ケーキなボクの冒険

丸めがね

その58

「蒼月の儀って・・・

つまり、毎日マーリン王子と、ララ王子と、交代で・・して、赤ちゃんができた方と結婚するってことでしょうか・・・?」

王が無言でうなづく。
「無理ですーーーーーーーー!!!」リーフの絶叫が広間に響いた。皆は顔色を変えないようにしている。
「おかしいでしょ、そんなの!ああいうことは・・・、好きな人とだけするもんでしょ?ボクにどちらか決めろっていうなら百歩か二百歩譲ってありえるかもしれませんが、ボクの意思に関係なくそんなことで決めるなんて変です!!」
「リーフ、しかしお前はどちらか決められぬであろう。決められたとしても、選ばれなかった王子は納得できぬと申しておるのだ。だから決定を神の意思に委ねるのだよ。」王は優しく言った。
「嫌ですっ!絶対嫌!!ボクはもう、お城から出て行きます!」踵を返してリーフが広間を出ようとすると、兵士が腕を掴んで止めた。「離してくださいっ!!」
「これより3日後が新月になる。その日から蒼月の儀を行うこととする。それまでは、一時たりとも護衛を付けぬ時はないだろう、リーフ。」
リーフは王子たちを見た。「ララ王子、マーリン王子、ほんとにそれでいいの?ホントにボクのことが好きならこんなことしないよね・・・ほかの人がボクと・・するなんて耐えられないはずだよね?!ボクなら好きな人がほかの人とするなんて無理だよ!そんなの結婚じゃないよバカーっ!」二人の王子は無表情な、冷静な顔をしている。心の中が読めない。「何とか言ってよ、卑怯だよ、王子っ!!」リーフなりに大暴れしつつ、しかし抵抗むなしくあっさり部屋に連れて行かれてしまった。
王の言葉通り、リーフには常に護衛がつけられた。部屋の外には屈強な兵士が、中には女戦士が数人付き添っている。どんなに頼んでも一歩も外に出してもらえない、三日間監禁するつもりらしかった。
リーフの楽しみはお菓子作りとクルクルと遊ぶことぐらい。あれからクルクルは人間にならなくなった。「あれは夢だったのかなぁ・・・。」クルクルを抱っこしながら思う。
スカーレットが様子を見にやってきてくれた。なんだか彼女も悪の手先(王子たちの仲間)のような気がして、冷たい態度をとってしまうリーフ。「蒼月の儀までは、王子と言えども男子は一切こちらの部屋に来られませんので、私が代理で何なりとリーフ様のお申し付けに応じます。」沢山の宝石やご馳走を持参している。
宝石には興味がないし、ごちそうを食べる元気もない。「全部いらない、返す」「ボクはここから出してほしいだけです!」
「そのようなことをおっしゃいますな・・・。ララ様も、マーリン様も、本当にリーフ様のことを想っておいでなのですよ・・・。このような方法になりましたのは、お二人の想いがあまりにも大きい故と私は理解しております。」
「みんな勝手だよ。ボクは・・・無理・・。二人に交代で・・妊娠するまで抱かれるなんて。」
「リーフ様…。ララ王子もマーリン王子も、聡明にしてお美しく、さらに強く権力もおありです。悪魔の呪いが解けた今、この国に限らず、近隣諸国の女たちがその身を投げ出しても妻の座を望むであろうほどのお方なのですよ・・・。そのお二人に同時に望まれるとは、どんな神の力をもってしても与れない幸運かと存じます・・。」
「ちがうんだって!ボクはダメなんだって!」リーフはうまく説明できないことがもどかしかった。
「ボク、本当は男だって何回も言ってるでしょう・・・」
「またそのような戯言を。」困るスカーレット。
この会話の繰り返しである。もう、うんざりだった。
「じゃあ・・・!」リーフはスカーレットにキスをした。「!!」
「スカーレットが、ボクの初めてになってよ!王子が初めてなんて嫌だ!」「お戯れを申されますな・・・!このようなことは許されませぬ・・・!」スカーレットは逃げるように部屋を出て行ってしまった。
「でしょう、でしょう・・・・。ボクだって、そんな気持ちだよ!」泣きながらベッドに突っ伏すリーフ。
(あさってからは王子と子作りだし、スカーレットさんには嫌われるし、どうにでもなれっ!)というむしゃくしゃした気分だった。
そして泣きながら眠りについて、また想像しえなかった朝を迎えることになる。

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