全てを失った少年は失ったものを再び一から手に入れる

きい

6話 それぞれの成長


 ー三月某日、とある墓場ー


「親父、今まですまねえ、親父の死に様尊敬するぜ!俺が逝く行くまで、そっちでは母さんを頼んだぞ、それから母さん、俺って強くなったのかな?いや、こんなこと聞いてる時点で、だな…また同じことしちゃったらごめん…」

「その時は俺を殺してくれよな、じゃあまた来る」ニコッ クルッ


 ー数十分後、壱華家ー


総紀そうきおじさん、こんにちはお邪魔します、早速ですが、今朝電話した件ですが、お願いしてもよろしいですか?」

「その件は、君がいいなら私は構わないけど、一ついいかな?毎回言ってるけど毎日来なくても、たまに顔を出してくれれば夏恋だって十分うれしいと思うよ、だからそんなに夏恋に縛られないでくれ」

「いえ、ただので来てるわけじゃありませんから、それに先生と修行するのが、一番いいですからね」

「はぁ…じゃあ始めるがその前に、この修行方法は出来てせいぜい月一って言ってあったと思うんだけど…今月はもうやったはずなのになんでまたやろうと思ったんだい?」

「実は…夏恋みたいな人がいて、しかも二人も…俺はまたその人たちに同じ目を合わせてしまいそうなんです、正直どうしたらいいか…突き放そうとしたのにその返答も一緒で、もう俺が強くなるしかないと思ったんです、あの二人がどれだけ強くなろうと敵はますから…」

「君はまた…そうやって一人で背負い込むのかい?確かに僕には、君の修業を手伝うぐらいしかできないけど…もっと他人ひとを頼ってもいいんじゃないかい?」

「頼るもなにも先生は無理やり押し通して来たくせに」ボソッ

「ん?じゃあ、気を取り直して始めようか、<魔力消失マジックバニッシュ>」

『まずは体術から、もちろん魔法を使わせてもらうよ』

「はい、お願いします」


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「はぁ…はぁ…」

「はぁ…はぁ…」

「やっぱり君は体術も剣術もバケモノ級だね、ハンデがあるのにこのザマだよ」

『で、今日はどのくらい上がった?』

「1日ぶっ通しで耳と心臓の両方に魔法を使える程度には増えましたね…でもまだ全然足りません、先生の体力が持つならもっとやりたいんですが大丈夫ですか?」

「もちろん大丈夫だよ」

 そう言って総紀が立ち上がるのを見て、幻舞も立ち上がると、二人は再び向かい合った

『じゃあ次は、魔法を使ってやろうか、君は今増えた魔力だけね』

「はい」


 ー風早家ー


「おじさん、私もっと強くならないといけないの、だから修行つけてくれない?」

「お前は十分強いだろ、現にミラージシュバリエなんて言われてるんだから」

「そんなの…去年の剣術大会の決勝覚えてる?」

「ああ、あの相手の選手はすごかったからな」

「その人が同じ学校に通うことになったの、それでその人、剣術大会の時よりも全然強かったの、とても同い年の人とは思えないほどに…だから!」

「へえそんなに、ぜひ俺も戦ってみたいな…千鹿、そいつの強さは俺と比べてどのくらいだ?」

「たぶん、おじさんよりも強いと思うよ、まだ本気を出してなさそうだったから詳しくはわからないけど、それでもおじさんより強い気がする」

「まじか!それじゃあお互い修行が必要そうだな…やるか」

 そして、千鹿と風早家現当主迅一じんいちの特訓が始まった


 ー鳳家ー


「お父さん、私に修行をつけてください!私、幻舞君に認められたいの…あの子は、もっと人を頼るべきだわ、だから頼られるぐらい強くなりたいの」

「楓は彼のことが好きなのか?」

「え!?や、やだ、そんなこと…」オロオロ

「はっはっはっ、わが子ながらわかりやすすぎるな」

「まあいい、楓、彼が軍に入隊することが決定したのは知ってるな?」

 勇の真面目な表情かおを合図に本題に移った

「はい、確か軍の精鋭がだれも手も足もでなかったとかで、それがどうかしたんですか?」

「その通りだ、彼の強さは本物だよ、だから楓も彼と特訓したほうが効率がいいと思う、だけど今のお前がやったところでまったく意味がないだろう、まずやってくれるかさえ分からない、そこでだ、俺が軍に入れるぐらいまでにはお前を鍛えてやる、軍に入れば軍の訓練ということで強制的にできるからな、だから当面の目標は軍への入隊だ、わかったか?」

「もともとそのつもりだけど…」

「えっ!?わかった、幻舞か」

「い、いや、ただ私ももう三年だし」

「まあ、とにかく軍への入隊を目標にやるぞ」

「うん、わかった」

 そしてこっちも特訓が始まった


 ー魔法闘士育成第一機関月島学園、入学式ー


「散りゆく桜に出迎えられながら、今日僕たちは、ここ月島学園に無事入学することができました


 ・


 ・


 ・


「……これにて入学式を閉式いたします」

「んー、終わったー、校長先生の話長いわー」ガヤガヤ


 ー月島学園、体育館ー


「お待たせ、千鹿ちゃん」

「よー、久しぶり」

「お久しぶりです会長、なんでこいつまで、それにそっちの人は確か新入生代表の」

「こいつは鳳 拓相たくみ、会長の従弟だ、俺とやりたいんだと」

「初めまして風早 千鹿さん、鳳 拓相です、よろしくお願いします」

「よろしく、そんなに改まんなくて結構」

「わかった」

「じゃあさっそく始めようぜ、まずは会長と千鹿からでいいですよね?会長」

「いいけど、幻舞君…千鹿って」「ああ、春休みに何度か会ってその時に」

「楓…」

「ん?」

「私も楓って呼んで」

「うーん、楓さんっていうのも少し違うと思いますし、なにより会長は年上なのでちゃんと敬いますよ」

「どの口がそれを言うんだか」

「闘うときは年なんて関係ねえから!」

「はいはい」

「別にそういうことじゃないんだけどな」ムー

「じゃあ準備してください」


 ・


 ・


 ・


「一応結界を張っときましたので、全力でやっても大丈夫ですよ」

 幻舞は、この体育館で結界が必要なほど、二人が成長してるのか見極めてるようだった


『let's strike on』フォーン


(地属性拘束系魔法)
「<大地の牢獄テーレプリズン>」

(風属性付与系魔法)
「<無限の切れ味ヴィルヴェルヴィント>、はーーーー」キン キン キン キン

 千鹿の周りが岩の壁によって包囲されたと思ったら、その壁は剣によって切り刻まれた、しかも、まったく刃こぼれすることなく…そんな一瞬の出来事だが、幻舞は二人の成長に驚きを隠せないでいた、なぜなら、普通は早くても半年はかかるほど難しいとされる魔法系統までの思考詠唱を、二人はたったの1ヶ月で習得してしまったのだ、しかも、魔法の威力もとても高校生のレベルではなかった


『ピー』


「二人とも、ちょっといいですか?」

「「なに?」」

「正直言ってまだまだです、今のままでは僕のそばにはおいておけません、そして、僕の求める域に達することは多分無理ですのであきらめてください」

「「そんなことない!」」

「では、ちょうどいい機会なのでお見せしましょうか…僕の本気を」

「拓相、今度は俺たちの番だ、準備はできてるな?」

「おう、いつでもいいぜ」

「じゃあ始めようか」

(<魔法破棄パワーブロック>解除)


『let's strike on』フォーン


「合技、<見えない斬撃マッハシュナイデン>」シュン

「 」グハッ


『ピー』


 外から観戦してた二人にも目でとらえることができなかった、つまり幻術ではなく現実で起こったのだ、見えないほど速いスピードで移動するということが…これが、幻舞が姿なき英雄インビジブルヒーローと言われる所以である

魔法破棄パワーブロック発動)

「これでわかりましたか?もうあきらめてください」ハァハァ

「じゃあそんぐらい強くなればいんでしょ?」

「うん、それにそんぐらいやってくれなきゃ追いかけ甲斐がないでしょ」

 二人の返事は一息つく暇なく返ってきた、そしてその言葉に、幻舞は聞き覚えがあった

「ていうか幻舞君息切れと汗がすごいけど大丈夫?」

「まあこれくらいなら大丈夫ですよ、少し休めば治ります」

「ならいいんだけど…」

(戦場でも使ってたのよねしかも今より10歳も幼い時に、それがこんなちょっと使っただけでこんなに疲れるなんていったいどうしたんだろう)

「それより会長、明日から打倒月島目指して頑張りましょう!」

「ふふっ、随分と高い目標だね」

「目標なんだからどれだけ不可能なことでもいいんですよ、まあ会長と私なら不可能なんかじゃないですけど!」

「はぁ…じゃあ二人とも、まずは軍の入隊試験に合格してください、そしたらいいですよ」

「っぐ、何だったんだ今のは」

「よー、起きたか拓相」

「幻舞、今のはいったいなんだ?」

「他人の魔法情報を聞き出すのは野暮じゃないか?」

「すまん」

「そうよ、いくらなんでも教えてくれるわけ…」

「まあ別に教えてもいいけど」

「って、え!?いいの?」

「別に構いませんよ…」

「というか、もしもの時のために知っといたほうがいいだろうし」ボソッ

「「「ん?」」」

「いや、何でも、それよりこの魔法だけど、正直言ってただ速くなってるだけなんだ」

「「「そんなはずない!」」」

 三人が驚くのも無理はない、加速魔法でどれだけ加速させても見えなくなるほど速くなるなんてことは絶対にありえないのだ、しかし、幻舞の説明は別に間違っているというわけではない、幻舞はまず、自分に加速魔法を最大でかけ移動し、その移動してる自分を周りの気柱ごと移動ミグレイションによって移動させ、さらにその気柱にも加速魔法を最大でかけているのだ、それだけでももう目でとらえることは不可能だが、それらを剣にもやっているのだ、もし姿を目でとらえることができたとしても、剣までは不可能である

「そんなに何個も魔法を合わせることは可能なのか?」

「二つを合わせて使うのも、魔法を使う上での技術の一つだ、なら三つ、四つできても不思議じゃない」

「でも幻舞君は6個?をあの一瞬でどうやって発動したの?そんなに速く詠唱することなんてできるの?」

「それもまた別の技ですよ、会長はさっき思考詠唱をしましたよね?」

「えぇ」

「それの応用技を使ったんですよ」

「そんなの聞いたことないよ」

「魔法を使う上での技術には何個かあるんですが、その中でも最も習得が難しいと言われているそれの名は、‟省略詠唱”といいます、僕は一つの魔法なら完全に詠唱を省けるんですが、合わせる場合は最後だけできないんですよ、だからさっき最後だけ言ってたのもそういうわけです」

「「「そんな技があったなんて」」」

「俺なんてまだ思考詠唱すらできねーのに」

「でも、このことを知ったからって省略詠唱を習得しようとするのはだめですよ、二人とも、思考詠唱すら完全にできないんだから時間の無駄です」

「「そんなのやってみなきゃわかんないじゃん!」」

「僕でも1ヵ月もかかったので、二人には今のとこは無理ですよ、そんなことより軍の入隊試験に集中してください」

「なあ、俺も軍の入隊試験に挑戦してもいいか?そうじゃなきゃお前の近くにいちゃダメなんだろ?」

「聞いてたのか、それに別に軍に受かったらいいなんて言ってないんだが」

「「「じゃあ決定!絶対に受かるから!」」」

「はぁ」

 またしても幻舞は押し切られてしまった

「しかも人数増えてるし…」

 今幻舞は何を思うのか、そして三人は軍に受かることができるのか

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