皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~
1話 皇太子との出会い
ここはサマヌーン国。南の方の端にある小さな国。隣国はリンカーヌ王国は、この大陸の中では一番大きい大国になる。軍事力も世界最大で、貿易も盛んで繁栄している。
サマヌーン国は小さな国の為、国の周りをほぼ囲まれているリンカーヌ王国に、おんぶにだっこの状態で守られている。唯一自慢できることは、シルクなどの布地だ。この国しか取れない繭がある。それで作る布地は貴重で、高値の取引もされている。この国の唯一っていいほどの収入源になっていた。
そんな小さな国のお姫様と産まれたのが、私、アリア・サマヌーン、三才。巻き毛白銀髪で、瞳は深い青をしている。目鼻立ちははっきりしてて、将来は美人になると周りからは言われている。
····自分では分からないわ····。
動物は大好き!特に猫!抱っこも出来るし!私は猫の毛が大好き!城内に住み着いている猫を見つけてはもふもふしまくってます!
本日も城内にいた、茶トラ模様の猫を見つけて、追いかけて捕まえたの!
「いたた!」
嫌がる猫を無理やり抱っこしたら、手を爪で引っ掛かれちゃいました。それにも負けない私!
そしてもふる!
「ふかふか~!」
「アリア様!また野良猫を捕まえて!汚いですわ!」
侍女のネネが言ってくる。
「きゃー!アリア様!手から血がっっ!」
ネネが一人騒いでいる。
「ネネ!うるさいわよ!私は平気よ!」
私がネネを叱咤した。
「ですが、アリア様!」
また、何か言いそうになったので、注意しようとしたら、
「あっ!」
猫に逃げられてしまった。
がっかり~。せっかくもふってたのに·····。
「クスッ」
うん?何か鼻で笑うのが聞こえたわね。
聞こえた方を振り向くと、そこには身なりのいい、5、6歳くらいの見事な金髪の男の子が立っていた。
目が合うと、その子はニッコリしてきたので私もニッコリと笑顔で返した。
誰かに案内されている途中だったようで、すぐにその場から去っていった。
誰だろう?
私はネネなら知っているかと思い聞こうとして振り向いたら、ネネは男の子の方に向かってお辞儀していた。
「ねぇ、ネネ。あの子のこと知ってるの?」
するとネネは横に首を振り
「いいえ。存じ上げてございませんが、本日、リンカーヌ王国の王子様が我が国の視察に来られると聞いておりましたので、そうではないかと思います。」
え?私、聞いてないんだけど!
「そうなの?じゃあ、あの子はリンカーヌ王国の王子様なのかしら?」
「多分そうだと思います。」
そうなんだー!
あんなに小さいのに、一人で視察なんて凄ーい!
私は王子様が去っていた方を見て、感心していた。
あの子の正体は昼食の時に判明した。
やはり、あの子はリンカーヌ王国の王子様で、なんと皇太子様でした!
やだなあ。変なところ見られたわ。
今夜はリンカーヌ王国一行の歓迎パーティーをするらしい。
なので、ネネは私を着飾るので必死だ。
先日作ってもらった、淡いピンクのフリルいっぱいのドレス。どうやら今度はピンク一色で決めるらしい。それに合わせて買った靴もあるが、髪飾りで迷っている。
あーでもない、こーでもないと一人ぶつぶつと言っている。
ちょっと気持ち悪いよネネ····。
しばらくしてやっと決まったらしい。
「アリア様!本日はポニーテールにしましょう!」
ネネは器用に髪の毛のセットを始める。留めたゴムの部分を隠す為に少し濃いめのピンクの紐で結んでいく。どうやってやっているのか、ピンクのティアラ風にした。
最後の仕上げに、巻き毛をきれいに巻き直し出来上がり。
「アリア様!とても似合ってますわ!可愛いです!これなら他の姫様にも負けておりませんわ!」
そう、私の上に姉が二人、兄が二人の五人兄妹(まだ増える予定)。でも全て母親が違う。
国王であるお父様には正妃の他に側妃が五人いる。私は三番目の側妃の子になる。
別に負けるとか考えてないんだど····。
ネネは異様に御姉様たちに対抗心を燃やしている。
御姉様達は皆、私を蔑ろに扱っているからだ。
それは仕方ないのことだと思っている。私の母親が一番身分が低いからだ。元々、城で使用人として働いていたのを、国王であるお父様に見初められ、手をつけられたのだ。そして妊娠したので、側妃になった。
お母様は本当に綺麗な方で、側妃の中で群を抜くくらい。私はお母様の遺伝子をほぼ受け継いでおり、髪の毛の白銀色から瞳の色までそっくりなのだ。違うところは巻き毛。これはお父様譲りになる。
お母様は今も一番の寵愛を受けている。私もお母様にそっくりなので、お父様には凄く可愛いがって貰っているのだ。
それが気にくわない御姉様達は、私をのけ者にしたり、卑下したりする。
「お前は侍女の子なんだから、でしゃばるな!」
とか。二、三才の子に言う言葉ではないと思う。
今度のこともそう。リンカーヌ王国の皇太子様が来るのは私以外の兄妹は知っていたのだ。
お母様もたまに、他の側妃に嫌がらせを受けている。
こんな環境で育っているからか、三才児らしからぬ冷めた子になった。
御姉様たちに馬鹿にされないように常に虚勢を張っていた。
ネネは私に軽くピンクを口紅を塗ってくれて、いざ、舞踏会の会場へ!
御姉様がうるさいから、今回も大人しくしとこ。
御姉様達にとって、これはチャンスなのだ。
どうやら、今回の視察は、花嫁を探しも入っているらしい。
舞踏会の会場に行くと、既に兄妹たちは来ていた。
会場の王族専用のドアの前で名前を呼ばれるまで待機する。
年齢で言うと、バーバラ御姉様が有力かしら。
バーバラ御姉様は六才。カトリーヌ御姉様は八才だ。
リンカーヌ王国の皇太子様は少し離れたところで待機していた。
御姉様達は、目をハートにして見つめている。
ふと、皇太子様と目があった。向こうから、ニッコリと微笑んでくれたので、私も微笑み返した。
「私に微笑んでくれたわ!」
「私よ!」
御姉様達がつつき合いしている。
ありゃ!御姉様達に微笑んでいたのね!
凄く恥ずかしいわ!
私は恥ずかしくて、皇太子がいる場所の反対方向を見た。
ドアの向こうでラッパの音が聞こえた。
「サマヌーン国王様が入場されます!」
従者が次々と、名前を読み上げていく。
国王、正妃、皇太子である兄、そして側妃、兄、姉達、私と。
皆が拍手で迎えてくれる。
そして、次がリンカーヌ王国の者の紹介になった。
「続きまして、リンカーヌ王国の皇太子様でおられる、ルイス様のご入場です!」
ルイス皇太子様が笑顔で入場をしてきた。
あの子はルイスってお名前なのね。覚えてたわ!
私も一生懸命に拍手をして迎えた。
それからお父様が乾杯の音頭をとり、歓迎パーティーが始まった。
貴族達がこぞって、ルイス王子の元へ挨拶に向かっていった。
私はそれを横目に、バルコニーを向かっていたが、されどお姫様。呼び止められて挨拶をされた。
それは有力な公爵。私の苦手な人だった。脂ぎったオデコにでっぷりお腹が気になって仕方がない!
「アリア姫、大きくなられましたな。ますますお綺麗になってます。」
腹黒さ丸出しの挨拶を笑顔でかわしながら、うんざりするぐらい挨拶を受けていた。
やっと解放された頃に、ダンスホールから曲が流れ始めた。
最初は国王と正妃がダンスホールに入り踊った。
一曲が終わると、他のカップルも次々に入っていって踊りだした。
ふと見ると、ダンスホールの近くで、御姉様達が、ルイス様をダンスに誘っていた。
御姉様達は必死ね。ご苦労様。
私は多分降家になるだろうと思っている。
それは別に構わない。
お母様にも、言われているし。降家とはいえ、嫁ぎ先は公爵家になるだろうって言っていた。
私は別に公爵家じゃなくても、もっと自由に動ける商人のところに嫁ぎたいなって漠然とだけど思っている。
もう少し年齢がいったら、お母様に聞くつもり。
「アリア、良かったらダンスのお相手をしてくれないかい?」
振り向くと、下の兄のアベルトお兄様がいた。
ニッコリして、私に手を差しのべている。
アベルトお兄様は、私にもとても優しく接してくれるの!
もの腰も柔らかいし、国民にも人気ある!
上のお兄様は、少し気難しくて、ちょっと取っ付きにくいので少し苦手。
「アベルトお兄様、喜んで!」
私はアベルトお兄様に返事をして、差しのべていた手を取りダンスホールへ向かった。
向かっている途中にさっと目の前に出てきて、行くてを阻む者がいた。
それはルイス王子だった。
「これはルイス殿下。どうかなされましたか?」
アベルトお兄様がルイス殿下に聞いた。
「アベルト殿、そちらの方は?先ほどの紹介には居なかった様だが。」
どうやら、私が離れた隙に、紹介があったらしい。
「そうですね。この子は末の妹のアリアです。」
アベルトお兄様が紹介してくれたので
「ルイス殿下、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。アリアと申します。」
私はドレスの端をつまみ上げ、ペコッとお辞儀をして挨拶をした。
「アリア姫か····とても可愛いね♪」
「はあ····」
何か軽いんですけど。
「ありがとうございます····」
とりあえずお礼を言っておく。
「私と、踊ってくれませんか?」
ルイス王子は手を差しのべて誘ってきた。
「ルイス殿下、私はアベルトお兄様と踊る····」
「分かりました。アリア、ルイス殿下が誘ってくださってるんだ。お相手を!」
アベルトお兄様は私の言葉を遮り、勝手にルイス王子の誘いを受けた。
私はアベルトお兄様を見つめた。アベルトお兄様は「行け!」
という目で頷いた。
私はルイス王子を見て、差しのべている手にそっと自分の手を置いた。
ルイス王子は私の手をぎゅっと握りしめ
「さあ、行こう」
私の手を引いてダンスホールに向かった。
向かっいる時に、御姉様方の顔が見えた。顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいる。
あれはかなり怒っている感じだ。
このパーティーが終わった後のことを考えると憂鬱に気分になり、心の中でため息を着いた。
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