そばにいて

ノベルバユーザー215019

当たり前の日常

「おはよ、拓巳!」
「...ん」
好きな人が、恋人が、目を覚ますと笑っている。
いつも通りのことだけど、凄く特別なことのような気がする。
「何寝てんのーっ?ここ、学校なんですけどぉ?」
机に突っ伏して、寝ていた俺の顔をのぞき込む彩花。
「...やめろよ」
「えー?」
ニヤッとした笑顔を浮かべ、俺の耳元に顔をよせる。
なんだよ...。
「おーきーろー!!」
「うわっ」と、突然の大声に驚く。
耳元で大声出すなよ...、怒ろうとしだけど上目遣いで見つめられ、何も言えなくなる。
「...うるせー」
午前の授業が終わったから今から昼飯だ。
机を動かして、友達と食べようとする人や屋上へ行こうとする人が出てきた。
腹減ったな...。
「ちょっと、購買行ってくるわ」
そう言って席を立つ。
彩花は「行ってらっしゃーい、いつもの場所ね」と笑いながら手をふっている。
こんな、当たり前の日常。
何もかもが、なくなってしまうなんて、壊れてしまうなんて、この頃の俺は気づいていなかった。

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