ケーキなボクの冒険

丸めがね

その46

「ララ?彼女?!」
リーフは突然聞かされる新しい事実にびっくりした。
「あっ・・・ていうか、彼女って、妹さんかお姉さんってことだよね?さっき王には男の子しか生まれないっていったじゃない・・・?」
王子はスカーレットと目を合わせた。言っていいものか悪いのか迷っているようだ。
「これには複雑な事情があって・・・、正確には、ララは男でも女でもない。そして男でも女でもある・・・。」
「はい?」
「王子のご帰還だー!」3人の会話を遮るように兵士の声が響く。馬車は城内の奥に入って行った。

マーリンの城には美しいバラがたくさん咲いている。立派な城壁、清潔に手入れされた庭、鍛冶屋や馬小屋など一通り揃った施設、どれも見事だった。城の中にもう一つ小さな町があるようだ。
話は途中になっていたが、リーフたちは慌ただしく馬車から降りて大広間に向かった。
ひときわ華やかな装飾で彩られている大広間には、すでに王が座っていた。マーリンによく似た銀髪の美しい王。ただその瞳だけが違い、深い青色だった。妖精の血のせいか、随分若く見える。マーリンの兄と言ってもおかしくないぐらいだ。

「すでに早馬で到着した兵士から聞いておる。婚儀を済ませたというのはその娘か。」王は瞬きもせずリーフを見た。「・・・まだほんの子供のようだが・・・。」
「しかも、どこもかしこも傷だらけで、美人とは言い難いな。黒い髪の茶色の瞳とは、異国の者か?」
ずいぶん失礼な言い方をするやっちゃなーと思うリーフ。(異国も異国、違う世界からきたっちゅーの!)ブツブツ・・・
「王、お聞き及びかと思いますが、わたくしの呪いはこの者によって解けました。我が一族の1000年の地獄が終わったのです!」「それは・・やはりまことなのか・・・?」
王はリーフの前に進み出て、頬を触った。「普通の少女のようだが、お前は何者だ?」
答えに困るリーフ。だいたい自分が呪いを解いた気もしないし、中身は(ダメダメ寄りの)普通のチェリーな男子高校生15歳である。
「では、ララのことも救ってくれるのか・・・?」王は懇願するような脅迫するような複雑な瞳をリーフに向けた。
「王、今日のところはこの者も長旅で着かれておりますので、どうかご容赦を。明日にでも、引き合わせてみようと思います。」とマーリン。「・・・そうか、そうだな。では部屋を用意しておるので下がってゆっくり休むがよい。リーフ、よく参った。そしてよく王子を救ってくれた。礼を言うぞ・・・。」
多くは語らないが、王の長年の苦痛が感じられる。王もまた生まれ落ちた瞬間から半身を呪われ、地獄の苦しみを味わってきたのだろう。

リーフは立派な部屋に通された。暖炉がパチパチ燃えていて、暖かそうだ。暖炉が珍しいリーフが眺めていると、マーリン王子が後ろから抱きしめてきた。振り向かせてキスしようとしたので必死に止めるリーフ。
「あのっ、ララさんについてもう少し教えていただけませんか?あと・・・ボクは救ってあげるとか、特別な力なんてないから非常に困るんですけ・・・」
言い終わらないうちに強引にキスをする王子。壁に押し付けられて身動きができない。(これが本当の壁ドンかーーーーー!)とか思ってる場合ではなく、王子のその手が胸に伸びてきた。
(ボク、流されるまま婚儀したりやらお城に来たりやらしちゃったけど、よく考えたらヤバくない??!!)
やっと、やっと気づくリーフ。このまま女の子として結婚するということは、どういうことか、初めて考える。
(無理無理無理ーーーーーーーーーーーーー!!!!!)どう考えても無理である。王子の手が胸元から服の中に入ってきたとき、ちょうどスカーレットがやって来た。
(た、たすかった・・・)命拾いするリーフ。
「・・・お取込みのところ失礼いたします。王子、急ぎ来ていただきたいことが・・・」スカーレットは明らかに焦っていた。彼女が王子に何か耳打ちすると、王子の顔色が変わる。
「リーフ、今夜は必ず部屋に鍵を賭けなさい。護衛もつける。いいか、夜が明けるまでは決して油断しないように!」
そう言い残すと二人はどこかへ行ってしまった。

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