キミイロ日記、優しい嘘。

雪村 ましろ

12,痛残原飲。ーいたみのげいいんー

「快海先生、どうでしょうか…?」

見る限り、先生はかなり困っていた。

「えっと…体に問題はないかと思われます。」

少し自身無さげというか、おもむろに目を逸らされるのですが。

「そんなわけっ…だって、こんなに胸が苦しいのに…」

やっぱり、重病にでもなったのか…
そりゃそうか、こんな症状聞いたことないし。

「わかりました、そこまで言うなら無理に先生からは聞きませんから。」

「え、あの…?」

「先生が口にするのも恐ろしい病気を患っていたって、私に生きがいも未練もないので、ご安心を。」

「いやっ…そうではなくてですね…」

快海先生は焦ったように口走る。

「叶雨さんの症状は…その、心理的なものかと。」

「心理的…?」

「はい。心理専門ではないので、私からはなんとも言えませんが、おそらくは心理、精神的なものかと。」

「つまり…私は死なないと?」

「まぁ、おそらくは。カウンセリングの小林先生にお話しの予約を入れておきましょう。」

私は…まだ死なない。
その言葉にほっとする自分がいた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品