ケーキなボクの冒険

丸めがね

その6

   リンゴを落とした主が、木の上からこちらを見た。
紅い髪、蒼い瞳、長身のイケメン、なにより片耳の紅いダイヤモンドのピアス 、
まさに彼は、
大ちゃんが憧れているゲームの騎士、アーサーだった。
「アーサー?!」
「あれ?俺のこと知ってるの?お嬢ちゃん。」
アーサーは大ちゃんの真横に飛び降りてきて、じろじろ彼女(?)の全身を見た。 
おもむろに胸を鷲掴みにする。
「!!!!!!」
とっさのことに大ちゃんは揉まれるがままになってしまった。
一分ほどそうしていただろうか・・・。
「はっ!」
大ちゃんは我に返った。
「やめてください!!!!!!」
アーサーも我に返った。
「 いや、つい。大きかったもんで。」
実物?のアーサーは、ゲームより軽い感じだった。しかし立ち姿はたくましく美しく、声もカッコイ。自分はこの姿になりたかったのに、と大ちゃんは心の中でチッと舌打ちした。
「ところで、キミのコレ、なに?」
アーサーは大ちゃん掛けている丸めがねをつついた。変身したものの、メガネはそのままだった。
「これはメガネといって・・・視力がよくない人が掛けると、よく見えるようになって・・・」
大ちゃんの説明が終わらないうちに、アーサーはメガネをヒョイと取り上げた。
途端に、視力0.3の大ちゃんの視界は水の中のようなボケた風景になった。
「わっ、返してください!」
大ちゃんが困っているのを見て、アーサーはヘラヘラ笑って走っていく。
大ちゃんはうっすら見えるアーサーの影を必死で追いかける。
女の子になって、ゲームの世界に来ちゃった上、メガネをなくして周りが見えなくなるなんて冗談じゃない!困る!

「お願いします、本当に困るんです、返してください~~~!」
自分の口から可愛い女の子の声が出るなんて、思ったより情けなかったが、大ちゃんは必死だ。

何とか追いついて、アーサーの手からメガネを取ろうとする。
しかし二人の身長差は30センチ以上あり、全然届かない。
そのうち足がもつれて、大ちゃんが覆いかぶさるようにアーサーといっしょに草むらに倒れこむ。
アーサーのたくましい胸に大ちゃんのポヨンとした胸が重なった。

アーサーは真顔になって大ちゃんを下に組み敷き、キスをした。
 

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