皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~
23話 リンカーヌ王国へ
旅は順調に進んでいた。
キースは私の側近として仕えてくれているが、リンカーヌ王国からも私専用の近衛隊が組まれていた。
その隊長を務めているのが、ランディ。見事なブルーの髪の色で、瞳も青色。美青年だ。身長もキースよりちょい上な感じで長身。さぞかし女性にモテるのでしょうね。しかもとても若いわ。ランクスと同じくらいの年齢かしら?
「アリア様、初めまして。この度、アリア様の身辺警備を任されました近衛隊隊長のランディ・ホーンと申します。そちらのキース殿と一緒に頑張っていきたいと思っておりますので宜しくお願いいたします。」
優雅にお辞儀している姿には花があった。
物腰も柔らかそうな方だわ。
「ランディ、こちらこそ宜しくお願いしますね。」
私がそう言って笑顔で対応すると、ランディーは少し頬を赤く染め照れたように目線を逸らした。
「リンカーヌ王国のことが分からなければ何でも聞いてください。リンカーヌ王国はとても良い国です。早くアリア様がリンカーヌ王国に慣れて頂けたらと思います。」
ランディは私との挨拶が終わるとキースの方に向き話しかけた。
「キース殿、お久しぶりです。まさか同じように働けるとは思いもよりませんでした。」
「ああ。私も驚いているよ。」
二人は固く握手を交わした。
二人とも知り合いなのかしら?
「これからは宜しくお願いします。」
「こちらこそ宜しく頼む。」
それからランディは私の方に向き軽くお辞儀をし
「それでは持ち場に戻りますので失礼いたします。」
と、去っていった。
「キースはランディと知り合いなの?」
「ええ。リンカーヌ王国の武道大会で必ずと言っていいほど対戦してましたから。」
「あら!そうなの?」
「はい。優男に見えますがかなり強いですよ。私とは五分五分か、向こうが少し強いかもしれません。最年少で優勝をしたこともありますから。」
え!?
優勝って凄いわ!人は見かけによらないわね!
「彼は今年で20歳だったと思います。」
あっ、ランクスと同い年だわ。
ちょっと親近感湧いた私だった。
でも·····
「そんなに強い人を私に付けていいのかしら······」
ちょっと疑問に思った。
するとキースはその訳を教えてくれた。
「アリア様だからだと思いますよ。」
「私だから?」
「はい。アリア様は大国のリンカーヌ王国の皇太子妃になるお方と同時に白銀の髪色をされています。」
·····なるほど。誘拐とかに合いやすいのね。
「アリア様のような白銀の髪色を持たれている方はこの大陸の中でもアリア様で四人です。その内の二人はリンカーヌ王国にある教会とゼブラルオーイ国の教会におられるます。そしてアリア様のお母様であるマリアンヌ様。そんな貴重な人物を守る為にはかなり剣術に長けた強い者を付けるのは当然と言えますね。特にリンカーヌ王国は各国から色んな人々がやってきますから。」
「そうね·····確かに。」
サマヌーンは辺鄙な所にある国なのでほぼ貿易はリンカーヌ王国のみ。他の国ともしているけどそこまでの交流はない。危険もそんなになかったのでのほほんと暮らしていたけど、これからは自分自身も気を付けないといけないのね。
やっていけるかしら·····。
私が不安に思っている中、そこまで黙って聞いていたネネの一言。
「ところでランディ様って恋人とか婚約者とかいるかしら?」
ネネ·····今はそんなどうでもいい事を聞くところではないわよ····
キースも呆れたような顔をしていた。
「·····恋人とか婚約者とかの女性関係は分からないが、ランディ殿は公爵家出身で次男だそうだ。」
それを聞いたネネは目を輝かせて
「まあ!凄くお買い得物件じゃないですか!」
ネネさん····貴女は人妻になったのよ·····
「剣術も強いのなら身体も鍛えてらっしゃるわよね!ああ·····一度でいいから身体の筋肉を見せてくれないかしら·····」
手を合わせて、目をうっとりとさせて言うネネ。
相変わらずネネの基準は筋肉なのね。
あっ!キースが不機嫌になったわ!
知らないーと!
私は自分の膝の上に置いてある籠の中いるシャルに話しかけた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
魔物はちょくちょくと出没したけれど、あっという間に護衛の人達やピューマが瞬殺していた。
無事にリンカーヌ王国に入国したが、ピューマの事でひと騒動があった。ピューマはすでに成体になっており、三メートルを越すほど成長していた。
それを見た門番が大騒ぎしたのだ。
ランディが何とか宥めて入国が出来たのだ。
そりゃあ、いきなり三メートル越えの獣がきたら驚くわよね。
でも一応、首輪とリードは付けていたのだけれど。お飾り程度だけどね。
ピューマは行く先々で初めて見る獣に住民に驚かれ、恐怖で喚かれて、かなり傷ついた感じだった。
王城に着いたら目一杯甘やかしてあげないとね!
王都に着く前にもうすぐ到着する旨を早馬で知らせた。
道の整備をするため、明日王都に入るようにと手紙が届いた。
今日は野宿ね。
リンカーヌ王国に入国してからはあまり宿に泊まっていない。
ピューマがいるからだ。ピューマと一緒に泊まれるところが極端に少なかったのもあるが、宿側が嫌がったのだ。
ランディ達の護衛は申し訳なさそうにしていたが、私は構わなかった。ピューマのお腹を枕にして寝るのは好きだし、安心できるから。唯一きつかったのはお風呂に入れなかったことぐらいね。
王城に着いたらまずはお風呂に入らせてもらいましょう!
今日もピューマのお腹を思う存分にもふり、ふかふかの毛に包まれて夜を過ごした。
次の日。
王都の門のところまできて、私は馬車をおりピューマの背中に乗った。
ピューマは私の可愛い相棒であること、ピューマは無害だよと国民に知ってもらう為にである。
ランディには反対されたけど強行!
これからはこの王都に住むことになる。少しでもピューマが自由に····過ごし易くするためにやるのだ。
私はピューマの背中を跨げるようにとドレスではなく、ブラウスにズボン····ズボンはスラッとした物ではなく、ふわっとして足首できゅっとしまってるデザインの物を履いた。
髪の毛もネネにポニーテールにしてもらい、一見お姫様には見えないスタイリッシュな風貌でピューマに股がっている。
私の周りにはキースは勿論、ランディも囲むように歩く。
ギィギィギィと問が開いた。
開いたとたんに沢山の国民がいるのが見えた。
道はちゃんと確保されており、ロープも引かれて警備員も一メートル置きくらいに並んでいる。
私はリードを掴み、ピューマに話しかける。
「さあ、前のお馬さんの後をついて歩いて。」
ピューマはのっそりと歩きだした。
歓声は聞こえない。皆、ピューマを見て驚いている感じだった。
「あ、あれがサマヌーンから来たお姫様かい?白銀色の髪の毛をしてる!」
「な、何で獣の上に乗っているんだ?」
「あの獣は黒ヒョウじゃあねぇか!初めて見た。かなり凶暴と聞いてるが大丈夫なのか?」
国民の噂話が聞こえる。
私は笑顔を作り、周りに手を振った。
その瞬間、大歓声が起こった。
「「「「アリア様ー!」」」」
「「「「白銀の姫様ばんざーい!」」」」
私はひたすらその声援に応える為に笑顔を絶さず手を振り続けた。
国民は私を見る為なのか前に出ようとしお互いにぎゅうぎゅうに押し合っている。
「こら!前に出てくるな!押すな!」
警備員は一生懸命に前に出ようとしたいる国民を抑えている。
警備の方、ご苦労様です!
そんな時に小さな男の子が大人に押されてこちら側に跳ね出された。
「ああーん!」
小さな男の子がこけて泣いている。
警備員は国民を抑えるのに必死で子供どころではない。
私はピューマに止まって屈むように言った。
私が急に止まったのでキースやランディは何事かとこちらを見たが、そんなことは無視してピューマから降り、その男の子の元へと向かった。
そして泣いている男の子の抱き上げた。
隣いた警備員は驚いて
「お姫様!平民の子です!服が汚れてしまいますので····」
「大丈夫よ。」
私は警備員の言葉を遮り言った。
「それに平民とかは関係ないわ。そんないい方はよろしくなくてよ。国民あってこそこの国があるのです。国民無くして国の繁栄や維持は出来ませんわ。特に子供は将来このリンカーヌ王国を盛り立ててくれる大切な国民の一人よ。」
私はそう言うと子供に話しかけた。
「大丈夫?」
「うん。」
男の子はもう泣いてはいなかった。でも足に擦り傷があり血が出ていた。
「マルク!」
この子のお母さんらしい女性が名前を呼んだ。私はその女性の元へ行き男の子を渡した。
「申し訳ありません!申し訳ありません!」
泣きながらひたすら謝る女性。
「何故謝るの?」
私が聞くと女性は
「行く手を妨害してしまいました!処罰は私が受けますから子供は勘弁してやってください!」
ペコペコと男の子を抱っこしたままする。
「そんなことどうでもいいのよ。それよりもその子足をケガをしているわ、ちゃんと手当てをしてあげてね。」
私がそういうと女性や周りの人達はポカーンと口を開けて私を見ている。
「い、いいのですか····罰は」
「そんなことしないわよ。ランディ!」
私はランディを呼んだ。すぐにランディは私の元へやってきた。
「これは処罰対象なの?」
「はい。妨害罪になり最低3日間の鞭打ちになります。」
は?こんなことで?
「····そう。では処罰はなしで。」
「え?」
「私が罪は問わず、処罰はなしと言っているのです。よろしいですね。」
私が強めに言葉を発すると、ランディはお辞儀をして了承した。
「仰せのままに。王族の服を汚しても罪になりますが····」
「これは自分で汚したのです。」
「御意」
そして私は国民に笑顔を振り撒きながらピューマの元へと向かった。国民の歓声がまた上がる。
後ろからは女性の声が聞こえた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
うん!どういたしまして!
私は心で呟いた。
そしてまた王城に着くまで、国民の歓声に私はひたすら笑顔を振り撒き手を振った。
王城に着き、ピューマはキースに任せ、服装を整えてから国王やルイス王子に会うこととなった。
私は急いでお風呂に入り、ルイス王子が用意したピンクのドレスを着た。
そして今、国王に謁見するために謁見の間のドアの前にいる。
私は一呼吸をし、目の前のドアが開く。
いざ出陣!
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