全てを失った少年は失ったものを再び一から手に入れる

きい

10話 7つ目の都市

 

『let’s strike on』フォーン


「<泡沫の舞ディスティレイション>」

「<竜巻ハリケーン>」

 まずは手始めに、千鹿と拓相が思考詠唱で一瞬の攻防を見せた、拓相が無数の水泡で千鹿と撫子を囲み、千鹿がそれらを吹き飛ばした

「じゃあ今度は…いくぞ飛鳥!」

「わかりました!」

「<泡沫の舞ディスティレイション>」

「無属性複製系魔法<物質生成マルチコピー>」

「「合技、<迫りくる尽きない壁インフィニットバブル>」」

「こんなのさっきと同じじゃない!<竜巻ハリケーン>…うそ、どんだけあんのよ」

「そんなときは私に任せて、すめらぎ流固有魔法コマンドより、<凝固ソリッド>…千鹿!」

「オッケー、<風の真剣カマイタチ>…からの、<風の道しるべシュツラムブラスト>」

「ちっ、返ってきやがったか、飛鳥、壁だ!」

「はい、火属性放出系魔法<業火の防護障壁ファイアプロテクト>」ジュー

「(鳳流固有魔法ドライより、<蒸発バポライズ>)消えろ!」 

つぎに、それぞれのペアが連携を見せた、拓相と飛鳥は合わせ技でまた千鹿と撫子を囲み、千鹿が、その無限に増え続ける水泡を抑制し、撫子が、残りの水泡を固体にした、そしてその氷を千鹿が砕き、さらにその氷片を拓相と飛鳥の方に飛ばした、拓相と飛鳥は、まずは飛鳥がその飛んできた氷片を火の壁で防ぎつつ氷を溶かし、つぎに拓相が溶かした水を

「やるじゃん!」バチバチ

「やるなぁ!」バチバチ

「「今度こそ決める!」」

「いくぞ、飛鳥!」

「いくよ、撫子!」

「地属性放出系魔法<飛礫散弾ランブルバレット>」

「無属性複製系魔法<物質生成マルチコピー>、信楽しがらき流固有魔法強化フォースより、<能力強化エネルギーエンハンス>」

「「合技、<飛礫流星群ランブルメテオ>」」

「皇流固有魔法纏より、<歩兵の進軍ダンプソルジャーズ>敵は目の前の二人よ」

「風属性変化系魔法<気流操作エアコントロール>、(風早流固有魔法無抗オベイより、)<風に乗る身体ウィンドスピード>」

「「合技、魔法拳術<止まない拳の嵐ストームブロウ>」」

「「はああああー」」バチバチ

「水属性放出系魔法<大津波ディルージュ>」

「(神代かみしろ流固有魔法電撃ボルトより、)<雷の舞いかずちのまい>」

「ちょっ、(凪塚なぎつか流固有魔法浄化パージより、)<絶縁水クリーン>」

 最後に、双方合わせ技の大技を繰り出し、とうとう決着がつくかと思ったその時、横から大量の水が流れて来て、そこに一瞬電流が走ったことで四人とも戦闘不能となった「ちょっと、かける先生、生徒が死んだらどうするんですか!」

「あはは考えてなかったわ、すまんすまん…でもまあ結果オーライってことで、ね!…そんな事より、あいつらどうする?海凪ミナ

学校ここでは、先生なんですからその呼び方はやめてください!」

「いいだろ別に、なんだから…で、どうする?」

「もうっ!そうですね…電気はそんなに流れてないと思うから、授業が始まるまでには起きるとは思いますが、念のため治癒魔法で回復させましょう、琉先生が、こんなにしたのは琉先生ですし」

「ったく、わぁーったよ!」カキカキ


 ・


 ・


 ・


 四人に怪我はなく魔力消費量が少し多かっただけなので、回復に時間はかからなかった、そのため四人の治療が終わったあと、1-Aの担任である神代 琉かみしろかけると1-Bの担任である凪塚 海凪なぎつかみなぎは、四人が目を覚ますまで何か話していた

「っつ、いってぇ」

「 」

「「いったー」」

「おっ、やっと起きたか、もう授業始まるぞ!最初はクラスごと分かれてやるから鳳と信楽は琉先生のところに行け、千鹿と撫子はこっちに来い」

「今日の演習は自分に合う武器を見つけ、その武器で実践演習をしてもらう!だからまずはいろんな武器を試してもらいたいんだが、その前に遠距離武器と近距離武器それぞれを使った戦い方を見せてやる、千鹿ちょっと来い!いや、この場合は鏡写しの剣士ミラージシュバリエと言った方が正しいかな」

「はい!」

(罰ってそういうことか…先生が回復はしてくれたみたいだけど、ツーツーなんてやるんじゃなかったかな)ハァ

「早く来い!」

「は、はい!」テクテク

「私は弓を使う、まずは遠距離武器に対しての近距離武器の戦い方、もしくは近距離武器に対する遠距離武器の戦い方を見せてやるから、1-Aの方で見ておけ!」ポチッ

『ウィーン』

 体育館が結界で二つに分断され、片方に突如森林が現れた、これは月島学園に限らず、魔法闘士ストライカー育成機関7校全てに設備されている仕掛けである


『let's strike on』フォーン


「(水属性幻覚系魔法)<夢幻の世界ファントムビジョン>」

「こんな霧ぐらい…(風属性変化系魔法<竜巻>」

「ふん!…ってあれ、ど、どこ行ったの?!」キョロキョロ

 海凪が引き起こした蜃気楼を千鹿が吹き飛ばしたところ、そこには海凪の姿はなかった

「終わりよ、ミラージシュバリエ!水属性幻覚系魔法<虚像の矢ミラージュアロー>」

 千鹿に向けて大量の矢が降りかかった


『ピー』


「まあ、遠距離武器と近距離武器じゃほとんどの場合で遠距離武器の方が有利だから、千鹿が負けるのは当たり前なんだけどね…」ポチッ

『ウィーン』

 そう、遠距離武器と近距離武器では圧倒的に遠距離武器の方が有利なのである、だからと言って千鹿に勝機がなかったわけじゃない、まず、遠距離武器を得意とする者は必ず、最初に何らかの形で身を隠そうとする、それだけ遠距離武器というのは身を隠さなければ、使うのが難しい武器なのである、だからそれをさせなければ近距離武器の優勢になる…とは言っても簡単にできることじゃない、それは相手もそれはわかった上で何らかの術を使ってくるからである

 では身を隠されたら終わりかというとそういうわけでもない、何個か方法はあるが基本的なのは感知である、それにもいくつか方法はあるが、最も主流なのは、“五感補助”のうちの“聴覚補助”を使った耳からの情報収集方法である、習得難易度もそれほど高くなく、見習いの魔法闘士ストライカーにもできるからであるが、相手も感知スキルに対してそれなりに対策してくるので、対策のされやすい聴覚補助は他の感知スキルと比べたら正確性に劣る、そのためちょっとの差が命取りになる戦場ではあまり使われない、そのような場では対策されないように、いくつかの術を組み合わせて感知スキルをつくることが多い、勇が総紀に使ったのがいい例である、じゃあ感知できない場合はどうするのか、その場合は人によっていろいろな方法をとるが、一番手っ取り早いのは広域魔法である、それで自分の周囲一帯に対して攻撃すれば、相手に当たるかもしれないし何より、相手の隠れる場所をなくすことができる

「これがそれぞれの武器に対する戦い方だ!それじゃあ今言ったことを踏まえて自分にあった武器を見つけてみろ、そこに大抵のものはあるから…はぁ千鹿、お前は他の武器を見る必要はないだろ?私は近距離武器があまり得意じゃなくてな、あいつらが探してる間ちょっと付き合ってくれないか?」

「私でよければ別に構いませんが、普段相手してくれる人はいないんですか?」

「それなんだけども近距離戦闘は全然ダメでね…ってなに言わせてんのよ」

 そう言った海凪の顔はみるみるうちに、ゆでだこのように真っ赤になった

「あはは、先生顔真っ赤!」

「わ、笑うな!」


 ・


 ・


 ・


「えー、本来はAクラスとBクラス別で教えることになってたんだけど、ミナが全部言ってくれたから俺が言うことはもう特にないんだよな、お前らも聞いてただろ?聞いてませんでしたなんて言うなよ、説明すんのめんどくせーから…ってなわけでお前らも武器探してみー、ふぁーあ」

「「おい!」」

「それで武器どーするよ」

「ねぇ、武器どうする?」

「俺はやっぱ弓かなー、さっきのナギ先生かっこよかったし!」

「お前なんだよその理由!」

「うちはまだ決まってないけど、身を隠す術持ってないし遠距離武器は無理かなぁ」

「わたしもそうかなぁ、けどさぁ近距離武器だけでもいっぱいあって決まんないねぇ」

「そうだよねぇ」

 自分の使える魔法や得意魔法、さらに好みの戦い方を考慮に入れ、各々自分にあった武器を探した

「よーし、それじゃあAもBも集まれー…合同実践演習をやるまえに遠距離武器同士の戦い方を見てもらう!近距離武器同士は大体想像つくと思うし、まず俺得意じゃねーし」 

 遠距離武器の場合は近距離武器とは違って手数はそんなに多くなく正直言って地味であるが、だからと言ってもちろん簡単なわけではない、どちらかと言うと近距離武器同士の戦いよりも駆け引きが多いため、遠距離武器同士の戦いの方が精神力を必要とする

「ミナー、そろそろ始めるぞー」ポチッ

「うんわかった…サンキュー千鹿」


『let’s strike on』フォーン


「「<夢幻の世界>」」

「「…解除!」」

 蜃気楼を発生させた、自分の発生させたのと相手のを合わせることで、相手が発生させた蜃気楼も一緒に解除したが、二人とも考えることが同じだったため、霧が晴れたときにはもう二人の姿はなくなっていた

((“聴覚補助”+“嗅覚補助”))

 これが、遠距離武器同士の戦いが“精神力の勝負”と呼ばれる所以である、お互いに身を隠したらすぐに魔法の発動を一切断つために、“受動魔法”で大まかな位置も特定できないのでただひたすら探すしかないのだ、そんな地味な戦いを琉と海凪が繰り広げていたその時、校門の方で大きな爆発音がした

「「きゃー」」グラグラ

「「な、なに今の!」」

 戦いに神経を研ぎ澄ましていた琉と海凪もその異変に気付き、戦いをやめて体育館の仕掛けを解除したが、解除の際の比較的大きな機械音すら響かないほどその空間にはさらに大きな悲鳴や叫び声が響いていた、そんな声を遮ったのは二度目の爆発音だった

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品