新しい世界で生きるには
孤独、遭遇
レイシー…もう二度と会うことは叶わないのかな。。。
初めて見る太陽の方を向き、思わずその激しい光を右の掌で隠す。小さな指の隙間からでも十分すぎるほどに眩しい光に嘲笑われるような気持ちになる。
そんな太陽を睨みながら空に思いを馳せた。
..........................................................................................
少し喉が渇いた。そう呟きヤトは一人、とぼとぼ目の前に広がる森へと向かっていた。
これからどうすればいいかも分からず、唯一お互いのことを知っていたサクヤとも別れてしまった。
これは考えても仕方ない。
そう考え、頭からバッサリと切り離した。
その時、何か自分に張り付いていた膜のようなものが溶けた。多分レイシーが張ってくれたバリアーであろう。そう考えると胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
野原を歩いてから数十分経っただろうか。やっと森についた。木々の背は驚く程に高い。森の中に入り頭上に目をやると木の葉により陽の光は遮られている。しかし、そこから少し漏れる光が美しい。
その光を見つめながら三十メートル以上はありそうな木に感嘆の声を思わず漏らす。
「自然とはこんなにも美しいのだな。」
思わず顔がにやけた。仕方ない、これが自然の神秘の力だ。そうヤトは自分に言い聞かせた。
だが現実は美しいだけではない。怖いものもある。
初めて歩く森の中だ。何が居るか分からず何処に喉を潤す川があるかなんて、ずっと施設に篭っていたヤトに分かるはずもない。
まして、ヤトは九歳だ。子供の足で森を歩くなんて死にに行くようなものだ。
大人でも足場の悪い森を歩くとすぐに疲れてしまう。雨が事前に降ってぬかるんでいたら尚更だ。
「取り敢えず進むしかない……か。」
だがヤトには前に進む。何故ならばそれ以外に選択肢は何も無かったからだ。
森をひたすらに歩き続けてどれくらい経っただろうか。太陽の光が小さくなっている気がする。
ヤトは途中何度も休憩を挟み、ひたすらに水を求めて歩き続けた。だが、見つかる気がしない。
代わりに唾液を飲むが喉は一向に潤う気配がしない。どうしたものか……そう考えるのは必然だった。
休憩中に、耳を澄ませたりしたが、草木が風に震える音しか聞こえない。ここに生物は居るのだろうか。
逆に何も聞こえず少し恐怖する。
また、ひたすらに歩き続けた。その間、木々に爪痕のようなものが残されていたが、気にすることでもないだろう。近くには何かが住んでいる。それだけ事だ。自然ならば当然だろう。
草木を掻き分け、虫を手で払い、やっと見つかった。川だ。
辺りを確認するために見回すが折れた枝が沢山落ちている以外は特に何もない。ようやく川を見つけた。
その事だけでヤトは崩れるように倒れた。それもそうだろう。もう日は落ちたというのにずっと歩いていたのだ。それも森を。
普通の子供では不可能だろう。だが、これはヤトの性格故か。
ヤトは倒れた状態で数分休み、川の方に歩き出して、澄んだ水を両の手で掬い出して、そのまま飲み干した。
美味しい。。。こんなに美味しい水を飲むなんて初めてだ。
そんなことを考えつつも手は止まる気配がなく、川の水を飲み干すほどの勢いで水を掬い、飲んでいた。
やがて勢いは止まり、喉の渇きは満たされたのか満足そうな顔をして水腹になったお腹を摩っていた。
研究者が言ってきた通りなら空腹感も誤魔化せるはず。
「これで一息つけるかな。」
そんなことを呟きながら、自分が飲んでいた場所のすぐ後ろの木下に移動し、目を瞑ろうとした……その時。
自分の後ろの方から草木の揺れる音が聞こえてきた。それも風の吹いた時のような優しい音ではなく人間が揺さぶるような激しい音で。
「まさか……」
ヤトの嫌な予感がした。すぐさまそこから離れ、前の方……川の方に移動した。
人間、嫌な予感とは的中するようだ。
獅子の頭に熊の体ーーーーーこの世界では「シャッテングリズリー」そう呼ばれている。自分の周りの音を遮断し、背後に回るのを得意としているーーーーー全長三メートルはあるだろう巨体が、草木の間から四足歩行で歩いてきた。
しかし、シャッテングリズリーは何故か驚いている顔をしていた。ヤトはそれが何故なのか分からないが、危ないことだけは理解していた。
「グルァァァァァァ!!!!!!!!!!」
「ッ!?」
シャッテングリズリーは二足で立ち上がり、威嚇するように吠える。
シャッテングリズリーとの距離は十五メートルあるかどうか位の距離だ。このまま走られたら拙(まず)いだろう。
「あ、足が竦(すく)んで動かない……!!  おい!  動け!!!!  動けよッ!!!!」
シャッテングリズリーの威嚇により、ヤトの足は竦んでしまったようだ。動け!! と叫びながら足を叩くが、動く気配はない。足の使い方を忘れた気分だ。
ヤトはシャッテングリズリーから目を離さぬように睨みつけ、両手を使い右の方へと逃げようとした。その時、少し長く太みがあり、折れて先の尖った枝を手に取ることが出来た。
実に睨み合いを続けて二分くらいしただろうか。
「グァァァァァァ!!!!!」
シャッテングリズリーは睨み合いに痺れを切らし、また四足歩行になりこちらに口を開けながら飛び込んできた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、ヤトは咄嗟にシャッテングリズリーの口に、手に持っていた折れた枝を縦にして挟ませた。
すると、手を噛みちぎれる!  と勘違いしたのか、嘲笑った顔をしてシャッテングリズリーは思いっきり口を閉じた。
「ギャン!?!?!?」
シャッテングリズリーは泣いたような声を出し、器用に足を地面に爪を立てて止まった。そのまま地面に座り込み、口を思いっきり開いて、両の手で刺さっていた枝を抜いた。そのまま抜いた枝を何処かへ投げ捨てしまった。その時口の端から血が垂れるのが見えた。
「グルォァァァァ!!!!!」
シャッテングリズリーの目が段々血走っていき、再度咆哮をあげた。
その時にはヤトは足が自由をきき、そのまま右の方へと走り出していた。その後をシャッテングリズリーも四足歩行で追いかける。
「くそっ!!  折角、レイシーが自分を犠牲にしてまで俺らを助けてくれたんだ!  このまま死ぬなんてごめんだな!」
そう叫びながら逃げていたが、それはすぐに終わってしまった。何故ならば眼前は断崖だったからだ。
「意味わかんねぇ!!!  なんでだよ!!!  どうしてだよ!!!!  俺が何か悪いことをしたって言うのかよ!!!!  なんで!!!  なんで死ななきゃいけねぇんだよぉぉぉ!!!!!」
「グァァァァァァ!!!!!」
「うわっ!!!」
シャッテングリズリーはヤトが叫んでいる間にすぐ後ろに来ていたようだ。
シャッテングリズリーは今にも飛び出してきそうな構えをしていた。否、今飛び出すのであろう。
「何だっていうんだよ!!!!  クソがァァァァ!!!!!!」
「ガァァァァァ!!!!」
シャッテングリズリーが飛び出し、腕を右上に構え、爪をブロードソードのように形状を変化させた。ヤトを切り裂くつもりなのであろう。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヤトはうずくまり、何もできず死を待つことしかできなかった……がその時
草木の揺れる音。絶体絶命の状況………全てが止まった。そして……
《君のスキル……逆転を使うんだ。君とあの熊もどき、立場を逆転させるように想像してね。今から時を戻すから早めにね。》
そう語りかけるようにして、頭の中にレイシーの言葉が響いた。
シャッテングリズリー
スキル
気配殺し  飛び込み   鋭利な牙
ユニークスキル
消音
自在の爪
消音
自分の行動で起きた音を意図的に消すことが出来る。
自在の爪
自身の爪を自由に形状変化することが可能。
爪の形状は所持者の想像により変化する。
初めて見る太陽の方を向き、思わずその激しい光を右の掌で隠す。小さな指の隙間からでも十分すぎるほどに眩しい光に嘲笑われるような気持ちになる。
そんな太陽を睨みながら空に思いを馳せた。
..........................................................................................
少し喉が渇いた。そう呟きヤトは一人、とぼとぼ目の前に広がる森へと向かっていた。
これからどうすればいいかも分からず、唯一お互いのことを知っていたサクヤとも別れてしまった。
これは考えても仕方ない。
そう考え、頭からバッサリと切り離した。
その時、何か自分に張り付いていた膜のようなものが溶けた。多分レイシーが張ってくれたバリアーであろう。そう考えると胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
野原を歩いてから数十分経っただろうか。やっと森についた。木々の背は驚く程に高い。森の中に入り頭上に目をやると木の葉により陽の光は遮られている。しかし、そこから少し漏れる光が美しい。
その光を見つめながら三十メートル以上はありそうな木に感嘆の声を思わず漏らす。
「自然とはこんなにも美しいのだな。」
思わず顔がにやけた。仕方ない、これが自然の神秘の力だ。そうヤトは自分に言い聞かせた。
だが現実は美しいだけではない。怖いものもある。
初めて歩く森の中だ。何が居るか分からず何処に喉を潤す川があるかなんて、ずっと施設に篭っていたヤトに分かるはずもない。
まして、ヤトは九歳だ。子供の足で森を歩くなんて死にに行くようなものだ。
大人でも足場の悪い森を歩くとすぐに疲れてしまう。雨が事前に降ってぬかるんでいたら尚更だ。
「取り敢えず進むしかない……か。」
だがヤトには前に進む。何故ならばそれ以外に選択肢は何も無かったからだ。
森をひたすらに歩き続けてどれくらい経っただろうか。太陽の光が小さくなっている気がする。
ヤトは途中何度も休憩を挟み、ひたすらに水を求めて歩き続けた。だが、見つかる気がしない。
代わりに唾液を飲むが喉は一向に潤う気配がしない。どうしたものか……そう考えるのは必然だった。
休憩中に、耳を澄ませたりしたが、草木が風に震える音しか聞こえない。ここに生物は居るのだろうか。
逆に何も聞こえず少し恐怖する。
また、ひたすらに歩き続けた。その間、木々に爪痕のようなものが残されていたが、気にすることでもないだろう。近くには何かが住んでいる。それだけ事だ。自然ならば当然だろう。
草木を掻き分け、虫を手で払い、やっと見つかった。川だ。
辺りを確認するために見回すが折れた枝が沢山落ちている以外は特に何もない。ようやく川を見つけた。
その事だけでヤトは崩れるように倒れた。それもそうだろう。もう日は落ちたというのにずっと歩いていたのだ。それも森を。
普通の子供では不可能だろう。だが、これはヤトの性格故か。
ヤトは倒れた状態で数分休み、川の方に歩き出して、澄んだ水を両の手で掬い出して、そのまま飲み干した。
美味しい。。。こんなに美味しい水を飲むなんて初めてだ。
そんなことを考えつつも手は止まる気配がなく、川の水を飲み干すほどの勢いで水を掬い、飲んでいた。
やがて勢いは止まり、喉の渇きは満たされたのか満足そうな顔をして水腹になったお腹を摩っていた。
研究者が言ってきた通りなら空腹感も誤魔化せるはず。
「これで一息つけるかな。」
そんなことを呟きながら、自分が飲んでいた場所のすぐ後ろの木下に移動し、目を瞑ろうとした……その時。
自分の後ろの方から草木の揺れる音が聞こえてきた。それも風の吹いた時のような優しい音ではなく人間が揺さぶるような激しい音で。
「まさか……」
ヤトの嫌な予感がした。すぐさまそこから離れ、前の方……川の方に移動した。
人間、嫌な予感とは的中するようだ。
獅子の頭に熊の体ーーーーーこの世界では「シャッテングリズリー」そう呼ばれている。自分の周りの音を遮断し、背後に回るのを得意としているーーーーー全長三メートルはあるだろう巨体が、草木の間から四足歩行で歩いてきた。
しかし、シャッテングリズリーは何故か驚いている顔をしていた。ヤトはそれが何故なのか分からないが、危ないことだけは理解していた。
「グルァァァァァァ!!!!!!!!!!」
「ッ!?」
シャッテングリズリーは二足で立ち上がり、威嚇するように吠える。
シャッテングリズリーとの距離は十五メートルあるかどうか位の距離だ。このまま走られたら拙(まず)いだろう。
「あ、足が竦(すく)んで動かない……!!  おい!  動け!!!!  動けよッ!!!!」
シャッテングリズリーの威嚇により、ヤトの足は竦んでしまったようだ。動け!! と叫びながら足を叩くが、動く気配はない。足の使い方を忘れた気分だ。
ヤトはシャッテングリズリーから目を離さぬように睨みつけ、両手を使い右の方へと逃げようとした。その時、少し長く太みがあり、折れて先の尖った枝を手に取ることが出来た。
実に睨み合いを続けて二分くらいしただろうか。
「グァァァァァァ!!!!!」
シャッテングリズリーは睨み合いに痺れを切らし、また四足歩行になりこちらに口を開けながら飛び込んできた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、ヤトは咄嗟にシャッテングリズリーの口に、手に持っていた折れた枝を縦にして挟ませた。
すると、手を噛みちぎれる!  と勘違いしたのか、嘲笑った顔をしてシャッテングリズリーは思いっきり口を閉じた。
「ギャン!?!?!?」
シャッテングリズリーは泣いたような声を出し、器用に足を地面に爪を立てて止まった。そのまま地面に座り込み、口を思いっきり開いて、両の手で刺さっていた枝を抜いた。そのまま抜いた枝を何処かへ投げ捨てしまった。その時口の端から血が垂れるのが見えた。
「グルォァァァァ!!!!!」
シャッテングリズリーの目が段々血走っていき、再度咆哮をあげた。
その時にはヤトは足が自由をきき、そのまま右の方へと走り出していた。その後をシャッテングリズリーも四足歩行で追いかける。
「くそっ!!  折角、レイシーが自分を犠牲にしてまで俺らを助けてくれたんだ!  このまま死ぬなんてごめんだな!」
そう叫びながら逃げていたが、それはすぐに終わってしまった。何故ならば眼前は断崖だったからだ。
「意味わかんねぇ!!!  なんでだよ!!!  どうしてだよ!!!!  俺が何か悪いことをしたって言うのかよ!!!!  なんで!!!  なんで死ななきゃいけねぇんだよぉぉぉ!!!!!」
「グァァァァァァ!!!!!」
「うわっ!!!」
シャッテングリズリーはヤトが叫んでいる間にすぐ後ろに来ていたようだ。
シャッテングリズリーは今にも飛び出してきそうな構えをしていた。否、今飛び出すのであろう。
「何だっていうんだよ!!!!  クソがァァァァ!!!!!!」
「ガァァァァァ!!!!」
シャッテングリズリーが飛び出し、腕を右上に構え、爪をブロードソードのように形状を変化させた。ヤトを切り裂くつもりなのであろう。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヤトはうずくまり、何もできず死を待つことしかできなかった……がその時
草木の揺れる音。絶体絶命の状況………全てが止まった。そして……
《君のスキル……逆転を使うんだ。君とあの熊もどき、立場を逆転させるように想像してね。今から時を戻すから早めにね。》
そう語りかけるようにして、頭の中にレイシーの言葉が響いた。
シャッテングリズリー
スキル
気配殺し  飛び込み   鋭利な牙
ユニークスキル
消音
自在の爪
消音
自分の行動で起きた音を意図的に消すことが出来る。
自在の爪
自身の爪を自由に形状変化することが可能。
爪の形状は所持者の想像により変化する。
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