スクールクエスト!

キズミ ズミ

4話 『部長はデロ甘がお好き』




「く、くくくくくく・・・ッ!相変わらずマホのやつデロ甘な少女漫画が好きなんだな」

「マホッチ先輩マジ可愛いっス・・・!あ、ノブセン、この話のサブタイトル見ました?」

「見逃した、何だった?」

「『LOVE ️インフィニティ』っス」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・ッッ!!!」

 15畳ほどもあるだだっ広い部室の片隅で、オレとナタツカはノートを開き笑い合っていた。

 抱腹の渦中にあるノートには我が部活の部長自作の少女漫画が描かれている。

「つっても普段不思議ちゃんな感じ出してるマホだけどやっぱあいつも女子なんだな」

「ノブセン、その発言際どいっスよ。本人に聞かれたらマジでーーー」

千年ちとせ真秀まほ、定刻より遅れて来着なのです!」

 ノックもせずにガラリとドアが開かれた先に、幼げな少女が立っていた。

 青みがかった髪の毛を肩甲骨辺りまで伸ばし、顔立ちはオレと同級生なのか疑わしいほどに幼いが、人目を引く魅力は既に成熟していると言ってもいい。

 頭にかぶった白いネコミミのキャスケット、エメラルドの瞳、形のいい小鼻をスンと鳴らして、その少女はいつも通り自信満々な表情だ。

 誰であろう、そう、彼女こそまさしく、このノートに描かれている漫画の作者であり、我が部活の最高権力者、千年ちとせ真秀まほである。

「イヅルハさんは居ないのですね。うーむ、なのです。今日のクエストはちょっと急がなければいけない案件なのですがーーー。・・・モリツネ?何をそんな隅っこに居るのです?」

「ん?あー、まぁ何でもないさ。貧乳派と巨乳派に分かれて熾烈な論争を繰り広げていただけだ」

「ちょっ!?ノブセン、やめて下さいっス!ノブセンと違って自分、女子の前では下ネタ言わない系男子やってるんスよ!?」

 マホに聞こえないほどの音量だがオレの耳元で抗議してくるナタツカを完全に無視してマホを真っ直ぐに見つめた。

 コイツの勘の鋭さはマジで野生動物のそれだからな・・・!少しでも目を逸らせば嘘が看破されてしまう。

「むぅーん。そうでしたか。ワタシには分かりませんが男子ならばしょうがないのでしょう。ところでーーーモリツネ」

「あなたは胸、大きい方と小さい方のどちらがいいのですか?」

 心なし声をひそめて、神妙な顔でマホは問うた。

「無論、巨乳派」

「・・・・・・・・・そうですか、ならば!」

 マホは肩から下げていたスクールバックをモーニングスターの様に振り、遠心力をつけると空中に半円を描いてオレの腹部を直撃した。

「ぐえぇ・・・ッ!?」

 図らずも想定外の衝撃に体内から空気が逃げ出して酸素が欠乏し、むせ返った。

「神聖な部室で不健全な話をしていた罰なのです。要、反省、です。ーーーおや、コレは・・・?」

 マホはふくれっ面でオレへの制裁を正当化すると、足元に投げられたノートを拾った。

「・・・・・・マズい!!」

 瞬間、オレは己の失態を悟りナタツカの方を見る。

 
 



 


 









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