キミイロ日記、優しい嘘。

雪村 ましろ

2,恋君恋。ーこいきみこいー

9月30日。

自分の個室に入ると、知らない青年が私のベッドに座り、本を読んでいた。

「そこ、私のベッドなんですが…貴方は…?」

青年は何も答えなかった。
少し不思議に思った私は彼の顔を覗き込んだ。

凄く真剣そうな、けれど無表情な、何を考えているのか、本に夢中になっていた。

長いまつ毛、整った眉、髪は少し茶色がかり、太陽に照らされた髪は赤く燃えるようだ。
瞳は青く、そこに映るのは本の世界。
誰が何処からどう見ても綺麗な顔立ち。

もしかしたら、人形なのかもしれない。
そう思わせるほど美しい。

「ここ、僕の個室だから、君が間違えてるんじゃないの?」

初めて口を開きこちらを見る青年に、少し驚く。
動く日本人形みたい。

「ね、違ったでしょ?何…あんまりジロジロ見ないでよ。」

か細く、声変わりの途中のような掠れた
声。

“ 吸い込まれる、溶け込む ”

私の頭にはその言葉が浮かんだ。
しかし、彼は血の通った人間じゃないみたいだった。

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