剣聖と呼ばれた少年、願いを叶えるためにダンジョン攻略~最強がチートスキルで更に最強に~
第二話 『道場破り』
「着きましたよツカサさん! ここが魔法剣士ギルドです」
教会を出てから十分足らずでの到着だ。
来る途中にはレンガ造りの家や、丸太で出来たログハウスが立ち並んでいた。
なのでギルドも似たようなものかと思っていたのだが……。
「これが本当に異世界の建物か……?」
思わずため息が出るほどの洗練された外観。
一面ガラス張りの近代的な建物、それが魔法剣士ギルドだった。
中に足を踏み入れると剣士たちの掛け声と打音が聞こえてくる。
その様子はさながら剣道部のようだ。
「あれ、シャロロちゃんかい? 珍しいね。……横にいるのは新人さんかな?」
入り口すぐ近くのカウンターに居る長身のスキンヘッドのおじさんに声を掛けられた。
「ゴンゾさんこんにちは~。この方は私が召喚で呼び寄せたツカサさんです」
「こんにちは、紹介してもらった司です。魔法を教えてもらえるとのことで伺いました」
「へぇ、召喚でこんな坊ちゃんが呼び寄せられたのかい。まあこっちに来い」
ゴンゾと呼ばれたおじさんに言われるがまま近づくと、黒色の長い棒切れを渡された。
「……これは?」
「なんだ、坊ちゃん何も聞いてないのか? ここ魔法剣士ギルドでは練習するのにその摸擬刀を使うんだよ」
摸擬刀……竹刀のようなものだろうか?
しかし竹刀に比べるとずっしりと重い、まるで日本刀のようだ。
「まずはそれを使ってギルドのみんなに実力を示せ、魔法を教わるのはそれからだ」
「わかりました」
俺は摸擬刀を右手一本で掴み、稽古をしているスペースにずかずかと踏み入った。
「俺の名前は柊司です! どなたか手合わせをしてはもらえないでしょうか!」
開口一番大声で試合を申し込む。
まるで道場破りのような俺の振る舞いは、そこにいる者全員の注目を浴びるには十分だった。
「なんだなんだぁ、威勢のいいのが入ってきやがったな!」
俺の声にいち早く反応したその男は、二メートルは優に超える筋骨隆々の肉体を持ち、頭の左右からは水牛のような角が生えている。
その姿に驚きを隠せない様子の俺を見て、シャロロはこそっと耳打ちをしてくれた。
「あの方は副ギルドマスターのフィンさんですよ。ドラータ族の特徴である立派な体と角や、その気性から鬼の副長と呼ばれているんです~」
鬼の副長――新選組の土方歳三を思い起こさせる呼称だ。しかし、土方の外見は紳士的な風貌だったのに対しこのフィンは見た目からして本物の鬼のようだ。
「ヒイラギツカサと言ったな。いきなり勝負をしかけてくるその度胸は認めてやらぁ。でも現実を知ることも大事だ。――おい、モタルケ! こいつの相手をしてやってくれ」
正座をしていたモタルケと呼ばれたヒューム族の男が、目の前にある摸擬刀を手に取り立ち上がると、俺に向かって一礼する。
「君はまだ若い。自信があるのは結構なことだが、一度ここで壁を知っておくといいでしょう。……骨折くらいは覚悟をしてくださいね」
モタルケが摸擬刀の先端を斜め上に向けた構え――正眼の構えで俺に対峙すると、フィンにより戦闘の合図が告げられる。
「戦闘開始!!」
じりじりとモタルケがすり足でにじり寄ってくる。
それに対して右手で摸擬刀を持ったまま立っている俺。
数秒ほどするとギャラリーから声が聞こえてきた。
「なんで二人とも攻撃しないんだ?」
「馬鹿っ! それくらいもわからないのか! 二人とも間合いを測ってるんだよ」
「モタルケさんの間合いに入った瞬間にあの少年は終わりってことか」
「そういうことだよ、まあ見てな」
ギャラリーの話を聞く限りこのモタルケという人はギルド内でも中堅以上の実力者なのだろう。
でも、おかしい、それなのに何故――
――――俺の間合いの中でぼーっと突っ立ってるんだ?
「あの……? モタルケさん?」
「試合中だぞ、言葉を慎みなさい」
「打ってもいいんですよね……?」
「――――!?」
モタルケはようやく自身が俺の間合いに入っていることに気付いて攻撃を仕掛けてきた。
俺の頭上にモタルケの摸擬刀が振り下ろされる。
それを横にさっとかわして――――がら空きの胴に剣撃を打ち込んだ。
「――ぬっ、ぬおぉぉぉぉ!」
苦しそうに悶えながら崩れ落ちるモタルケ。
シャロロはモタルケの撃ち込まれた箇所を確認して慌てて、
「大変です! モタルケさん骨折してます! 魔法ギルドまで運んで回復してあげてください!」
ギルドの救急班らしき人たちがモタルケを運んでいく。
「……あの、まだやれる人います?」
モタルケの敗北で通夜のように静かになってしまったギルド内に、虚しく俺の声が響く。
誰も名乗りを上げないのを見かねてフィンが立ち上がった。
「ヒイラギツカサ、モタルケに勝ったくらいで調子に乗るなよ。しかし、お前を甘く見ていたのも事実。その詫びもこめて、俺自らが相手してやらぁ」
フィンは摸擬刀を右手と左手に一本ずつ持ち、巨体を更に大きく見せるかの如く大の字に広げて俺の方に向き合った。
「モタルケの敗因はお前を素人だと思って魔法を使わなかったことだ。しかしこの俺は違う! 最初から全力でいかせてもらう! 俺の魔法の相は火。業火の二刀流を操るフィンとはこの俺のことよ!」
途端にフィンの両手にある摸擬刀のそれぞれから火が立ち上った。
「やべぇ! フィンさんが本気を出した! みんな離れろ!」
ギャラリーは皆カウンターの裏側に退避していった。
面白い。それだけ広範囲の攻撃を繰り出すってわけだな。
「ヒイラギツカサよ、お前は普通の剣士ではないな? 先程の立ち合いを見るにお前の間合いはとてつもなく広い。 ――――だがそのお前の間合いよりも遠くから攻撃してくる場合にはどう対処する、ヒイラギツカサ!」
フィンが右手の剣を振るうと、剣先から火炎放射器のようにギュンっと炎が伸びてきた。
俺は咄嗟にジャンプして躱したが、服の袖口に炎がかすってチリチリと焦げる音がする。
「これ、まともに当たったら火傷じゃすまないぞ……」
考えろ、どうすればこの状況を切り抜けられるのかを。
冷や汗をかきながらも冷静に思考を巡らせる。
今の攻撃は右手から放たれた炎のみだったからジャンプして避けられたものの、両手で放たれたら今度こそ終わりだ。
こういう時の結論は一つ――――やられる前に、やれ!
俺は手に持った摸擬刀をフィンめがけて思い切り投げつけた。
「血迷ったかヒイラギツカサ! 一つしかない武器を捨てるとは!」
フィンは目の前に飛んできた摸擬刀を炎の剣で薙ぎ払い、次の攻撃に移ろうとする。
しかし眼前に居たはずの俺の姿が見えず、キョロキョロと辺りを見回すフィン。
「――こっちですよ、フィンさん」
「――何ぃ! 何故俺の後ろに! 移動したにしては、早すぎるっ!」
縮地――瞬時に相手との間合いを詰め、相手の死角に入り込む体捌き。
俺は剣術を身に付ける過程で縮地を修得していた。
「覚悟してください、俺は無刀も使うんです。素手の一撃も軽くはないですよ」
「くっ、くそったれが――」
フィンが振り向くよりも早く、俺の拳がフィンの顔面をえぐった。
教会を出てから十分足らずでの到着だ。
来る途中にはレンガ造りの家や、丸太で出来たログハウスが立ち並んでいた。
なのでギルドも似たようなものかと思っていたのだが……。
「これが本当に異世界の建物か……?」
思わずため息が出るほどの洗練された外観。
一面ガラス張りの近代的な建物、それが魔法剣士ギルドだった。
中に足を踏み入れると剣士たちの掛け声と打音が聞こえてくる。
その様子はさながら剣道部のようだ。
「あれ、シャロロちゃんかい? 珍しいね。……横にいるのは新人さんかな?」
入り口すぐ近くのカウンターに居る長身のスキンヘッドのおじさんに声を掛けられた。
「ゴンゾさんこんにちは~。この方は私が召喚で呼び寄せたツカサさんです」
「こんにちは、紹介してもらった司です。魔法を教えてもらえるとのことで伺いました」
「へぇ、召喚でこんな坊ちゃんが呼び寄せられたのかい。まあこっちに来い」
ゴンゾと呼ばれたおじさんに言われるがまま近づくと、黒色の長い棒切れを渡された。
「……これは?」
「なんだ、坊ちゃん何も聞いてないのか? ここ魔法剣士ギルドでは練習するのにその摸擬刀を使うんだよ」
摸擬刀……竹刀のようなものだろうか?
しかし竹刀に比べるとずっしりと重い、まるで日本刀のようだ。
「まずはそれを使ってギルドのみんなに実力を示せ、魔法を教わるのはそれからだ」
「わかりました」
俺は摸擬刀を右手一本で掴み、稽古をしているスペースにずかずかと踏み入った。
「俺の名前は柊司です! どなたか手合わせをしてはもらえないでしょうか!」
開口一番大声で試合を申し込む。
まるで道場破りのような俺の振る舞いは、そこにいる者全員の注目を浴びるには十分だった。
「なんだなんだぁ、威勢のいいのが入ってきやがったな!」
俺の声にいち早く反応したその男は、二メートルは優に超える筋骨隆々の肉体を持ち、頭の左右からは水牛のような角が生えている。
その姿に驚きを隠せない様子の俺を見て、シャロロはこそっと耳打ちをしてくれた。
「あの方は副ギルドマスターのフィンさんですよ。ドラータ族の特徴である立派な体と角や、その気性から鬼の副長と呼ばれているんです~」
鬼の副長――新選組の土方歳三を思い起こさせる呼称だ。しかし、土方の外見は紳士的な風貌だったのに対しこのフィンは見た目からして本物の鬼のようだ。
「ヒイラギツカサと言ったな。いきなり勝負をしかけてくるその度胸は認めてやらぁ。でも現実を知ることも大事だ。――おい、モタルケ! こいつの相手をしてやってくれ」
正座をしていたモタルケと呼ばれたヒューム族の男が、目の前にある摸擬刀を手に取り立ち上がると、俺に向かって一礼する。
「君はまだ若い。自信があるのは結構なことだが、一度ここで壁を知っておくといいでしょう。……骨折くらいは覚悟をしてくださいね」
モタルケが摸擬刀の先端を斜め上に向けた構え――正眼の構えで俺に対峙すると、フィンにより戦闘の合図が告げられる。
「戦闘開始!!」
じりじりとモタルケがすり足でにじり寄ってくる。
それに対して右手で摸擬刀を持ったまま立っている俺。
数秒ほどするとギャラリーから声が聞こえてきた。
「なんで二人とも攻撃しないんだ?」
「馬鹿っ! それくらいもわからないのか! 二人とも間合いを測ってるんだよ」
「モタルケさんの間合いに入った瞬間にあの少年は終わりってことか」
「そういうことだよ、まあ見てな」
ギャラリーの話を聞く限りこのモタルケという人はギルド内でも中堅以上の実力者なのだろう。
でも、おかしい、それなのに何故――
――――俺の間合いの中でぼーっと突っ立ってるんだ?
「あの……? モタルケさん?」
「試合中だぞ、言葉を慎みなさい」
「打ってもいいんですよね……?」
「――――!?」
モタルケはようやく自身が俺の間合いに入っていることに気付いて攻撃を仕掛けてきた。
俺の頭上にモタルケの摸擬刀が振り下ろされる。
それを横にさっとかわして――――がら空きの胴に剣撃を打ち込んだ。
「――ぬっ、ぬおぉぉぉぉ!」
苦しそうに悶えながら崩れ落ちるモタルケ。
シャロロはモタルケの撃ち込まれた箇所を確認して慌てて、
「大変です! モタルケさん骨折してます! 魔法ギルドまで運んで回復してあげてください!」
ギルドの救急班らしき人たちがモタルケを運んでいく。
「……あの、まだやれる人います?」
モタルケの敗北で通夜のように静かになってしまったギルド内に、虚しく俺の声が響く。
誰も名乗りを上げないのを見かねてフィンが立ち上がった。
「ヒイラギツカサ、モタルケに勝ったくらいで調子に乗るなよ。しかし、お前を甘く見ていたのも事実。その詫びもこめて、俺自らが相手してやらぁ」
フィンは摸擬刀を右手と左手に一本ずつ持ち、巨体を更に大きく見せるかの如く大の字に広げて俺の方に向き合った。
「モタルケの敗因はお前を素人だと思って魔法を使わなかったことだ。しかしこの俺は違う! 最初から全力でいかせてもらう! 俺の魔法の相は火。業火の二刀流を操るフィンとはこの俺のことよ!」
途端にフィンの両手にある摸擬刀のそれぞれから火が立ち上った。
「やべぇ! フィンさんが本気を出した! みんな離れろ!」
ギャラリーは皆カウンターの裏側に退避していった。
面白い。それだけ広範囲の攻撃を繰り出すってわけだな。
「ヒイラギツカサよ、お前は普通の剣士ではないな? 先程の立ち合いを見るにお前の間合いはとてつもなく広い。 ――――だがそのお前の間合いよりも遠くから攻撃してくる場合にはどう対処する、ヒイラギツカサ!」
フィンが右手の剣を振るうと、剣先から火炎放射器のようにギュンっと炎が伸びてきた。
俺は咄嗟にジャンプして躱したが、服の袖口に炎がかすってチリチリと焦げる音がする。
「これ、まともに当たったら火傷じゃすまないぞ……」
考えろ、どうすればこの状況を切り抜けられるのかを。
冷や汗をかきながらも冷静に思考を巡らせる。
今の攻撃は右手から放たれた炎のみだったからジャンプして避けられたものの、両手で放たれたら今度こそ終わりだ。
こういう時の結論は一つ――――やられる前に、やれ!
俺は手に持った摸擬刀をフィンめがけて思い切り投げつけた。
「血迷ったかヒイラギツカサ! 一つしかない武器を捨てるとは!」
フィンは目の前に飛んできた摸擬刀を炎の剣で薙ぎ払い、次の攻撃に移ろうとする。
しかし眼前に居たはずの俺の姿が見えず、キョロキョロと辺りを見回すフィン。
「――こっちですよ、フィンさん」
「――何ぃ! 何故俺の後ろに! 移動したにしては、早すぎるっ!」
縮地――瞬時に相手との間合いを詰め、相手の死角に入り込む体捌き。
俺は剣術を身に付ける過程で縮地を修得していた。
「覚悟してください、俺は無刀も使うんです。素手の一撃も軽くはないですよ」
「くっ、くそったれが――」
フィンが振り向くよりも早く、俺の拳がフィンの顔面をえぐった。
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