ケーキなボクの冒険

丸めがね

その102

「まさか、サスケさんの体の中にも赤の欠片が・・・・」「赤の欠片?」
リーフは戸惑った。赤のドラゴンの欠片のことは、まだリーフ、ブルー王、森の大賢者クルクル、シロクマのベイドしか知らない。言っていいものかどうか・・・。
「う、ううん、何でもないです・・・!それより、サスケさん・・・、どうしてボクにこんなことをしたの・・?」
返事の代わりに、サスケは黒いマスクをもう少し下げて、またキスをした。あまりのスピードに逃げ損ねるリーフ。「わかりません。ただ、そうしなければならない気がしたからです。」
「ううっ・・・」やっぱり赤のドラゴンの力なのだろうか。そう言われると文句が言えないし抵抗も出来ない。それどころか最終的には愛し合わなくてはいけないのだ。
「は、早く”ほかの方法”を探し出さないと、身が持たないぞ・・」ブツブツつぶやくリーフ。
サスケは特に赤の欠片のことを深追いして聞いてくることもなく、リーフを皆のところに連れて行ってくれた。

「あ~リーフやっと帰ってきたぁ!遅いぞぉ!」明るく言うロック。「ロック・・・誰のせいだよ・・・」
クルトは、心配かけちゃだめだよ、と言ってリーフの頭をなでた。


それでも予定より早く竜の舌の洞窟に到着したリーフたち。洞窟の前に来た辺りから吹雪いてきて、これ以上遅れたら道中が大変だったかもしれない。
リーフが、ブルー王に借りた小さな金の笛を吹くと、岩にしか見えなかった扉が開いた。
中から、ベイドの代わりに洞窟の番人をしている兵士が出てきた。「リーフ様。王より早馬での書状を承っております。どうぞお入りください。」ブルーが根回ししてくれていた。
暖かい洞窟の宮殿。リーフたちはエリー姫を樽から出してみる。幸い、エリー姫はまだ眠っていた。
「エリー姫は重いねぇ。たぶん90キロはあるねえ。」ロックがまた微妙なことをつぶやく。それは言ってはいけない・・・・。さすがにちょっと小声だったが。
これからさてどうしようかと皆で相談していると、突然薬が切れたエリー姫がガバッと起き上がった。辺りをきょろきょろ見回して、「ここはどこ!!!」と怒鳴り、リーフたちを見て、「これはどういうこと!!」
起き抜けに怒り狂っている。リーフは勇気を振り絞って言ってみた。
「あ、あの、エリー姫様。姫様をここにお連れしたのには訳がありまし・・・」「おだまりなさいっ!いかなるわけがあろうとも許しませんっ!!」
完全に迫力で負けている。エリーがリーフに飛びかかる勢いで向かってきたとき、急に動きが止まった。「え?!なに?!」「へへ~。きっと姫は暴れると計算しまして。」ペロッと舌を出したロック、エリー姫を寝かしていたベッドの鉄作に、彼女の腕を鎖で繋いでいた。
「ロック!お前まで仲間なのか?!目をかけてやったのに・・・!」エリーがギロリと睨みつけると、ロックはきゃあきゃあ言いながらリーフの後ろに隠れた。
「姫様、理由は私から説明いたします。」クルトが話し始める。
エリー姫の食事には毒が入っており、そのせいで姫の体が醜くなっていること、それは母であるリンゼイ王妃の仕業であること、その体を治すためには、ツバサの国から連れてきた王女の手の者である召使たちと離れ、健全な食事で治すしかないということを。
「・・・ゆえに、ご無礼を承知で、誰にも見つからないであろうこの洞窟までお連れしたのです。」「たわけたことを申すな!!母上がそのようなことをなさるわけがなかろう!わたくしを醜くするために、22年間も毒を食べさせ続けたというのか・・・・!!」
しかし、エリーはハッとした。
むかし、迷い猫を見つけたことがあって、お腹を空かせていたので自分のパンを与えた。すると猫は酷く苦しみ、嘔吐し、よろよろになりながら逃げて行ったのだ。でもそれはもともと病気の猫だったと思うようにした。
また、長雨と強い風が続いた時があって、エリー専用のパンとお茶が1週間用意されなかった日があった。その1週間、最初の3日は辛かったが、後半の4日は体が軽く、肌がきれいになった。あの時母は、疫病が流行っているからと強く外出を禁じた。
考えれば考えるほど、思い当たることがたくさん出てくる。
「そんなバカな!そんなバカな!」エリーがあまりにも興奮して叫ぶので、リーフたちはひとまず部屋を出て姫を一人にしておいた。ガマガエルのようなひしゃげた声の叫びは、それから随分続いたのだった。


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