ケーキなボクの冒険
その10
大ちゃんはハゲワシに掴まれて夜空を飛んでいる。恐ろしくて目が開けられない。
ハゲワシタクシーは想像以上に揺れたが、掴まれたところは痛くなかった。ハゲワシは包み込むように優しく持ってくれていた。
数分後その状況に少し慣れて、 大ちゃんがそ~~っと目を開けてみると、下は森を抜けた辺りで、そこから開けた草原に一本の道が通っており、その先に町らしきものが見えた。
夕日の赤色が消えかかり、夜の紫が降りてきて、星々が揺らめく空を大ちゃんは飛んでいる。
「きれいだなぁ・・・」
大ちゃんは思わずつぶやいた。
ハゲワシのジャックは聞いていたのかいないのか、町までの直線コースを少し迂回する。
すると隠れたところに、花畑が見えた。その花たちは星の光を受けて、キラキラミラーボールみたいに輝いている。
「わっ!すごい!なに、あの花?!!ジャックさん、あれあれ!」
大ちゃんはきゃっきゃとはしゃいだが、ジャックは特に何も答えずまた街のほうに向かった。
「あ・・・残念・・・もっと見たかったなぁ・・・。あの花一本欲しかったなぁ・・・あ、でも枯れるとかわいそうかなぁ・・・。」
バッサバッサと羽音が大きくなり、大ちゃんとジャックは町の東端にある宿屋の前に降り立った。
酒場を兼ねているようで、一階から酒を飲んだ男たちの賑やかな声が聞こえてくる。
大ちゃんはマントにくるまり直し、ジャックにお礼を言った。 
「あの、運んでくれてありがとう・・・。でも、せっかく連れてきてもらったけどボク、逃げなきゃいけないんだ。 アーサーさんが 来たらえらいことになっちゃうから・・・」
「抱かれるのか?」
ジャックは直球で聞く。大ちゃんは口に何も含んでいなかったが漫画みたいに ブッーーーーっと吹きそうになった。
「だだだだ・・抱かれるって・・・いやあのでも・・・・ううう」
言葉に詰まる大ちゃん。なんたって、中身はチビでドジで情けないチェリーな14歳である。というか外見も性別が変わって巨乳になっただけなのだが・・・。
ここ数時間で起きたいろんなことが グルグル頭に回って、この状況の不安も押し寄せてきて、大ちゃんはポロポロ泣いてしまった。
泥で汚れた小さくてどんくさそうな女の子が、マント一枚の姿でしみじみと泣いているのは実に哀れに見えたのだろう、
ジャックは「今晩、お前の体を守ってやろう」と言い、
首を上の大きく持ち上げたかと思うと、
下した時には
男性の姿に変わっていた。
「ええっ!」
ちなみにジャックはハゲワシだが人間バージョンは禿げてなかった。
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