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聖女な妹を狙うやつは、魔王だろうと殴ります。

ibis

魔王城の作戦会議―2話

「……エルビス……その姿は?」
「あ……ああいや……ちょっと……」

 毎日行われる定例会議……エルビスが、ボロボロの姿で現れた。

 エルビス―――『強欲』を司る『魔族』の男。
 彼の『能力』は……戦いには役に立たない。
 故に―――自力で『七つの大罪』に入った、努力家だ。

「ふん……ザコが先走るからだ……大人しく我に任せておけば良いものを……」
「なんだと……!」
「なんだ―――ヤるのか?」
「―――ッ!……チッ……!」

 オーガの威圧的な視線を受け、エルビスが黙り込む。

 オーガ―――『傲慢』を司る『鬼族』の男。
 彼の暮らしていた『鬼国』は、何者かによって滅ぼされた。
 その復讐を果たすべく、『七つの大罪』に入り、国を滅ぼした者を探している。
 突然変異で腕が4本生えており……『鬼族』の腕力と合わさって、腕力はアルヴァーナに引けを取らない。

「……ねぇまおーさま?」
「なんだ?」
「私……『暴食』と『強欲』って似てると思うんだよ」
「……そうか?」

 ユラリと、ジャンヌが気怠けだるげに立ち上がる。

 ジャンヌ―――『暴食』を司る『魔族』の女。
 『七つの大罪』の中で、一番働かない。
 自分が動きたくないために『私はまおーさまを守るから、みんなで敵を倒してきて』と言うが……事実、力なら怒れる狂戦士バーサーカー状態のアルヴァーナと同等なのだ。

「だから……ね?」
「な―――ぐぶっ?!」

 ジャンヌの細い腕が……エルビスの腹部を貫いていた。

「な、にを……?!」
「さっきも言った……『暴食』と『強欲』は似てるって、ね?」

 腕を引き抜き―――エルビスの腹から、赤い液体が吹き出る。

「似てる大罪は2つもいらない……だから、死んで?」
「そん、な、理由で……!」
「うん。そんな理由で……他に、理由が欲しいの?相変わらず欲深いね?」

 椅子に腰掛け、不思議そうにエルビスを眺める。

「ジャンヌ……何をしている?」
「まおーさま……ダメ、だった?」
「大罪が似ているなど……そんな理由で、仲間を殺していいと思っているのか?」
「うーん……じゃあ、本当の事を言うね?」

 顔と顔が当たりそうになる距離……そこで、エルビスに小さく囁いた。

「―――力、不足」
「なん、だと……?!」
「あなたが『七つの大罪』にいても……邪魔なだけ」

 決定的な理由……それを突き付けられたエルビスが『バシャリ』と血溜まりに倒れた。
 光を失った瞳……死んでいるのは明らかだ。

「……ジャンヌ」
「エルビスの大罪は私が背負うから……だから許して?まおーさま?」
「はぁ……『暴食』で『強欲』とは……お前の気紛れにも困ったものだ」
「気紛れ?違うよ?エルビスが力不足なのは、まおーさまもわかってたでしょ?」
「それは……そうだが―――」
「遅れてすみません魔王様!ガルドルを連れて来ま―――?!」

 扉を開け放ち、中に入ってきた女性が……室内の光景を見て固まった。

 コキュートス―――『嫉妬』を司る、『魔族』の女。
 真面目な性格と、その行動力から『七つの大罪』のリーダーとして扱われる。

「なっ……エルビス……?!」
「コキュートスちゃん?どうしたの―――うわ、こりゃまた派手にったね……オーガがしたの?」
「我ではない……そこの女だ」
「あー、ジャンヌちゃんか……まぁ、女の子のしたことだし、広い心で受け入れるしかないね」

 ヘラヘラとした態度を崩さず、血溜まりを踏んで席に座る。

 ガルドル―――『色欲』を司る『魔族』の男。
 男とは思えない美貌と、軽い性格が特徴的で、情報収集を得意とする。

「……ジャンヌ、あなたがしたの?」
「そうだよ?」
「そうだよって……あなたは自分で何をしたかわかってるの?!」
「うん……足手まといを捨てただけ」

 残した残飯を捨てるように、仲間を殺したと告げた。

「―――大方おおかた、アルヴァーナ君に負けてノコノコ帰ってきたんだろうね」
「ラプター……遅かったな。どこに行っていたのだ?」
「『竜人族』が攻めて来ていたので……焼き払って来ました」
「そうか……ご苦労だったな」
「もったいないお言葉です」

 幼い少年……その見た目からは想像もつかない、物騒な言葉を口にする。

 ラプター―――『怠惰』を司る『魔族』の少年。
 アルヴァーナの事を友人としたう、『七つの大罪』の中では常識人。

「全員揃ったな……それでは、会議を始めよう……アルヴァーナの件を、な」

 低い魔王の言葉……全員の表情が引き締まる。

「魔王様、アルヴァーナの行動は、正直目に余ると思うんだけど?」
「ふん……ならば、貴様があいつを殺すか?」
「やめてよオーガ。アルヴァーナと真っ向で戦うなら、オイラに勝ち目はないんだからさ」

 飄々ひょうひょうとした態度を崩さないが……その言葉には、確かな感情が宿っている。

「って言うか……なんでアルヴァーナは『魔国』を抜け出したんだろうね?」
「……言われてみれば確かに……魔王様、何か知っていますか?」
「うむ……知らないわけではないが……」

 珍しく言葉を濁し、顔を背ける。

「どんな小さな事でも構いません。何か知っているのであれば……!」
「……あいつの妹を寄越せと言った」

 魔王の言葉を聞いた瞬間―――場の空気が凍りついた。

「ま……魔王、様……アルヴァーナの妹……シャルロットちゃんに声を掛けたのですか……?」
「……うむ」
「そんな……!」
「嘘でしょ魔王様?!アルヴァーナが妹大好き人間だって知ってるよね?!」
「まおーさま……おバカ……」
「アルヴァーナ君は妹命だからね……」
「あいつは妹がかかわると……我でも寒気を覚えるレベルの力を発揮するからな」

 ざわめく『七つの大罪』……無理もない。
 過去に一度だけ……国外そとでの戦闘があった際、たまたま偶然シャルロットが現れ―――怪我をした。
 その時、アルヴァーナが怒り―――辺りの者を見境なく攻撃して回ったのだ。
 ジャンヌが止めてくれたから良かったが……ジャンヌがいなければ、魔王が止めるしかなかっただろう。

「もうその話はいいだろう……アルヴァーナの件だ」
「……オイラが行こうか?魔王様?」
「ガルドル……お前の『能力』では、相性が悪いだろう」
「大丈夫大丈夫……いい作戦を思い付いたから」

 机に足を乗せ、ガルドルが得意気に続ける。

「オイラの『能力』で、アルヴァーナの妹を操って……脅迫してみるよ」
「……お前の『能力』だったらできなくはないが……」
「任せておいてよ魔王様。アルヴァーナを討ち取ってみせるからさ」

 美しい顔を歪め、ガルドルが妖艶に笑った。

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