「え"?!」
「ん?ふふふっ。」

まじか?マジなのか?!
こんな人畜無害のような見た目でほわほわした空気纏っている柊真先輩が?!

実は元ヤン?!

まあ、確かに俺色んな被害受けてるけど。めっちゃ力強いなとか思ったし、
俺1人簡単に持ち上げてたけど!
馬鹿みたいに時々スキンシップ激しいのは天然だろ?
天然なんだよな?!
まさか、・・・計 算 ?


「あれはヤバかったよなァ~。C高のさ、」
「アレよく退学とかならなかったよねぇ!」
「それよりも、高橋通りのやつがヤベェだろ」
「そんなこともあったな。」
「確か、俺らが発端で大騒動になった事件だよねェ?」
「そこらの組が集まっちゃって派手に喧嘩ふっかけ合ったやつ?あれ、サイレン凄かったよねー!」

懐しい~じゃねえですよ、先輩方。
それ、アウトなやつじゃないですか!?

「まあどれも全部柊真が収めたけどねぇー!」
「伊達じゃないよネ、本当。」


あれ?
・・・俺、ここ(柊真先輩の膝の上)にいたら  いけない気がする。
本能的に。

「・・・っ!」
「ふふっ、急に立ち上がってなぁに?またトイレ?」
「っ、違います!」
「じゃあ、どこいくの?」

しまった!
前回笑われたのが癪で
反射的に違うって言っちまった!

つか、やっぱり力が強いっ!
立ち上がった瞬間、腕を取られて先輩の腕の中に戻された・・・。
座らされた脚も結構硬いし安定感あると言うか…え、どれだけ鍛えてんの?

「いや、えっと・・・、」
「ん?(ニコニコ)」

今はその笑顔が怖いので離してください、なんて言えない・・・言えるわけがない・・・。

「あの、くくクッキー!さっきのクッキーを・・・!」
「お菓子食べたくなったの?」
「は、はい!」

何とか言い訳を絞り出し
立ち上がろうとするが、

「ふふっ。お腹、まだいっぱいかなぁと思ってたけど・・・そっかぁ~。」
「うっ!?」

あろう事か無防備なお腹をスリスリと撫でられ、俺は動きを止めた。
そんな俺を抱きしめ直した柊真先輩は、チラリと玲先輩に目配せをする。

「・・・レイ、取ってきて?」
「え?ああ、あれね・・・、はいはい」
「え、あの、俺が自分で、」
「ふふっ、場所わからないでしょ?」

待っとこうね~なんてのんびり口調で、でもしっかりガッチリ腕を回されたら
何も言えなくなりました。
もし下手に刺激した時にどうなるかなんて考えたくもない。

「はいドーゾ。みんなはこっちだよ?」
「ふふっ、ありがと。」
「わーい!お菓子お菓子~!」
「たくさん種類があるんだな。」

持ってきたお菓子の箱は俺を越して
柊真先輩の手に渡された。あれ?

玲先輩は他にお菓子を盛った皿をテーブルに置き、それを見た沙那先輩があれがいい、コレもおいしそう!と選び出す。
美道先輩はそんな沙那先輩を見守り、
宮原先輩は無言でビターチョコを食べ始めた。

とゆうことは、流れ的に
俺もあっちから取るべきだよな・・・?
先輩に持ってこさせた挙句、食べないのかと不興を買いたくないし。

いやでもピラミッドで言えば、
上段=柊真先輩、
中段=ほかの先輩、
下段=俺。

あれ?これは力のピラミッドで言えば
お菓子に手をつけた瞬間ボコられるパターンとかあるのか?
それなら食べない方がいいかな?

どれが正解なんだ!?


「ん~・・・コレにしよう。はい、結くん口開けて~?」
「へっ?は、はいっ」

急に声をかけられて
言われた通りに口を開ける。
甘い味が口の中に広がった。
フワフワなこれは・・・

「ま、ましゅまろ・・・?」
「ふふっ、かわいすぎるよ」

正解はこっちか。
柊真先輩に選んでもらったお菓子を柊真先輩の手によって食べさせられる・・・。

・・・っこんなデジャブ予想できるかっ!!


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