キミイロ日記、優しい嘘。

雪村 ましろ

22,紅愛。ーあかいー

コンコンコン。

静かな病院に響く音は、私の心を恋色に染め上げるようだった。

この先に私の好きな人が待っている、そう考えただけでそわそわして落ち着かない。

けれど、ドアの先からは応答はなく、音のひとつもない静かさだった。

まるで人が過ごしている気配が無いような。

「時雨君…?」

不審に思った私は、返事を待たずにそのドアを開けてしまった。

「時雨君?…いない。」

おかしい。
この時間はいつも本を読んでいる筈なのに。

一体何処に…

そう思った時だった。
私の目に飛び込んできた景色は私の心を真っ赤に染めた。

「時雨君?え、どうしたの!?…そうだ、先生呼ばないと…」

血を吐きながら、苦しそうに呼吸をしている。

どうしょう…どうしたらいいの…?


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