ケーキなボクの冒険

丸めがね

その107

ブルーが無茶苦茶に馬を走らせている中、空模様が怪しくなってきた。リーフはブルーの腕の中でいろいろ言っているが、ブルーは返事もしなければ馬を止めることもない。
辺りが青く、暗くなり、身震いするような肌寒さを感じ始めたころ、雨が降ってきた。遠くで雷鳴が聞こえる。
「ねえ、ブルー、早く帰ろうよ!きっとすぐに嵐になるよ・・・!」リーフは大声で叫んだ。ブルーは無視して人気のない森をどんどん進んでいく。やがて、一件の小屋が見えた。狩りをする際、休憩場所として使う小屋だ。
ブルーはそこで止まり、馬をつないだ。
「ブルー、どうしてここに・・・?」何も答えず、引きずるようにリーフを小屋の中へ入れる。リーフはだんだんブルーが怖くなってきた。小屋の中は小さな暖炉とテーブルがある部屋と、ベッドがある寝室があった。
バダン!
ブルーが乱暴にドアを閉めたので、リーフは心底びっくりした。雨に濡れた冷たさのせいか、怖いからか、震えが止まらない。
「お城に帰ろうよ・・・ブルー・・・。」情けない声で話しかける。ブルーは濡れたマントを脱いでいた。
雨に濡れた髪、湖のような深い青の瞳、悲しみとも怒りとも取れない表情。
「ブルー、どうしたの・・・?」ブルーは静かに近づき、激しくキスしながらきつく抱きしめた。あまりにもきついので、なんとか離してもらおうとするが、口が塞がれて声を出せない。
ブルーはそのままリーフを床に押し倒した。
唇は解放されたが、近い距離で目と目が合う。「どうしておまえは・・・」「どうしてって、なに・・・?」
返事の代わりにブルーはリーフの服を引き裂いた。今日は、逃げられな気がする。



リーフたちが城に着く一時間前。ブルーのもとに、それを知らせる早馬の兵士がやって来た。その背の高い兵士は姫の無事と、リーフたちの帰還を報告し、小さな包みを王に渡した。
その包みの中に入っていたものは。

ブルーが青ざめた顔で振り向くと、そこにいたはずの背の高い兵士は消えていた。


「お前は、誰に体を許したんだ、リーフ・・・!」「えっ?何言ってるの、ブルー・・。ボク、そんなこと・・・」
ブルーは血で染まった布の一部をリーフに突き出す。リーフはよく意味が理解できない。「お前とむすばれた証拠だと、誰かがわたしに寄越した・・・」「う・・・、嘘だよそんなの!!そんな・・・そんなことした覚えなんてないもの!!」「私が確かめてやる・・・」
ブルーは激しく抵抗するリーフをねじ伏せ、下半身の服を全部剥ぎ取った。白い太ももにある妖精の紋章を見ると、形が変わっていた。「やはり・・・」「ちがうよ!うそだ!そんなことあるわけ・・・」ハッと思い出すリーフ。洞窟で、誰かに抱かれる生々し夢を見た。あれは夢じゃなかったの・・・?
「覚えがあるのか・・・」「ち、ちが・・・あれは・・夢だし・・」ブルーはまたキスで口をふさぐ。何も聞きたくなかったから。雨に濡れた髪の毛の、冷たい水がリーフの顔に流れる。
ブルーは髪をかき上げ、自分の服もすべて脱いだ。
リーフは床に裸で横たわりながら不思議な感覚でブルーの行為を見ていた。頭がボーッとして、霧がかかったようになっている。視界もぼやけている。もう抵抗する気力がなかった。濡れて冷え切った体は、すぐに熱くなっていった。



リーフが小屋から解放されたのは二日後だった。
朝、ブルーが寝室で眠っている間に、霧が深い小屋の外に出てみる。
森は霧で真っ白で、空気は澄み切っていて、静かだ。ハーッと息を出すと煙のようになった。
「ボク…大丈夫だよね・・・」自分に言い聞かせるようにつぶやくリーフ。「どうせ、やんなきゃいけないことだし!この世界を救うには赤のドラゴンを復活させるしかないんでしょ?ボクの体に欠片を集めるなんて、すごい方法だよなぁ!いやいや、まあいいか、将来男の戻ったときの勉強だと思えばいいんだし・・・・!」口に出すとスッキリするかと思ったが、なんだか泣けてきてしまった。大きな木の下にへたり込んでおいおい泣き始める。
こんなに涙って出るのか、って10分ほど泣いた後は少し落ち着いた。
グ~
お腹が鳴った。「人間ってどんな時でもお腹がすくんだな」リーフが苦笑いすると、
「そんなもんだよ。人間だもの(みつを)」そう言った声とともに、ゴンッ、とリンゴが落ちてきた。見上げるとそこには、
「アーサーさん!!」見覚えのある赤毛の王子が木の上に座っていた。

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