スクールクエスト!

キズミ ズミ

7話 『映画版ドラえもん的な』



 『人間万事塞翁じんかんばんじさいおうが馬』と云う言葉がある。

 古くは中国に伝わる故事成語の一つであり、現代語訳すると『悪いことも結果的にはあなたのためになりますよ』。

 ーーーみたいな意味になる。

 なるほど、つまりは一年生の春、期待に胸と鼻の穴を膨らませて入部試験を受けたオレにもその恩恵は当然与えられるべきである。

 結果論として、オレはそんなもの与えられなかったのだがーーー・・・。

 ーーーオレの名前は延永のぶなが守恒もりつね。入部時の体力テストではマラソン中ゲロ吐いたため途中リタイア。

 ペーパーテストでの成績は受験者中ワースト1位を記録し面接では緊張でセリフ噛みまくりトチリまくり、面接官の明らかなヅラに大笑いしてしまい途中退室。

 ちなみに、実働部隊50人、情報処理部隊28人、特別技術工作部隊60人を束ねるーーー

 ーーー人事部現副部長である。異論は認めない。・・・認め、ない。





ーーーーーーーーーーー



「クエストを始めるっつーか、正確にはマホの受注したクエストをマホより早く解決するって事だろ。だが問題がある」

「マホッチがどのクエストを受けたか・・・、でしょ?その事ならもう目星はついてるわよ」

 さも当然のようにそう言ったイヅルハは電源のついたスマホをクルクルと手で弄んでいる。

「マジで!?」

「マジよ。マホッチが選んだクエストは十中八九、コレで間違いないわ」

 イヅルハがアプリをつけたままでスマホを長机に置き、オレとナタツカに差し出した。

 液晶に表示されていたのは、人事部のホームページだ。

 これは学園内外からのさまざまなクエスト窓口の一つである。

「なになに・・・『学園の生徒がカツアゲ被害に遭う事件が多発』?」

「今日の朝投稿されたクエストよ。危険性と緊急性、あとはマホッチの性格を考えればこのクエストを受けている公算こうさんは大きいと思う。ーーーただ」

 イヅルハは少しだけ目を伏せて、言い淀む。

「ここにはカツアゲされた場所は書いてないのよ。だから目標の人物が大体どこでカツアゲを行なっているか、特定は難しいわね」

「いや、イヅルハ。そう云う情報収集はイヅルハの専売特許だろ。お前ならこう、チョチョイっとツイッターにでも呟けば2秒で事が済む」

 流石に2秒では無理だろうが、実際イヅルハには我が校の生徒半数以上からの情報提供が可能である。

 人事部の情報処理部隊隊長の立場はダテじゃない。

 ーーーのだが

「ダメね。それは出来ないわ」

「ーーー?」

 イヅルハは首を横に振って瞑目している。

 どこかもったいぶっている様なその様子にオレとナタツカは固唾かたずを呑んでイヅルハの言葉を待った。

「ーーーだって今、速度制限中だから!」

「・・・・・・・・・はぁ!!?」

 パァっと、花も恥じらうほどのいい笑顔でイヅルハはとんでもないカミングアウトをした。






 

 










コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品