皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~
22話 脅して許可を得る
私がまずしたことはルイス王子に手紙を書くことだった。
内容はキース隊長のこと。そして色々な条件を書き込んだ。
ネネに二度目のプロポーズをしたキース隊長はその日の内に退団届けを出した。
だが、勿論のこと上層部はキース隊長に考え直すようにと引き留めている。
それもそのはず、キース隊長は我が国屈指の騎士だから。盗賊やら魔物狩りやらの活躍で名が知られている。
あとはリンカーヌ王国で毎年開かれている武道大会に剣の部で参加し、優勝はしたことないが必ずいつもベスト4まではいっていた。リンカーヌ王国でも有名なのだ。
そんな武漢を国としても手放したくないに決まっている。
しかも、まだしもサマヌーン国内にいるのなら何かあった時にすぐに呼び出せるが、私に付いてリンカーヌ王国に行くとなるとそんなことは出来ない。国に何かあった時に対処が出来ないから危機感を持っているのだ。
その事も有りネネとの結婚も一悶着をしている。
私はその間にやることやらないとね!
まずはキース隊長を側近の一人として連れて行くこと。
そして私を迎えにルイス王子がくると言っていたのを撤回して欲しい旨を書いた。
わざわざ皇太子がくる必要などないし!
あともうひとつは側妃達のこと。
私をちゃんと正妃として受け入れることを承諾させること。
何せ一番若い上に身分が低いから。バカにされること間違いないわ。
そして、ムシュムシュのシャルはかなり繊細なのと、ピューマのこともあるので私専用の別館を用意して欲しい旨を書いた。
ルイス王子からはすぐに返事はきた。
側妃達の件は大丈夫だということ。
·····本当かしら······
別館も王城内の一つの離宮を私にあてがうとのこと。
肝心のキース隊長のことは難色を示してきた。
やはり名の知れた武人なので、色々と問題があるらしい。リンカーヌ王国の高官が反対しているとのことだった。
ここで負ける訳にはいかないわ!
私は全ての条件が受け入れられないとリンカーヌ王国には行かないと書いた。
出家して修道院に行く。もし阻止や邪魔をするようならその場で自害の覚悟があると脅しの返事を書いた。
嘘ではない。私は本気!私は大切な二人の人生を変えてしまうのだから!これは私なりの覚悟!
ネネとキース隊長····もう隊長の役職名は付けてはダメね····キースには内緒。自分の心の中の決意だもの。
あっ!ルイス王子の手紙の最後に側妃を五人も娶り、裏切られたと思っている!ルイス王子が信じられない。信じて欲しいなら誠意を見せて欲しいと書いた。
かなり強気のお手紙を書いてしまったのだけれど、死ぬ覚悟までしたらどんな結果になろうと怖くなくなったみたい。
それからはルイス王子からの手紙の返事はしばらくこなかった。
そのうちに上層部もキースの決意があまりにも固いので引き留めるのは断念ようで退団が受理され、私の側近に任命された。
それに伴いネネとの結婚も承諾された。
ルイス王子からの手紙の返事は1ヶ月を要した。
その遅い手紙の返事がきたのは、私の誕生日が間近になってからだった。
何とか高官達を承諾させたとのことだった。
それから、離宮の方が私達の受け入れ準備がまだ出来てないので、リンカーヌ王国に行くのはもう2ヶ月先でいいと書いてあった。
ラッキーだわ!
私は思わず手を叩いて喜んだ。
今はネネとキースとの結婚が決まり、結婚式のことで悩んでいた。本来ならもう少しでリンカーヌ王国へ旅立たないといけなかったから結婚式はリンカーヌ王国でするか、ネネとキースがサマヌーン国で結婚式を上げてから後からリンカーヌ王国へ行くかと話し合っていたところだった。
良かった!サマヌーン国で結婚式が出きるわ!
リンカーヌ王国だと、両家のご両親や兄妹とか親戚を呼んで、来てもらわないといけなくなるから大変なことになる。
ネネ達に2ヶ月の猶予があることを告げると、ネネは急いで行動を始めた。バタバタとして式場の手配やらドレスの手配やらで、てんやわんやで動いていた。
あまりにも忙しそうなので、リンカーヌ王国に旅立つまでは休暇をあげようとしたが、ネネに
「そんなに休んだら、アリア様の部屋がどうなってるか心配ですわ!それにアリア様が何を仕出かすか······」
ネネ!仮に主人にその言葉を言うのはどうかと思うわ!
部屋は汚したことないわよ!·····多分。
ネネはとりあえず2日休んでは1日来ての繰り返しをしている。
大変そうだけど、ネネ幸せそう·····。
私も輿入れの準備をしながら勉強もしていた。
そして、最後の最後でリンカーヌ王国から来た先生から重要なことを教わった。
とてもためになること!
抜け道を見つけたのだ!
それは離縁という抜け道!これなら円満離縁が出来るはずだわ!
それはリンカーヌ王国の独特な決まり事。
私はそれを目指して頑張るわ!
側妃ならともかく正妃になると····ましてや皇太子妃、ゆくゆくは国王妃になるものなら、なかなか離縁なんて出来ない。
それなのに······ふふふ。
私に希望が湧いた。
離縁するまでは立派な皇太子妃を演じましょう!やってみせるわ!
私は新た決意を胸にやる気を出した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして今日がネネとキースとの結婚式。
二人は教会で将来を誓い合っている。
「汝は····」
ネネは純白のドレスを身に纏っている。頭の上に被せてあるベールは、私がシャルから貰った糸で手編みで一から編んで作ってプレゼントをした。
この一週間は空いている時間で作業をしても間に合わないので夜なべして一心不乱に編んだ。
おかげで寝不足だわ·····でも···
私は花嫁姿のネネを見つめてうっとりしている。
ネネ、とても綺麗。ドレスもベールもすごく似合ってるわ。
夜なべして編んだ介があったものね!
「では誓いのキスを。」
大教司祭の言葉でネネとキースは熱いキスをする。
短い時間でバタバタした結婚式になったけど、幸せそうなネネを····二人を見てほっこりとした気持ちになった。
·····私も離縁するまでは幸せな気持ちになれるかしら·····。
私はそんなことを思いながら、ネネの花嫁姿を自分と重ねた。
ネネの結婚式から二週間でリンカーヌ王国のお迎えのご一行がやってきた。勿論ルイス王子は来ていない。
少しホッした。
そして私達は、ムシュムシュのシャル、黒ヒョウのピューマも連れて、国王、お母様、お兄様達、そして国の重鎮たちやランクスに見守られながら(因みに御姉様達は勿論いない)、輿入れの為リンカーヌ王国へ旅立ったのだった。
後書き
区切りがいい所まで一気に投稿しました。
次回からリンカーヌ王国編になります。
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