ケーキなボクの冒険

丸めがね

その11



「ジャックさん人間・・・なの?」
大ちゃんは泣くのを忘れて目を丸くした。
アーサーよりガッチリして筋肉質な、野性味あふれる、イケメンである。バサッとした無造作な髪も、そこからのぞく鋭い瞳も、THE男前、カッコよすぎる。

大ちゃんは心の中でまたチッと舌打ちした。
コレコレコレ、こーゆー姿になりたかったわけよ・・・。クラスで一番可愛い及川さんのタイプがきっとこういうタイプなわけよ・・・こんなんだったら人生100倍楽しいわけよ・・・とか思っているうちに、
ジャックに二の腕を掴まれて宿屋へ連れていかれた。 
「ま、まって、ボク逃げなきゃ・・・」
「オレが守ってやるから安心しろ。それよりその体をきれいにして、なんか喰え」
扉の向こうの酒場は見かけより奥行きが広く、男たちで一杯だった。

その中で忙しそうに 働く大柄な(太った)女のひとが、ジャックを見つけて駆け寄ってきた。
「あら、ジャック久しぶり~!珍しいね、しかも人間の姿なんて、あら・・まあ、女の子連れじゃない!」
女の人は、ジャックの後ろで見えなくなりそうな大ちゃんをヒョイとのぞき込む。
「あら小っちゃい。子供?」
「ちがう」「ハルさん、この子は汚れてるからまず風呂を貸してくれ。後で飯を食わせるから何か用意しておいてくれ」
ジャックは用件だけ早口で話す。ハルさんと呼ばれたその女の人はにやにや笑って「はいはい、二階の左を使っとくれ。」「ベッドも用意しておくよ」と言った。


酒場からはいい匂いがしてきて、大ちゃんは空腹に気づいてクラクラした。
が、容赦なくジャックに二階に引っ張っていかれ、バスタブに突っ込まれる。
ちょっと抵抗したがサッとマントを引っぺがされて素っ裸にされた。
その上からザバザバとお湯を掛けられる。

お湯の熱さと恥ずかしさで大ちゃんの顔と体はポワッとピンク色に染まった。
ジャックも少し赤くなって、大ちゃんに布きれを投げて寄越した。「体を洗え」そして見ないように後ろを向いて窓際に座った。


大ちゃんは渡された布きれで体を洗いつつ、初めて自分の「女の子」の体をマジマジ見た。
胸以外は折れそうなくらい細くて、白い。

そして、あるべきものがない・・・・・。

何とも心細く情けない気持ちになって、また泣けてきた。
後ろを向いているジャックに聞こえないように泣いたつもりだったが、「ひっ・・・く」としゃくりあげる声が漏れてしまった。

ジャックが振り返り、お湯と涙でグチャグチャの大ちゃんと目が合った。
「・・・だいじょうぶか・・・?」

ジャックは大ちゃんの頭をなでた。その手は瞳の涙をぬぐって、唇に触れる。そして首筋から胸元に降り・・・


「ごはん、できたわよ~!」
階下からハルさんの元気な声が聞こえてきた。
「これに着替えてこい」
ジャックはタオルと着替えを置いて先に部屋を出て行った。

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