裏切られました。

おれんじ

どうして

「私、怜斗くんのこと好きなんだ」
「…!」
予想以外の言葉にカナは頭が真っ白になった。
__怜斗のことが好き
桃花は確かにそう言った。
「(どうしてこんな混乱してるんだろう…)」
それは、
怜斗が好きだから。
初めて気づいた。
「それでね!カナちゃんに応援して欲しいなぁって思って…」
気づけた。だから
「できない」
咄嗟に出た言葉がそれだった。
「なんで…?」
桃花はカナの言葉に涙目になっていた。
「私は…」
言いかけたところで口ごもる。
すると、桃花は言い放った。
「どうして…私達友達でしょ?応援してくれないの?……あ、そっかァ」
桃花は転校してきた時とは打って変わって、嫌な笑みを浮かべる。
なにか、企んでそうな、そんな顔だった。
「な、に」
嫌な汗が頬を伝う。
「カナちゃんも怜斗くんのこと好きだもんねぇ?」
「…っ!どうして…」
桃花は再び嫌な笑みからいつもの笑顔に戻る。
「あ…」
怜斗が来たからだ。
「怜斗くん!どうしてここに…」
「あー…桜がカナが遅いって言うから探しに来た。」
「忘れてた…」
カナは、すっかり桜のことは忘れていた。
「怜斗くん!早く帰ろう?」
「…おう!」
桃花はまるで恋人のように怜斗の腕に自分の腕を絡めた。
「っ…」
その光景を、カナは見ていられなかった。
今すぐこの場所から逃げだしたかった。  
「あ…わ、私桜待たせてるから、じゃね!」
「あ、お、おい!」
怜斗がカナを呼び止めるが、カナは走って行ってしまった。
「怜斗くん!早く帰ろ?」
「…おう」
怜斗の表情はどこか寂しそうだった。
桃花は怜斗の表情に不満になった。
「…あのね、怜斗くん」
「ん?」
「さっきね、カナちゃんがね」
「うん」
桃花はさっきの出来事を話す訳でもなく、こんなことを言い始めた。
「カナちゃんが…私のこと、ウザイって言って…っ手首ギュッて掴まれて…っ」
桃花は涙目になりながら、怜斗の方を見上げた。
「は…?」
怜斗はもちろん驚いた顔をしている。
「カナがそんなことするわけ…」
「信じてくれないの?」
桃花は更に目に涙を溜めながら下を向いた。
これももちろん演技だ。
「……」
怜斗はさっきから黙ったままだった。
信じられない。
そんな顔だった。
「怜斗くん…怖いよぅ…」
桃花は声が震えていた。
「桃花ちゃん…」
それは
「大丈夫だよ、俺が守るから。」
「怜斗さん…!」
桃花が笑いをこらえていたから。
その頃のカナは、桜と二人でカフェに行っていた。
これから起こる悲劇も知らずに。




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