ケーキなボクの冒険

丸めがね

その202 毒の矢

明らかに様子がおかしい怪鳥ジャック。

しかし、ブラックはジャックから離れようとしない。その背にはリーフとダグラスを乗せている。

2羽の巨大な鳥が空中で交差し合うのを、アーサーは下から目を凝らして見ていた。

「あれは・・・リーフ!それに兄貴!ダグラス!」
自分によく似たツルギの国の第一王子ダグラス。

「ブラック、ジャックさんはどこかおかしいよ!いったん離れよう!!」
「だってリーフ、ボクは・・・」
ダグラスがブラックの背で剣を構えた。次にジャックと接近したら刺すつもりだろう。

ブラックはそれを察して、森に下降した。
バキバキと細い木の枝が折れていく。

「あっ・・・」
リーフはすぐそばにアーサーの姿を見た。

「アーサーさん!!」
「リーフ!」

アーサーは駆け寄り、ブラックの背から転げ落ちたリーフを抱きとめた。

「アーサーさ・・・」
アーサーは、腕の中のリーフを逃がさないようにするためにキスをした。
「やっとオレの腕の中に帰って来たな、リーフ」

「アーサーさん!」

リーフの中の男の部分が認めないようにしていたが、もう認めざるを得なかった。

(ボクはアーサーさんが好きだ!)

懐かしい香りがする首筋を抱きしめる。


「あぶない、よけろっ!」

背後からダグラスの叫び声がした。

間一髪、アーサーの腕をかすめて矢が後ろの木に刺さって揺れる。

その矢を放った先には、リーフが良く知る顔があった。

「し・・・瞬さん!!どうしてここに・・・!?」

そこには大きな弓を構えて美しく微笑む瞬が立っていた。

「リーフ、キミは本当に面白い子だね。さあ、迎えに来て上げたよ。ボクと一緒に行こう」
「どうして・・・」

アーサーの腕の中で、言いようのない恐怖に震えるリーフ。
今までに感じたことのない、氷のような、絶望的な何か・・・・・

「ふざけるな!誰だお前は!」
アーサーがリーフを下ろして剣を構える。

瞬はニコリと微笑み、矢を真上に向けて放った。

「!!」

皆が驚く間もなく、バサバサと大きな音を立てて空中からジャックが落ちてきた。

瞬が放った屋は心臓に命中している。

「ジャックさん!」

と、同時に、アーサーも地面に崩れ落ちた。

「アーサーさん!!!」
アーサーを抱き起すリーフ。

「まずいな・・・これは猛毒の矢か・・・!!」
ダグラスも駆け寄ってくる。さっきダグラスの腕をかすめた時に毒が体内に入っていたのだ。

ブラックはジャックの側で泣きそうになっている。
「ジャックさん、ジャックさん、死なないで・・・!」

「大丈夫だよ、伝説のブラックファイヤードラゴンさん。その毒の解毒剤は持っているから。解毒剤と、キミの炎の羽があれば、アーサーとジャックは助かる。
さあ、リーフ、ボクのそばにおいで。この解毒剤が欲しければ、ね。」

「何でもします、アーサーさんを助けて!」
リーフは瞬のもとに走った。
瞬はリーフの腕を強く掴み、解毒剤の瓶をダグラスに投げる。ダグラスはその瓶の中身の液体をアーサーとジャックの口元に急ぎ注ぎ込んだ。

「いいね、間に合った。じゃあ今から三日三晩、ブラックファイヤードラゴンの炎の羽で二人の心臓を温めて。そうすれば息を吹き返すから。」

「それは・・・ほとんどネクロマンサーの呪術じゃないか・・・!」
ダグラスが怒りを向ける。

「未だ誰も試したことはないけどね。じゃあ、がんばって」

「アーサーさん、アーサーさん!!」
瞬に囚われながらアーサーの名を必死に呼ぶリーフ。

「やっと会えたのに・・・・」

「さあ、行くよリーフ」

瞬は美しい顔で微笑んだ。
微笑みながら、短剣でリーフの腹を刺した。

「えっ・・・?」

激痛を感じる前に何が起こったのか分からない。

ただ遠くから、ダグラスの絶叫が聞こえてきて、遠く遠く・・・意識が遠くに消えていった。



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