ゼンコウ

招待状 1

千代田線表参道駅に到着して、A2出口に向かって歩き出す。

時刻は10:05。平日という事もありこの時間帯になると少し人の移動もまばらになり、急ぎ足で僕の横を通り過ぎて行く人。体程の黒くてデカイ袋を脇に抱えて、デカイ声を発しながら電話をする女性。

改札を出ると目の前にはスープストックがある。
ここを通る度に、ニンニクの匂いが鼻に付く。まだ朝起きて何も口に入れてないので、腹が鳴るがそのまま道なりに進み階段を一気に駆け上がる。

A2出口を上がると、右手にはガラス張りのApple Storeがお出迎えしてくる。

今日はここには用はなく、A2出口を出て直進をする。

時刻は10:10

僕はある場所を目指して表参道を歩き続ける。

日差しは強く、既に額から汗が吹き出している。

6月の梅雨入りをして間もなく。雨は降らず夏日和が続いている。

6月13日
家に帰宅してポストに投函されていた一通の封書。

差出人は不明。
住所、宛名は一致している。

家に入り、電気をつける。
封書を透かして見る。
厚みは無く、ペーパーナイフで封を切る。

一枚の白い紙が入っている。

そこにはある住所のみ記載されていた。


東京都渋谷区神宮前××××××
直ぐにググって見た。

あの好きなブランドショップの近くだな、、、


なんだ?

全く、疑問すら感じる事なくただ思ったのは行ってみるかという安易な考えであった。

今日は土曜ということもあり、仕事も休みで予定もない。

気晴らしに行ってみるかなという興味本位である。
何も無ければ、それはそれでいい。

本来なら、誰かに相談でもするべきだったのだろう。

しかし、誰に話したところで何も回答は得られないだろうという勝手な判断で今日までそのままにしておいた。

表参道ヒルズ前まで来て、喫煙所がある。

上下黒のセットアップに綺麗に刈り上げられた頭。黒縁の眼鏡をして電子タバコを吸っている30代くらいの男性が1人、喫煙所でタバコを吸っていた。

行く前に一服という気持ちでウェストバックからタバコを取り出して火を付けた。

深く一気に吸い込む。
煙を一気に吐き出した。

表参道ヒルズの前をペアルックでカップルが楽しそうに話しながら歩いてるのが目に止まった。
楽しげで見ていて微笑ましい。

僕には彼女がいた。
婚約までしていたその彼女は去って行った。


また、タバコを吸う。


彼女はどうしているだろうと、ふと思い出した。

タバコを吸い終わると、既に上下黒のセットアップの男は何処にもいない。

また、僕は目的地に向けて歩き出した。

そこに待ち受けている。
事がなんなのかまだ分からずに、、、、







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