新しい世界で生きるには
危険と出会い
《君のスキル…逆転を使うんだ。君とあの熊もどき、立場を逆転させるように想像してね。今から時を戻すから、早めにね。》
そう語りかけるようにして、頭の中にレイシーの言葉が響いた。
「れ、レイシー………?」
「うわっ!!!!って、えっ?」
レイシーの声が頭の中に響き、驚きでうずくまった状態から顔を上げるとすぐ目の前に、爪をブロードソードにした「シャッテングリズリー」が固まっていた。
「な、なんで…本当に時間が?」
《さっき、言った通りさ。早く自分の中で君の立場と熊もどきの立場を逆転させるんだ。その前にこの場所から少し隣に移動しようか。》
レイシーの声に導かれるまま「シャッテングリズリー」の攻撃範囲から離れるために右に移動した。
「立場を逆転させるって。そ、そんなこと言われたって…」
ヤトは今まで【逆転】の力を使ったことがない。それはどれほどの力を持ち、どれほど範囲があるのかも不透明なままだ。しかし、発動の仕方だけは研究者が教えてくれた。それは『逆転(リバース)』と言えばいいのだ。
《君ならできるさ。》
「う…ん。できるだけ考えてみるよ。。
けど、そんなことよりも!どうしてレイシーの声が響くんだい!??」
《それじゃあ、時を戻すよ。仕事(・・・)があるんでね。》
「仕事…?待ってくれ!レイ…」
《……魔術削除(ツァオバーレッシェン)》
その瞬間、左側に居た「シャッテングリズリー」が動き出した。
ブロードソードと化した爪を振るい、目の前にある断崖を切り裂いた。
「シャッテングリズリー」は俺が一瞬にして目の前から消えたことに驚いたのか、首を左右に振りヤトのことを探していた。
「グルルルゥ…」
「ッ!?」
少し隣に逃げただけではやはり「シャッテングリズリー」に気づかれた。さらに気づかれた時と同時に睨まれてしまい、悪寒のようなものが背筋を走っていた。
(くそっ!立場を逆転させるって言ったって!こんな至近距離じゃ怖すぎる!
それに本当に立場を逆転させるなんて、出来るのか!?そのまま死んじゃったりするんじゃないよな!?)
等々、嫌な予感がヤトの思考を埋め尽くす。
しかしこれ以外にやる事など残っていないのも現実だった。
やるしか…ないよな。そう考えて、こっちに睨みを利かせている「シャッテングリズリー」を睨み返しながら、思考に耽(ふけ)る。
(立場…そう立場だ。この場合の立場は俺が弱者で相手が強者だ。相手は強く余裕がある。だが、逆に弱い俺に余裕はなく張り詰めた状態だ。隙があれば逃げる事しか頭にない。これを逆転させる。俺は強く、相手を弄ぶ余裕がある。逆に相手は余裕がなく隙があれば逃げる事しか考えない。)
ふーっ。と一息をつき、一言呟く。
「『逆転(リバース)』」
『逆転(リバース)』……そう呟いた瞬間。自分に全能感に似た何かが体の底から湧いてくるような錯覚を覚えた。まるで、さっきの追い詰められて今すぐにでも泣き出しそうな気持ちが嘘みたいだ。
逆にずっと睨んでいた「シャッテングリズリー」は身体を震わせ、後ずさり情けない鳴き声をあげながら逃げてしまった。
「な、なんだよこれ。ははっ。」
ヤトは乾いた笑い声をあげていた。それもそうだろう。さっきまで死にかけだったはずなのに相手はすぐに逃げてしまった。嬉しいのは嬉しいが喜んでいいのか、頭が理解していないのだ。
「でも、どうしてレイシーの声がしたのだ?もしかしてこっちの世界にもしかしたら来ていたりしてな。」
冗談交じりにははっ。と乾いた笑いをまたあげていた。眠くなってきたであるな。そう呟きながら。
「ギャウン!!」
「!?」
欠伸をしていたら急に、「シャッテングリズリー」が逃げた方向から鳴き声のような悲鳴が聞こえた。
ヤトは近くに落ちている石を拾い、投げる構えを取りながら声のした方向を向いていた。
すると、一人の男が現れた。
「ッ!?人間!?誰だお前は」
ヤトは森に人間が居ることに驚き、目の前にいる男を凝視する。
茶髪に黒目、背中に大剣を背負いながら黒い外套を着ており、右手には血塗れた黒い剣を持っていた。
男は黒い剣に付いている血を払うように剣を横に振り、既に左に刺さっている剣とは反対側の鞘に戻した。
警戒しているヤトに対して男は呑気な声で
「お前こそ誰だよ。この森は俺の家だぞ。あ、それと敬語で喋らなくていいからな」
そう、冗談を交えたような喋り方で笑っていた。
「というか、何でこんな所にお前みたいなガキがいるんだ?」
ここは正直な事を言ったらダメな気がする。正直に話した所で真面目に取り合って貰えないだろうし、こんな話を信用していないやつに話すなんてどうかしてるだろう。
「色々こっちにも事情があるのだ、話す道理はない」
そう言いながらヤトは構えていた石をポケットに入れて構えを解く。
男は
ふーん。そう面白くなさそうに言っていた。
「まぁ、いいや。そんなことよりも、さっきの「シャッテングリズリー」はお前がやったのか?」
シャッテングリズリー?さっきのレイシーが言ってた熊もどきの事か?しかしこんな訳の分からない奴に話していいのか?だが、話さないといつまでも問い詰められるような気がする。
ヤトはそう考え口を開いた。
「もしかしてさっきの熊もどきの事か?」
「ふ…ふふっ。ガハハっ!!!熊もどき!熊もどきか!ガキの癖に面白い事を言いやがるな!ハハハッ!そうさ、熊もどきの事だ!あいつはな、この地獄の森で二番か三番目くらいに厄介なやつなんだよ。お前みたいな何も持っていないちんちくりんなガキがどうやって追い返したんだ?」
男は途中まで馬鹿みたいに笑っていたが急に真面目な顔になり、ヤトが追い返した理由を聞こうとした。
「ふん。教える意味が無い。そう言ったら?」
「教えてもらうまで、付き纏うぞ。
気になったことは知らないと狂いそうな性分なんでな」
「気持ち悪いやつなのだな。」
「うるせぇ。初対面なのに生意気なガキめ。
そうだ、名前教えろよ!」
「ふん。我が先に聞いたのだがな。我はヤト」
「おっと、すまねぇ。俺はA級冒険者のクラスタだ。しかも魔法剣士でユニークスキルを三つ持っている!ちなみにこの森に住んでいる!」
「ふーん。」
「あれ。A級冒険者だぞ?憧れだろ?」
「だからどうしたのだ」
「魔法剣士だぞ!?凄いだろ?」
「すごいのか。すごいな」
「ユニークスキル三つ持ってるんだぞ!驚いたか!?」
「ふむ。ユニークスキルがなんなのか分からぬが凄いスキルなら我も五つ持ってるぞ」
「えぇっ!?!?」
お前が驚くのか。ヤトはそんなことを思いながら嫌いになれないこの男に気を許しかけていた。
そう語りかけるようにして、頭の中にレイシーの言葉が響いた。
「れ、レイシー………?」
「うわっ!!!!って、えっ?」
レイシーの声が頭の中に響き、驚きでうずくまった状態から顔を上げるとすぐ目の前に、爪をブロードソードにした「シャッテングリズリー」が固まっていた。
「な、なんで…本当に時間が?」
《さっき、言った通りさ。早く自分の中で君の立場と熊もどきの立場を逆転させるんだ。その前にこの場所から少し隣に移動しようか。》
レイシーの声に導かれるまま「シャッテングリズリー」の攻撃範囲から離れるために右に移動した。
「立場を逆転させるって。そ、そんなこと言われたって…」
ヤトは今まで【逆転】の力を使ったことがない。それはどれほどの力を持ち、どれほど範囲があるのかも不透明なままだ。しかし、発動の仕方だけは研究者が教えてくれた。それは『逆転(リバース)』と言えばいいのだ。
《君ならできるさ。》
「う…ん。できるだけ考えてみるよ。。
けど、そんなことよりも!どうしてレイシーの声が響くんだい!??」
《それじゃあ、時を戻すよ。仕事(・・・)があるんでね。》
「仕事…?待ってくれ!レイ…」
《……魔術削除(ツァオバーレッシェン)》
その瞬間、左側に居た「シャッテングリズリー」が動き出した。
ブロードソードと化した爪を振るい、目の前にある断崖を切り裂いた。
「シャッテングリズリー」は俺が一瞬にして目の前から消えたことに驚いたのか、首を左右に振りヤトのことを探していた。
「グルルルゥ…」
「ッ!?」
少し隣に逃げただけではやはり「シャッテングリズリー」に気づかれた。さらに気づかれた時と同時に睨まれてしまい、悪寒のようなものが背筋を走っていた。
(くそっ!立場を逆転させるって言ったって!こんな至近距離じゃ怖すぎる!
それに本当に立場を逆転させるなんて、出来るのか!?そのまま死んじゃったりするんじゃないよな!?)
等々、嫌な予感がヤトの思考を埋め尽くす。
しかしこれ以外にやる事など残っていないのも現実だった。
やるしか…ないよな。そう考えて、こっちに睨みを利かせている「シャッテングリズリー」を睨み返しながら、思考に耽(ふけ)る。
(立場…そう立場だ。この場合の立場は俺が弱者で相手が強者だ。相手は強く余裕がある。だが、逆に弱い俺に余裕はなく張り詰めた状態だ。隙があれば逃げる事しか頭にない。これを逆転させる。俺は強く、相手を弄ぶ余裕がある。逆に相手は余裕がなく隙があれば逃げる事しか考えない。)
ふーっ。と一息をつき、一言呟く。
「『逆転(リバース)』」
『逆転(リバース)』……そう呟いた瞬間。自分に全能感に似た何かが体の底から湧いてくるような錯覚を覚えた。まるで、さっきの追い詰められて今すぐにでも泣き出しそうな気持ちが嘘みたいだ。
逆にずっと睨んでいた「シャッテングリズリー」は身体を震わせ、後ずさり情けない鳴き声をあげながら逃げてしまった。
「な、なんだよこれ。ははっ。」
ヤトは乾いた笑い声をあげていた。それもそうだろう。さっきまで死にかけだったはずなのに相手はすぐに逃げてしまった。嬉しいのは嬉しいが喜んでいいのか、頭が理解していないのだ。
「でも、どうしてレイシーの声がしたのだ?もしかしてこっちの世界にもしかしたら来ていたりしてな。」
冗談交じりにははっ。と乾いた笑いをまたあげていた。眠くなってきたであるな。そう呟きながら。
「ギャウン!!」
「!?」
欠伸をしていたら急に、「シャッテングリズリー」が逃げた方向から鳴き声のような悲鳴が聞こえた。
ヤトは近くに落ちている石を拾い、投げる構えを取りながら声のした方向を向いていた。
すると、一人の男が現れた。
「ッ!?人間!?誰だお前は」
ヤトは森に人間が居ることに驚き、目の前にいる男を凝視する。
茶髪に黒目、背中に大剣を背負いながら黒い外套を着ており、右手には血塗れた黒い剣を持っていた。
男は黒い剣に付いている血を払うように剣を横に振り、既に左に刺さっている剣とは反対側の鞘に戻した。
警戒しているヤトに対して男は呑気な声で
「お前こそ誰だよ。この森は俺の家だぞ。あ、それと敬語で喋らなくていいからな」
そう、冗談を交えたような喋り方で笑っていた。
「というか、何でこんな所にお前みたいなガキがいるんだ?」
ここは正直な事を言ったらダメな気がする。正直に話した所で真面目に取り合って貰えないだろうし、こんな話を信用していないやつに話すなんてどうかしてるだろう。
「色々こっちにも事情があるのだ、話す道理はない」
そう言いながらヤトは構えていた石をポケットに入れて構えを解く。
男は
ふーん。そう面白くなさそうに言っていた。
「まぁ、いいや。そんなことよりも、さっきの「シャッテングリズリー」はお前がやったのか?」
シャッテングリズリー?さっきのレイシーが言ってた熊もどきの事か?しかしこんな訳の分からない奴に話していいのか?だが、話さないといつまでも問い詰められるような気がする。
ヤトはそう考え口を開いた。
「もしかしてさっきの熊もどきの事か?」
「ふ…ふふっ。ガハハっ!!!熊もどき!熊もどきか!ガキの癖に面白い事を言いやがるな!ハハハッ!そうさ、熊もどきの事だ!あいつはな、この地獄の森で二番か三番目くらいに厄介なやつなんだよ。お前みたいな何も持っていないちんちくりんなガキがどうやって追い返したんだ?」
男は途中まで馬鹿みたいに笑っていたが急に真面目な顔になり、ヤトが追い返した理由を聞こうとした。
「ふん。教える意味が無い。そう言ったら?」
「教えてもらうまで、付き纏うぞ。
気になったことは知らないと狂いそうな性分なんでな」
「気持ち悪いやつなのだな。」
「うるせぇ。初対面なのに生意気なガキめ。
そうだ、名前教えろよ!」
「ふん。我が先に聞いたのだがな。我はヤト」
「おっと、すまねぇ。俺はA級冒険者のクラスタだ。しかも魔法剣士でユニークスキルを三つ持っている!ちなみにこの森に住んでいる!」
「ふーん。」
「あれ。A級冒険者だぞ?憧れだろ?」
「だからどうしたのだ」
「魔法剣士だぞ!?凄いだろ?」
「すごいのか。すごいな」
「ユニークスキル三つ持ってるんだぞ!驚いたか!?」
「ふむ。ユニークスキルがなんなのか分からぬが凄いスキルなら我も五つ持ってるぞ」
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