スクールクエスト!

キズミ ズミ

15話 『オレとーーー』






「・・・・・・マホ」

 すっかり喧騒けんそうを取り戻した商店街の中心。人通りも多く、しかしオレは直線上のマホだけにフォーカスを当てていた。

「つーん、なのです」

 マホはオレの存在に気づいていながら、黙殺を決めているようだ。

「すまなかった。許してくれ、いや、許してください!!」

「・・・・・・!?」

 突然頭を下げて謝りだしたオレへ、周囲から好奇の視線が投げられる。

 注目を浴びるのは好きじゃない。このたぐいの注目なら尚更だ。でも、知ったこっちゃ無い。オレの謝意はこんな喧騒けんそうに埋もれるほど弱くは無い。

「マホが怒ったのはもっともだと思う!デリカシーのない事をしてしまったと猛省している!このとおりだ!!」

「モ、モリツネ!?どうしたのです、らしくない!あ、あ、分かりました、分かりましたから!ほーらもう怒ってませんから!!」

 アタフタするマホは両手の人差し指を口の端に当ててムニッと上げてみせる。

「あ、でも!」

「ーーー女の子のノートを勝手に盗み見たのは頂けないのですよ!モリツネには部室に帰ってからそれ相応の罰を考えなければ」

「・・・メンチ奢るから許してくんない?」

「許すのです!!」

 こうしてオレとマホは見事に仲直りを果たした。労力と時間の割に、物凄い安上がりな方法で解決したが、それもマホらしいといえばマホらしい。


「ーーーそう言えばマホ。お前、カツアゲ犯追ってたんじゃなかったのか?」

「何のことなのです?ワタシは最近この近くで出没する全身タイツの男を追いかけていたのです。ほら、放課後、メールしたじゃないですか」

「あっ!?そうだった、忘れてたわ・・・。てことはスッゲェ見当違いだったんだなぁ、今日のクエスト・・・」

 途端、思い出されたのはナタツカとの会話だった。

 ナタツカがマホの執筆した少女漫画を見つける前に、オレはたしかにこう言った。

『なんかマホがまたメンドくさいクエスト持ってきたらしいぞ。今日は校則ギリギリまで帰れないらしい。はぁ・・・』

 『マホが持ってきたクエスト』だった。それは人事部のHPに投稿されていたクエストでは無い証左だ。

「ーーーねぇ、モリツネ」

「なんだ?マホ」

 隣立っているマホはオレより頭二つほど背が低い、それに彼女の小さな頭を覆うネコミミのキャスケット帽が邪魔してマホの表情は見えなかった。

 だけど、どこかすがる様なマホの声音、平時とは違う真剣な語調に、オレもまた少し居住まいを正すようにした。

「今のワタシは、化け物に見えますかーーー?」

「ーーーーーー」

 言葉よりも先に後悔が胸をついた。この質問に、オレはとっさに答えられないと直感したからだ。

 想起されるのは、先ほどの、絶大とも呼べるSOSの威力。

 本音を言えば、忌憚きたん無く言ってしまえば、客観的に、マホはその人格も相まって誤解を招きやすい体質だ。

「えへへ、ごめんなさい。意地悪な質問をしたのです。これも自分で望んだ事なんだから、ワタシには責任があるはずなのに」

「ーーーーーーマホ」

「・・・らしくない事を言っちゃいました。もう、モリツネが悪いんですよっ!モリツネのらしくなさがうつったのです!!」

 マホは強引に話に一区切りをつけるといつも通り、無邪気におどけて見せた。

「なぁマホ。オレの目を見ろ」

 オレはマホより半歩前に出るときびすを返し、中腰になってマホに向き直る。

「も、モリツネ?」

「マホには、オレが何に見える?」

「・・・茶色っぽい髪の毛にパッチリ二重の目、普通の鼻に普通の口がついた典型的な普通のモリツネです」

「そーだろ?で、オレの目の前には青みがかった髪の毛に大きな瞳、全体的に幼いっつーか小学生くらいにしか見えないいつも通りのマホが居る」

「むむ、その言い方にはむかっ腹が立つのです」

 マホは同年代の女子、特にイヅルハなんかと比べると圧倒的発育の差がマリアナ海溝の如く横たわる。

 実際マホもそのことは気にしているらしく頬を膨らませた。いや、その動作も既に高校生とは思えないくらい幼いんだけどね?

「だからまぁ、オレもお前もそんなもんだろ。どんなに頑張ってもマホが化け物に見えるなんてありゃしねーよ。お遊戯会のお化け役ならともかく、な」

「むむむぅ、釈然としないのです。諭してるように見せかけて、実はモリツネケンカ売ってます?」

「まさか。あー、でも会話の着地点見失ったことは事実だわ。こっからどうしよう・・・」

「モリツネはバカ何ですか!?カッコつけるなら最後までつけて欲しいのですっ!!」

「そんな最後までチョコたっぷりみたいな事言われてもなぁ。ていうか今更だけどこの体勢、マホと顔が近すぎて恥ずい。なんかもう色々しくった感」

 なまじ中腰だからマホにより接近してしまっており、お互いの顔の距離は15センチないくらいだ。

 ここまで至近距離にいるにもかかわらず、しかし視線は交錯していない。マホは紅潮した顔をあちこちに向けて、目を泳がせている。

「人がさっきからずっと我慢してる事をよくも言えますねっ!だったら早く離れれば良いじゃないですか!いゃ、ちょっともう、ホントに恥ずかしいので・・・・・・」

 言葉尻をすぼめて、マホは夕焼け色に染まった顔をうつむかせた。商店街の窓に反射した太陽光が背景を幻想的に彩ってみせる。

 眼前の少女は、オレの心の深いところに爪を立てて掻きむしった。胸が破けて湧出ゆうしゅつする感情に嘘は無く、脈絡も無い。


「マホ、オレと付き合ってください」


「ーーーへ!?」

 やべ、なんか雰囲気に流されてうっかりとんでも無いことを口走ってしまった。

 マホが驚くのも無理はない。しかし、今の声、今の喫驚声きっきょうごえはマホの声だったか?

「え、えぇぇぇええぇぇえええッッ!!?」

 驚愕の大合唱が、賑やかな商店街の喧騒を破り、談笑中の主婦や店頭で野菜を売りさばく店主さんの注目を一挙に浴びた。

 いや、え?ふと、横を見た。50人くらいだろうか。随分と大所帯の高校生たちが、皆一様に目を剥いている。

 見覚えがあるな〜、うん。すっごいソックリだった。大所帯の先頭に立つ人物は、そういえばさっき救援を呼びにいかせた後輩のナタツカに激似だった・・・。

 というか、人事部員たちだった。オレは一世一代の告白を、どうやら最悪のタイミングでしてしまったらしい。

 にわかに訪れる沈黙の渦中で、目を潤ませた少女が果たして桜色の唇を開くーーー。


「はい」












 どうも!キズミ ズミです!!

 やっとこさ終わりました第1章!

 それに主人公自身の物語も第1部が終了した感じですね。

 こうも早く、悪く言えば性急せいきゅうに、良く言えばテンポ良く(?)物語が進んだ作品は案外レアかも知れないです。

 この物語は主人公が人事部に入部してから一年経っているところで始めました。

 主人公的には5章くらいのイメージなので読者さまに対する説明不足は本当に申し訳ありませんでした。

 「いや、人事部って何?」とか「おいおいおい、いきなりバトル展開始まったよ。何なのん?これ」とか思われた方、いや、もう、謝罪しか出ません。


 

 とは言え、そこら辺はキチンといつか説明するので是非今後とも読み進めていってください。








 延永のぶなが守恒もりつね


 年齢・・・17歳

 身長・・・176cm

 趣味・・・サイクリング、カラオケ

 SOS・・・『バリアを創る能力』


 バリアを創り出せる。ただし、展開範囲は自分の半径1メートルまで。

 エメラルド色のバリアで、絶対防御。

 物理的な障壁をノータイムで創り出せるので、魔物の攻撃を防御する以外に足場を創るという活用法もある。


 備考


 茶色の混じった黒髪を無造作に伸ばした髪型。

 顔の作りは悪くないが自分に頓着が無いのでファッションを気遣う事はなく、休日は一日中Tシャツ半ズボン。

 程よく筋肉の付いた身体、1年前から肉体改造に精を出しておりとりわけて持久力は見違えるほどのびた。

 学校では指定の制服に黒いベストを着て、緑の石がはめられたループタイを首に巻いている。
 
 現、人事部副部長の地位にいるが本人は役不足だと思っている。

 現生徒会会長のシーバと現人事部部長のマホを幼馴染みに持ち、昔、3人で一緒に暮らしていた事がある。

 1章最終話にしてマホに告白し、オーケーをもらう。

 1年生の時に経験したある事件がきっかけで後輩と接する事にためらいを感じるようになった。

 人事部歴代最強と呼ばれた人物を姉に持つ。










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コメント

  • Akisan

    1章お疲れさまでした!
    その調子でもう一作の方も頑張って下さい!

    1
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