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聖女な妹を狙うやつは、魔王だろうと殴ります。

ibis

魔王城の作戦会議―1話

「……どういう事ですか、魔王様」
「説明した通りだ……アルヴァーナが『魔国』を抜け出した」

 円卓を囲む6人の男女……1つ、空席があるのが目立つ。

「嘘……アルヴァーナが、そんな……」
「まあまあ、落ち着きなよコキュートスちゃん。『七つの大罪』が解散するってわけじゃないんだしさ」

 女性の隣に座る男性……見る者すべてを魅了する、男性らしからぬ美しい見た目だ。

「そういう話じゃないでしょ『ガルドル』!あの子は私が連れて来たのよ?この件の責任は―――」
「お前にある……とでも言いたいのか?」

 妖艶に笑う男性と、白い肌を真っ赤にして怒る女性……その話の間に、額から角の生えた強面の男が割り込む。
 角の生えた男は、を組み、傲慢に笑った。

「だとしたら気にする必要はない……あんな子ども、我に任せておけば瞬殺だ」
「あのね『オーガ』、なんでも殺せば良いって話じゃないのよ?」
「ふん……だとすれば、どうするのだ?貴様が腹を切って詫びるか?」
「そこまでにしなよオーガさん……いい大人がみっともないよ」

 剣呑な雰囲気……それに口を挟んだのは、幼い男の子だ。

「貴様……今誰に向かって口を利いたのだ?」
「君に言ったんだよ……アルヴァーナ君は僕の友達だ。彼を連れてきてくれたコキュートスさんに、僕は感謝している」
「だからなんだ。われが聞いているのは、誰に向かって口を利いているのか、だ」
「君しかいないでしょ?わからないの?」

 幼い男の子と強面の男が睨み合う……それだけで、辺りの空気がビリビリと震動し始める。

「……我と、ると?」
「上等だね」
「2人とも、そこまでに―――」

 『ズンッ!』と、何かを打ち付けるような鈍い音が室内に響く。
 何事か、と全員の視線が1人の女に注がれた。

「……お腹、空いた」

 女の放つ、異常な覇気……その目は、少年と男をしっかり捉えていた。

「……ふん。命拾いしたな」
「こっちの台詞セリフだね」

 お互いに捨て台詞を吐き、鬼気を収める。

「……ありがと『ジャンヌ』」
「ん……」

 短く返事し、女が机にうつせる。

「相変わらず、お前たちは自由だな」
「申し訳ありません魔王様。お見苦しい姿を……」
「いや、良い。むしろ、この騒がしさは心地よい」

 円卓から少し離れた所にある豪華な椅子……魔王はそこに座っていた。

「……魔王様。アルヴァーナを連れてきたのは私です。この件の責任は―――」
「オーガの真似をするわけではないが……責任はお前にあるわけではない……むしろ……」

 そこで一度言葉を区切り、魔王が1人の男を見る。

「……むしろ、アルヴァーナが『魔国』を抜け出す時に、それを手伝った裏切り者がこの中にいないか……そっちの方が重要だと思うがな」
「……………!」
「そんなの……魔王様は、我々を疑われるのですか?」
「そんなわけ無いだろう?……ただ可能性を口にしただけだ」

 楽し気に笑う魔王……口こそ笑っているが、その目は笑っていなかった。

「……ガルドル。あなたの『能力』で、調査とかできない?」
「うーん……あんまり子猫ちゃん達を使いたくはないんだけど……仕方ないね。アルヴァーナの姿を見たがいないか探しておくよ」

 ガルドルと呼ばれた男性が、やれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

「……ねぇ『エルビス』。あなたずっと黙ってるけど、どうしたの?」
「……ふっ、くくっ……」
「エルビス……?」
「ああいや、なんでもない」

 これまでずっと黙っていた青年……黙っていたわけでは無く、笑いを堪えてたみたいだ。

「……何がおかしい」
「やだなぁ、そんなに怖い顔しないでよ。別に、悪いことを考えてるわけじゃないんだしさ」

 笑みを顔に貼り付けたままエルビスが立ち上がる。

「魔王様、アルヴァーナの始末は?」
「……生け捕りでも、殺しても、どちらでも構わない」
「そうですか……わかりました」
「ちょっとエルビス?」
「お疲れ様でした。先に失礼しますね」

 ひらひらと軽く手を振り、エルビスが部屋から出ていく。

「……相変わらず、エルビスさんは自由だね」
「そうね……まさか、アルヴァーナが『魔国』を抜けるのを手伝ったのって……?」

 考えるコキュートスの隣で、ラプターが気まずそうに顔を背ける。

「……やつの大罪は『強欲』……自分の欲求のためになら、どんな汚い事にも手を染める性格だ……ふん、何か良からぬ事を考えてそうだな」
「うん……オイラもそう思うよ」

 オーガとガルドルの呟きが、静かな室内に響いた。

―――――――――――――――――――――――――

 やっとだ。
 やっとあの憎いガキを殺せる。

「ふくくっ、くくっ」

 喜びから、笑いが止まらない。
 魔王様は『生け捕りでも、殺しても、どちらでも構わない』と言っていた。

 ずっと気に入らなかった。あのガキと、オーガの事が。
 元々『七つの大罪』には『魔族』しか入れない決まりがあった。
 なのに、『人族』のアルヴァーナと、『鬼族』のオーガを『七つの大罪』に入れて……ずっとイライラしていた。

 だが今回、アルヴァーナの勝手な行動のおかげで、あのクソガキを殺すことができる。

「さて……アルヴァーナが行くとしたら……母国の『人国』かな」

 大きな軍隊は必要ない……俺1人で乗り込んでやろう。
 あいつの全力を正面から受けて、それを上からねじ伏せてやる。

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