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平凡男子の受難

安里あさ

act.6

俺は今フカフカのソファーに座って紅茶を飲んでいる。

「ふふっ、ねぇ、落ち着いた?」
「は、はいっ!」

まだみたいだねぇ、ふふっ、と先輩が優雅にティーカップを持って微笑んでいるのを横目に部屋を見渡す。
部屋は2人で生活するには広すぎる程。入口近くには簡易キッチン、冷蔵庫、普通は共有であろうバスやトイレ、洗濯機に乾燥機も付いていてエアコンもある。快適すぎる。
となると、部屋の中央にあるこのソファーも?

「あの!」
「なぁに?」
「このソファーって、」
「僕のだよ?」
「・・・!!!」

速攻で降りた。きっと高価な品だ。後で座ったところ掃除しよう。

「ふ、ふふっ、冗談だよ?なぁに今の動きっ!」

フローリングに座った俺の頭に、笑いを堪えた様子の先輩が手を乗せてきたので反射的に目をつぶった。
そのままジッとしていると、ふわふわと撫でられる。

「ふふっ、落ち着きなさい、って・・・」

先輩の声が途切れて不思議に思った俺は目を開けてドキッとした。

「(えっ、あのとうま先輩が真顔・・・!?)」

いつも微笑んでいるイメージだった先輩が全く笑っていなかったのだ。その顔が普段とのギャップで怒っているようにも見え、内心怖々としていると先輩が急に立ち上がった為大げさに肩が跳ねる。

「(俺、何かしたかな・・)」

そのまま台所へと消えた先輩の顔が離れず縮こまって考えていると

―ピタッ。

「ひっ!」

急に額に冷たい何かを当てられ悲鳴が漏れた。

「な、何・・・!?」
「ねぇ、おでこどうしたの?」

とうま先輩がフローリングに座った俺の顔を覗き込み、どこか不服そうな表情で問うてきた。

「へっ?あ!これは、色々・・・」
「色々、なに?」

今までにないほどハッキリとした声音で尋ねられ、視線を泳がせながら言葉を濁していると
急に二の腕を掴まれてソファーに引き上げられた。
そのまま視点がひっくり返る。え?

「ととととうま先輩・・・?!」
「ん?なぁに?」

なぁに?じゃねえ!!重てぇし、この体勢は何だ!
仰向けに転がされた俺の上に  とうま先輩。
先輩は俺の顔の横に肘をつき、目線を額、俺の顔と交互に移しながら手に持った保冷剤を俺のおでこに当てては外してを繰り返している。

「やっと僕の目を見たねぇ、ふふっ」

いい子と言わんばかりに満面の笑みを浮かべつつ、おでこの傷を見ている。

「(なんつーか、マイペースで変な人だよな・・・)」
「ん??そんなに見つめられると照れちゃうよ~」
「・・・重いっす」
「僕の方が身長、高いもんねぇ」
「・・・どいてください」
「やだ」

ふふふっ、とどこか楽しそうに笑っている先輩に少しイラっとした俺は悪くないはず。

「自分でやるんでどいてくださいっ」
「いーや。理由、教えてくれたら考えるよ~」

何がいーや、だ。可愛くない!
押し返そうにもびくともしない。さっき俺を引き上げた事といい、見た目に反して意外と鍛えてるのか。迷惑な。

こうなった原因は額のこぶ。そのこぶが出来た経緯は自爆告げ口のような内容なわけで。そんな答えを言う気もなく思考を巡らせていたが、ここにきて思い出した。

「(と、トイレ行きそびれたんだった!)」

急に尿意を思い出し催した俺は先輩に付き合う余裕も無くなってきた。

「せ、先輩、まじでどいてくださいっ」
「えぇ~?理由教えてよ?」
「いや、もうそんなのどうでもいいじゃないですかっ。そう、転んだだけですって!」
「それ絶対嘘だよねぇ、」
「嘘でもなんでもいいですからどいてください!」
「何でもよくない。だからどかない~」
「いいから!どけっての!」
「ん~、教えてくれたらどいてあげるよ?」

だから教えて?ね!と、俺の胴体を跨いで座り両手で手首を押さえつけられた。はぁ!?腹に乗るなっての!

「なっ、やめろ!」
「ふふっ、センパイの質問には答えるべきだよ」
「いや、なんで!俺自身の問題なんスけど!」
「へぇ、問題なんだ?」
「!言葉の綾だよっ」

ふふっ、言葉遣い荒いなぁ~なんてのほほんとした空気出さなくていい。マジで限界を迎えそうだった。

「くそ、離せっ!」
「どうしようかなぁ、ふふっ」
「っマジで漏れそうだからトイレ行かせろよっ!」
「!」

先輩が驚いた顔をした瞬間、力で振り切ると意図も簡単に抜け出すことが出来たのでトイレに直行する。

後ろで、あはははっ!トイレ、も、漏れそ・・・!とか笑ってる声なんて聞こえん。


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