新しい世界で生きるには

パロす

忍び寄る影

   ヤトは気がついたら家を出ていた。もちろんそれはクラスタを探すためだ。しかし、ヤトは家を出て思った。

   そう、クラスタの位置を知る術がないのだ。
だが同時にこうも考えた。ならば創ればいいと。
そしてまた考える。

   俺は人の気配を察知することが不可能だ。
障害物に阻まれ、遠くにいる人など場所を正確に知ることが出来ない。

   これを逆転させる

   俺は人の気配に敏感だ。
どんなに離れようと、無数の障害物に阻まれようと人の場所を知ることができる。

「『逆転(リバース)』」

【『気配察知【人】』を入手しました。

初めてスキルを入手しました。

スキルはユニークスキルでは無い為、発動句はスキル名を言えば発動します。】

   また頭に世界の言葉が流れてきた。
どうやらユニークスキルでは無い普通のスキルはスキル名を呟くことで発動するらしい。
しかし、今はそんな事はどうでも良かった。
クラスタを探すことに専念しなければならないのだから。

「『気配察知』」

   ヤトは先ほど手に入れた『気配察知【人】』を使う。
すると頭にマップのようなものが流れてきた。
しかし、それは細かいマップではなくとても簡易的なものだった。

   簡単に言うならば何も無い真っ白なホワイトボードに青い点と赤い点だけがある。
そんな感じだった。もちろん距離もわからない。これがスキルとユニークスキルの差なのだろう。しかしそんなことは後回しだ。
多分青い穴の空いた丸が自分で、赤い穴の空いた丸が察知している人なのだろう。これは感覚的に分かった。

   何故ならば青い丸が手前に来ているからだ。
これでクラスタの位置は分かった。ならば次にすることは一つだけだろう。そう、走るだけだ。
そう考えてヤトはクラスタがいるであろう場所に向かった。


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   どれくらい経っただろうか、気配察知を使ってもう一度見るもまだ半分も行っていない。
これでは日が暮れてしまう。
そう考えたヤトは身体を強化するスキルを手に入れようと考えた。

   俺は身体能力がそこまで高くない。
足は遅く、力もない。耐久面でみてもひ弱な人間だ。

   これを逆転させる

   俺は身体能力が物凄く高い。
足は光よりも速く、力は山さえも吹き飛ばす。鋼鉄の身体を持ち合わせている。

「『逆転(リバース)』」

   ヤトはさっき気配察知を手に入れる時のイメージが弱かった。だから限定されたスキルになってしまったのだと考えた。
だから今回は大袈裟にイメージをして逆転させた。

   多分それがやりすぎてしまったのだろう。

【『身体能力狂化【特大】』を手に入れました。
このユニークスキルはパッシブユニークスキルです。
このユニークスキルを手に入れた事により体のつくりが大きく変わります。】

   世界の言葉をボーッとしながら聞いていたら唐突に体の至る所から悲鳴が聞こえてきた。
全身を打撲したような痛みが脳内を駆け巡る。
当然、そんな痛みに九歳児などが耐えられるはずもなく気絶した。


......................................................


   目が覚めると、辺りの光は特に変わっていなかった。気絶している時間はそこまで長くなかったのだろう。

   そして先程の痛みが嘘のように引いていた。
寧ろ今は物凄く動きやすくなっている。身体が鉛から解き放たれたように軽かった。試しに軽くジャンプしてみると、一メートルは余裕で飛ぶことが出来た。流石に驚きだ。
そして木を殴ってみると折れた。そう、木屑をぶちまけながら殴った所から折れたのだ。
こんな九歳児みんな御免だろう。。

   そんなことをして自分の体の変化に驚きながら喜んでいたが、途中で自分の目的を思い出した。
そう、クラスタを探しに来たのだ。

   焦ってもう一度、気配察知を使うとクラスタの居場所は変わっていなかった。しかし、変わったことは一つだけあった。そう先ほどまでは穴の空いた丸だったが、今は穴の部分ががだんだん埋まってきているのだ。

   その事にヤトは嫌な予感を感じた。それは、クラスタの命関わっているのでは無いかと。
ヤトはそう考えた瞬間、足を踏み込み思いっきり森を駆け抜けた。
その時に体に圧を感じたが、身体能力狂化のお陰だろうか、耐えることが出来た。

   流石、身体能力狂化だ。先程の時より比べるまでもなく速かった。それはクラスタを目視出来るほどに。しかし、クラスタの目の前にナニカが見える。だが黒くて物凄く大きいがそれ以外ははっきりと見えなかった。
その時叫び声が聞こえた。

「グルルァァァァ!!!!」

「クソがァ!!!!」

   片方はなんとも形容しがたい鳴き声を上げ、もう片方はクラスタが叫んでいた。
そして金属がぶつかり合うような音が聞こえる。

   そしてその音のする方向に向かえば向かうほど漂う腐敗臭。これが何の臭いかは分からないが、クラスタ言っていたグリーヴァスドラゴンしか出せる奴はいないと決めつけた。
そうでなければ手紙の意味が理解できないからだ。

   そして、ヤトはクラスタを援護しようと二人の方にもっと走り近づいていく。
ヤトが追いつき、クラスタの全貌がしっかりと見えるほどになるとヤトは目を見開いた。何故ならばクラスタの腹には大きな切り傷があり、頭からも血を流しながら立っていたからだ。

   そしてグリーヴァスドラゴンを見ると角は折れ、身体中が傷だらけになっていた。
多分これはクラスタの傷つけたものだろ。あの傷ならばあと一押しで倒せる。そう思った。

   だからヤトはクラスタに声を掛けた。掛けてしまった。

「おい!   クラスタ!!   お前俺を置いてそんな奴と戦うなんてずるいぞ!   俺も混ぜろよ!   どうせそんなトカゲ死にかけなんだしさ!」

   ヤトは調子よく、ふざけながら声を掛けた。
そしてクラスタはこっちを振り向き驚いたような顔をし、そしてすぐに怒りに顔を染めて、怒鳴った。

「ふざけるのも大概にしやがれ!!!   ヤト!   いいか!?   こいつには物理攻撃が効かないんだ! そして魔法耐性も持ってやがる!  わかるか!?   もう、耐えるしかないんだよ!   だから、俺が時間を稼ぐ!   速く逃げろ!」

   ヤトにはその言葉がハッタリのようにしか聞こえなかった。何でこんな嘘をつくのか、相手はこんなにもボロボロじゃないか。何にも面白くもない、だから鼻で笑う。

「ハッ!   クラスタ、そんな嘘面白くもなんともないよ?   寧ろ一人で倒したいだけなんだろ?  この戦闘狂!」

   そう言いながらヤトは笑った

「うるせぇ!  なんでもいいから速く逃げろ!」

   クラスタは、必死に訴えかけるがヤトはまともに取り合わない。

「だからそんなこと言ったって……」

「グルォァァァァ!!!」

   ヤトが話している時、グリーヴァスドラゴンは叫びながらヤトに腕を振り下ろした。
そのグリーヴァスドラゴンの腕はクラスタの大剣により防がれた。

「あ、ありがとう…」

「ヤト、お前は知らなかったな」

「な、何が?」

「グリーヴァスドラゴンはな、あの姿がデフォルトなんだよ」

   そう言いながらクラスタはグリーヴァスドラゴンの腕を弾き返して、爆破の魔法を撃ってノックバックで相手を飛ばす。

「は……?」

「だから、あの傷のように見えるのはただの模様だ」

   その瞬間ヤトは冷や汗が止まらなかった。
あれが模様なら、グリーヴァスドラゴンは傷を何一つ負っていないことになる。ずっとクラスタは言葉のまま耐えていただけだ。耐えているだけ……何がしたいのか意味が理解できなかった。

「な、ならクラスタどうしてグリーヴァスドラゴンが攻撃が効かないことを知っていたのに戦ってたんだよ!」

「いや、相手が物理が効かないなんて知らなかったぞ、グリーヴァスドラゴンはな個体ごとによってユニークスキルが変わるんだ。それに多分あいつは変異種だ。普通は目の色は琥珀色だが、その証拠に色が違う。」

   そう言って目を見てみると確かに緑色だった。しかしそんなことはどうでもいい。

「そんなこと知らないよ!   だったら逃げればいいじゃないか!   自殺したいのか!?」

「そんな理由ないだろ。だけどな、食い止めないでこのままこいつが街とかに行ったらどうするんだ?」

   絶対に勝てない戦いじゃないんだ。魔法の攻撃は一応通る。なんてクラスタは言ってたが、一応通るだけで全く与えてないのが目に見える。
その証拠にグリーヴァスドラゴンの目には余裕があるのだ。

   グリーヴァスドラゴンが起き上がりこっちにブレスを放つが、クラスタの貼る防御結界に阻まれる。

   そしてクラスタが今度は落とし穴をつくり、グリーヴァスドラゴンを地面に落として蓋をした。

「知らない人の命なんてどうでもいいじゃないか!   関係ない!」

   親しい友人などが命の危機に瀕していたらきっと哀しむだろう、そしてその原因を作ったものにも怒るだろう。

   だが、自分の知らない所で知らない人が死ぬ。別に何も思わない。それはそうだろう、悲しみを動かす記憶もなければ怒る通りもない。

「お前……本気で言ってるのか?」

「ああ!   どうなったって構わないね!   そんな事よりもクラスタの方が大事さ!」

「それは嬉しいが、お前には幻滅したよ。」

「は?」

   突然突き放されて驚くヤト。
幻滅される理由がわからない。唐突に何を言い出すのか。。

「一人の命よりも複数の命の方が大事に決まってるだろ?」

   確かにクラスタの言うことは最もだ。最もだが、これは理屈じゃない。
そして何か言い返そうとするが上手くまとまらず言葉にできない。どうしても詰まってしまう。

   言葉を探している間にグリーヴァスドラゴンが落とし穴の蓋から這い上がる。しかしそれは音もなく気配すら無く、誰も気づかない。

「ヤト、もうお前は帰れ。家にいろ」

「いやだね!   死んでも帰るものか!」

   その時クラスタはヤトの肩を両手で掴んだ。
そして怒鳴る

「いい加減にしろ!   確かにお前はまだ子供だ!  自分の思い通りにならないことに腹を立てるのは仕方ないかもしれない!   だけどな!  これは街がひとつ滅ぶほどの大きな事なんだよ!」

   分かってくれよ!   そう熱くなって話すクラスタの首に忍び寄る黒く鋭利な爪。その爪はまるで影のようだった。辺りは暗く同化しており気配すら感じることなかった。そして、その爪は見事なまでの切れ味をみせてくれた。ご丁寧に爪の通った後に黒い線を残してくれる。そして赤い花がヤトの目の前で咲き誇り、美しい芸術作品となった。

   硬いものが落ちる音がした、その時にはヤトの顔は赤く染まっていた。

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