ケーキなボクの冒険

丸めがね

その139

「ねえ、アーサーさん、ツルギの国ってどんなとこなの?」
旅の一行で、ツルギの国を知らないのはリーフと仔馬のクロちゃんだけである。リーフは、休憩中の話題にとアーサーに聞いてみた。
「名前の通り、剣とともに生きる民の国さ。もっとも大半は農業や林業のために、剣より鍬や斧を持って生活しているがな。それでも子供のころから皆、剣を習い剣で遊ぶ。1年に一回、剣の大会が開かれる。そこで優勝するのが皆の夢なんだ。」
「うわ~、かっこいいなあ。」感心するリーフ。
「もちろん、俺もジャックも優勝してるんだぜ。一度優勝した者には、5年に一回の大きな大会に出場する権利が与えられる。そろそろ、そっちにも出るかな・・・。」
「いいあぁ!ボク見てみたいよ、その大会!あ、そうだ、アーサーさんボクに剣術を教えてくれるって言ったよね?!お願い、いま少し教えて!」
リーフはアーサーの返事も待たずに風のレイピアを構えた。
アーサーはヤレヤレ、という表情で立ち上がる。
「ほんっと、元気ねぇ。アタシなんか休憩中は余計な動きしたくないわ~」とため息をつくロザロッソ。
「リーフ、ケガをしないようにな!」過保護なジャックはハラハラしている。
アーサーはいつも背負っている大剣を構えた。「まあ、適当にかかってこい」
「よーし!」リーフが適当にかかっていく。見かけはチビの巨乳だが中身は15歳の男の子、剣を持つとワクワクするのであった。
カンカンと軽い音がして、アーサーが少し剣をひねるとリーフはころりと転がった。
「大丈夫かリーフ!!」慌ててジャックが抱き起す。「へーきだよ、ジャックさん・・・。」全然太刀打ちできないことが分かってしまった。
「あのな、お前、剣を構える前に、足腰腕の力が全然足りてないの。いくら軽い剣でも、まずは体を鍛えないとだめだ。」アーサーは大剣を収めた。「はい・・・」しょんぼりするリーフ。「ただしお前の剣は魔法剣だから、鍛えれば実力以上の力を出せるだろう。まあ、頑張りな。」
アーサーはリーフの頭をなでた。

リーフがクロちゃんの励ましとともに地味な筋トレをしている時、ジャックはアーサーの隣に座り込んでいた。「なあ、いろいろあってあまり話せなかったけど。」「うん?」「リーフが赤のドラゴンの欠片を集める者じゃないってどういうことだ?」「ああ・・・。オレもリーフからちょこっと聞いただけなんだがな。アリスとかいう美少女巫女が、青のドラゴンの羅針盤というのを持っていて、それが欠片を持つ者を探すらしい。まあ、それがホントならいずれ俺たちのもとにも来るだろうな。」
「そうか・・・。しかし、リーフのあの青い光の力は尋常じゃなかっただろう?」「うーん、その巫女が言ってたらしいが、リーフに刻まれた妖精の紋章がドラゴンの力の影響を受けたせいじゃないかってさ。そんな半端なもんじゃない気はするけどな。」「・・・まあいいか。あのリーフが、14人の男に抱かれるなんて無理な話だろうしな。オレもそんなことさせたくないし・・・。」汗だくになりながら腕立て伏せをするリーフを、愛おしそうな目で見るジャック。「お前さ、リーフのことどう思ってんの?黒ヒヨコみたいにさ、世話したくなる自分の子供か?妹か?それとも、女としてなのか?」
アーサーに正面から聞かれてジャックは考え込んだ。「・・・まだ、実はよく分からないんだ。もっとリーフと一緒に行動すればはっきりすると思ってる。この旅の間にわかるんじゃないかな。」「ふーん。ジャックらしいな。オレは、最初から抱きたいと思ってたよ。」
アーサーは立ち上がって空を見上げた。

旅はそこそこ順調なまま3日目。天候に恵まれたので予定より早く進んでいる。
「この先に面白い街があるのよ、リーフ。今日中に着きそうだわ。崖の上の町と下の町って言ってね、名前のままなんだけど。
ツバサの国をほぼ二分するほど、なが~いなが~い、ふか~いふか~い崖が続くの。その崖の手前に町があって、そこが崖の上の町。その街の地下道を通れば崖の下の町に着くのよ。」歩くだけなのは暇なのか、ロザロッソは道中よくおしゃべりした。
「へえ、おもしろそう!崖の下の町行ってみたいなぁ!」リーフとクロちゃんの目がキラキラ光る。
「やめとけやめとけ。あそこはただの小さいド田舎だよ。それに時間もない。崖には立派な橋が架かっているし、崖の下の町には名物のお茶があるが、上の町で買えるから。今回は下には行かないぞ」アーサーは興味なさそうだった。
がっかりするリーフを見かねて、ジャックが、「でも今夜は上の町に泊まるんだろう?オレがリーフを乗せて、少し下の町に連れてってやろう。トンネルを歩くと半日近くかかるが、飛べば一瞬だ。」と言った。
「やった~!嬉しい、ありがとうジャックさん!!」リーフは大喜び、クロちゃんは自分が行けそうにないので不満げだったが、「リーフが喜ぶならいいか」とこっそり強がりを言った。

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