スクールクエスト!
5話 『会心の一撃』
オレよりもコミュ力、及び判断力に長けているナタツカならば、何か上手いフォローでもしてくれるのではないか、と思ったからだ。
「・・・・・・っス」
ーーーが、頼りのナタツカの瞳には諦観の念が宿っており天を仰いでいる。
ナタツカ諦めんの早えぇ!いつものバイタリティどこ行った!?
「・・・・・・ふぇ!?」
一瞬、誰の声が分からないほどに可愛い声が漏れるのを聞いた。
「も、もももももモリツネっ!あなたまさかコレを見たんじゃないなのですね!?」
「落ち着けマホ。動揺し過ぎて口調がおかしい事になってる」
「し、信じられないのです!有り得ないのですっ!女子のノートを盗み見るとはモリツネはふてぇ野郎だったのですね!?」
マホは顔を真っ赤にしてまくし立てる。
しかし小柄なマホは体格的にどうしてもオレたちを見上げて怒る形になってしまうので、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら怒っていた。
「江戸っ子入ったな。じゃない、すまなかった、マホ。最初に見つけたのは偶然だったんだが、その、あまりにも面白すぎて・・・!」
「クフォ・・・っ!!」
背後でナタツカが耐えきれず、噴き出す音が聞こえた。
実際、マホの怒りももっともだと思うし、だからこそ罪悪感で身につまされる思いだが、怒られている内容が内容なので折を見てあの少女漫画の光景がフラッシュバックするのだ。
「面白い・・・。モリツネ、ワタシの漫画は、面白かったのですか?」
「へ・・・・・・?」
それまでマホに下げていた頭を上げて、マホの顔を見る。
表情は、判然としない。マホが白いネコミミのキャスケットを目深に被ったからだ。
しかしマホから漂う怒気は何故かこの場においてどこかに霧散し、あたりに不可解な空気が流れ出す。
「・・・・・・ッ!!」
得心のいかないオレとは対照的に、ナタツカはハッと息を詰め、次のオレの言葉で全てが決まる事を悟った。
自然、送られてくるナタツカの熱視線。しかしその含意に気づけなかったオレはーーー
「ああ!超面白かったぞ!特にあのヒロインが主人公からプリントを渡されただけで惚れるシーンとかな!『ヒロインフォーリンラブチョロすぎだろ』つってナタツカと大爆笑してたな!!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・っスーーー」
場に重苦しい沈黙が席巻した。
ナタツカは空気を多分に含んだ声を漏らして、オレの背中を凝視している。
直撃するナタツカの物言わぬ意思にはおおよそ後輩が先輩に向けちゃいけない類の感情が含まれている様に思えた。
「う・・・。ふぇーーーーーーー・・・!!」
マホはエメラルドの瞳に大粒の涙をためて、その場で踵を返すと部室を飛び出て行った。
「あっ!マホ!?待ってくれ、悪かったから!」
マホによって勢いよく閉められたスライド式のドアはズダァン、と大きな音を立てて一旦は閉まるも作用・反作用の法則的に再び半分ほどドアが開いた状態になった。
そして開いた先に居たのは、高身長でギャルの様な風体の少女。
その派手なメイクとは反対に、凛とした顔でオレたちを見据えるその目はどこか冷たさを感じる。
「・・・何やってんのよ。アンタたち」
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コメント
虹ウサギ
チート無しクラス転移の方は書かれないのですか?三章楽しみです