ケーキなボクの冒険

丸めがね

その73

「あ・・・、愛されるって・・・どういうこと?」
「そ・う・い・う・ことじゃない~?」けらけら笑うクルクル。リーフは軽く眩暈がした。
この世界に来て、やたら襲われそうになったのも、その涙入り欠片とやらのせいなら嫌だけど納得がいく。
(たしかに、こんなチビで、巨乳だけど色気もない女の子がイケメンにモテモテなのはおかしいなと思ったんだよなぁ・・・。)

しかしこれは困った事態だと気づく。「ということは、ですよ、ボクはその赤いドラゴンの欠片が入ってる男の人に・・・狙われ続ける、ということでお間違えないでしょうか?」動揺して日本語がおかしくなるリーフ。
ベイドだけが無言でうなづく。
「ということは・・・」逃げるしかない、のである。リーフは後ずさりしながらその場を去ろうとした・・・が、もちろんブルーに捕まえられた。
「リーフ、つまりお前に惹かれる男はドラゴンの欠片を宿しているということになる。本人が知らないことの方が多いだろうが・・・。」
そんなこと言われても頭が痛いだけだった。「ううっ・・・何人ぐらいいるのかなぁ、なんて・・・」
「伝説によると、14と1つに分かれたんだって。赤いドラゴンの心臓は。1つっていうのは、涙入りの分だからもうリーフの中にあるの」とクルクル。
「14~~~~!!」思わず叫ぶリーフ。「無理です、14人の人とそんなことできません!」
「しかし、黒のドラゴンが復活する今、赤のドラゴンしかこの世界を守れる者はいない。赤のドラゴンを再生するには、その散らばった心臓の欠片を集めるしかないのだ・・・。」
「つまりボクが14人と・・するしかない、っていうの?」
「正確には、赤のドラゴンの霊体が持っていたかけらがすでにお前の中に入ったから、13人だ。」
よかった~一人減った~・・・っとかリーフが喜べるはずもなく。
「あのう、ほかに方法はないの・・・?」

「ないこともないよ」ケロッとクルクルが言う。「な、なになに?!なんでもするから教えて!!!」
「簡単だよ~。赤い欠片を持つ男を、殺して欠片を取り出せばいいんだよ~」
他の方法は絶望的だった・・・。





「あいたっ!」
額を押さえてつぶやいたのは、ツルギの国のアーサー王子。
「このごろ額がチクットというか熱くなるんだよな」
「あ、俺もだ。俺は両腕だけどな」答えたのは怪鳥ジャックである。
リーフと別れてツルギの国に帰り、戦いに備えて忙しく動き回っている二人。今は中央の城で、騎士たちを集め作戦や物資の準備をしている。飾り気のない、石の壁と机、椅子、暖炉しかないような会議室で話していた。
「この痛みがあると、必ずリーフのことを思い出す・・・」ジャックがつぶやくと、アーサーは渋い顔をした。
「なんであんなちっこい女の子のことが気になるかな・・・。面白いやつだとは思ったけど。どこにでもいる女じゃないか。この国で何人も女を抱いたが、あいつをどうしても思い出すんだよ」アーサーがバサバサ髪の毛をかく。何かを我慢しているみたいだ。
ジャックも目を閉じて同意した。
「なあジャック、噂によると、ホシフルの国のマーリン王子、ララ王子の呪いが解け、ヒョウガの国に備えて国境の砦に分かれて行ったとか。」「うん・・・。マーリン王子とともにいるはずのリーフはどこでどうしいているのか。鳥たちに聞いているのだが、どうも最近何かにおびえていて答えてくれない。」
リーフのことが気になりつつも、ツルギの国から動けない二人。そこへ、トコトコという音とともに、12歳ぐらいの男の子が入ってきた。と思ったらベチッと何にもない床につまずいてこける。えへへ、とぶつけて赤くなった鼻をこすりながら立ちがり、アーサーの前に立ってぺこりとした。
「アーサーお兄様、ボクがリーフという女の子を探してきましょう。」



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