皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~

亜里沙 海里

39話 ランクス②


「ランクス殿、アリア様から離れてもらおう。」


 ランディ殿は私の首に剣の先を付きつけたまま言ってくる。


「······。」


「ランディ!お止めなさい!」


 アリア様がランディ殿の腕を持つ。


「アリア様、これは罪になります。無理やりアリア様とキスを····」


 ランディ殿は悔しそうに歯を食い縛りながら私を睨む。


 罪か·····別に罪に問われても構わぬが。


「ランディ、このことは黙っておいてください!」


 アリア様の言葉にランディ殿も驚いて、私に突きつけていた剣を下ろした。


「アリア様!?」


「ランクスとは何もなかった。私達は普通に話していただけです。」


「ですが!?」


「これは命令です。ランディ。」


 ランディ殿は納得をしていないようだが、命令と言われたら何も言えなくなったようだ。


 ·····アリア様どうして·····。


 かく言う私もアリア様がどうして私を庇うのか分からなかった。


「ランディ、私はランクスとまだ話すことがあります。元の位置へ戻って下さい。」



 ランディ殿は私を一睨みをすると何にも言わずに元にいた場所にまで戻って行った。


 それを見届けてアリア様は私に話かけてきた。


「ランクス·····」


「謝りませんよ。」


「······。」


「私はまだ貴女を愛しているから····」


 アリア様は私の告白に困ったような顔をする。


「既にアリア様は人妻で、皇太子妃です。許させることではありませんが罪で牢獄に入られようが死罪になろうが構いません。」


 私にはその覚悟がある。


「ランクス·····嬉しいけどそんなこと言わないで····貴方はサマヌーン国には居てくれないとならない人なんだから。」


「アリア様にそう言って頂けて幸栄ですが、自分の気持ちにはもう嘘を付きたくないのです。」


「ランクス私は····」


「今回は口づけを不問にしてくださりありがとうございます。でも謝りませんし後悔もしておりません。これだけは覚えておいて下さい。世界中の人々が敵に回ったとしても私はアリア様の味方です。もしリンカーヌ王国が嫌になったら一緒に逃亡し貴女と共に生きるつもりです。」


 アリア様、貴女様を愛してます。

 今すぐ抱きしめてその愛らしい唇にもう一度口づけをしたい。

 だが、アリア様の困った顔を見ると····私はぐっと我慢をする。


 私達はキース達が帰ってくるまでお互いに無言まま過ごした。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 それから2日間はアリア様と会うことが出来なかった。

 避けられているのかと思ったが、どうやら違うらしい。ルイス殿下がアリア様を離さないようで、ネネ殿も会うことが出来ていないらしかった。


 いくらアリア様に口止めされたとは言え、やはりルイス殿下の耳にキスの件が入っているとは思っていたが、拝めがないのでランディ殿はアリア様の言い付けを守ってくれているようだ。


 ただ敵と認識されたらしく、キース殿に会いに行った時に睨まれる。まっ、仕方がないことだが。


 私達の滞在期間は一週間。アリア様と再び会えたのは帰国する当日だった。


 アリア様は少し青い顔をされていたが、見送りに来てくれた。その隣にはルイス殿下の姿はなかった。この日は何ヵ国かが帰国する為に対応しているからだとアリア様は言っていた。

 ルイス殿下は他国にあまりアリア様を見せたくないらしく、謁見の間にも連れて行ってくれないそうだ。

 今もプンプン怒っている。

 ·····怒っている姿も可愛いが。


「アリア、大丈夫か?」


「ええ、大丈夫よ。ギルバートお兄様。舞踏会の後に会いに行けなくてごめんなさい。」


 アリア様がギルバート様に謝る。だがギルバート様はアリア様を少しからかうように言った。


「まあ、仕方がない。それだけルイス殿の愛情が深く、強く愛されて起き上がれなかったんだろう?はっはっはっ!」


 ギルバート様は何気なくおっしゃっているだろうが、その言葉が胸に突き刺さり苦しくなる。


 アリア様はただ苦笑するだけだった。そして私の方に向き笑顔でお別れの言葉を言う。


「ランクス、この度はわざわざ遠いとこから来てくれてありがとう。ギルバートお兄様も。」


「おい!アリア!私はついでにか!?普通反対だろ!」


 アリア様ニッコリと笑い軽くギルバート様を無視をした。

 強くなられましたね、アリア様。


「ランクス、私のことは大丈夫だから貴方自身の幸せを考えてね。」


 アリア様は少し顔を歪ませて言ってきた。


「勿論です。私は自分の幸せを考えてますよ。そして行動もするつもりです。」


 私も笑顔で応えた。



 帰路の途中に馬車の中でギルバート様に本心を告げた。

「バーバラ様との婚約は白紙に戻そうと思っております。」


「おっ、お前今さらか?」


「はい。好きでもないですし、結婚しても愛せませんのでバーバラ様に失礼ですし。」


「····愛せないか。言い切ったな。だがバーバラはお前のことが大好きだぞ。納得しないと思うが。」


「バーバラ様が納得しようが納得しまいが、私には結婚する意思はありません。私が愛しているのはただ一人です。」


「······」


 私のその言葉でギルバート様も察していたのか、それ以上何も言わなくなった。



 サマヌーン国に帰国後、メンデル国王にもその旨を伝えた。


 かなり激怒されて、処罰もすると言われたが、別に構いません。処罰も国外追放をお願いしますと申しあげると、私の意思が固いと感じ取ったのかおとがめなしとなった。只し、全くおとがめなしという訳にはいかないので1ヶ月の自宅謹慎と慰謝料を支払うことになった。


 勿論バーバラ様はかなり荒れて暴れて、はたまた自殺騒動を巻き起こしたがそれでも私の心が動くことがないと解ると諦めたようで大人しくなった。


 バーバラ様はその数ヵ月後、伯爵家に嫁いで行かれた。



 私は今は宰相の任命式が行われ、宰相として日々頑張っている。


 また近いうちに友好国の外交で宰相としてリンカーヌ王国に行くことになるだろう。


 私はそれを励みに頑張っている。

 積極的に他国と交流し、閉鎖的だったサマヌーン国に少しずつ他国の文化も取り入れている。



 アリア様に胸を張って会うために。サマヌーン国を豊かにするために。


 アリア様、遠く離れたこの地で貴女様の幸せを願ってます。


 そして愛してます。誰よりも·····。



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