天魔界戦

皇神凪斗

第25話 起死回生

「このまま相手の攻撃を避け続けても勝利は無い⋯なら、覚悟決めて行くしかねぇよな!」
アルマは煙の中、水の雫を飛ばす魔道士へ向けて走り出す。
煙の中の男は当然、阻止する。
「ついに動いたな⋯首を吹っ飛ばして俺たちの勝利だ!」
男は走るアルマの背後から静かに走り、追いついて短剣を首目掛けて振り下ろす。

「!?⋯こいつ!!」

完全に振り下ろすモーションに入った途端、アルマは横に体を傾ける。短剣は空を斬り、男は体勢を崩す。
アルマは左足で男の腹を蹴り飛ばす。
男はしっかりと受身を取り、難なく立ち上がる。
「お前、背中に眼でも付いてるんじゃないの?」
「いいや。避けたのは勘だ。何となく、後ろから狙われてる気がした。」
「へぇ〜。参考になる戦術だね!」
ムスッとした顔で男は新たな短剣を取り出して構える。
「一旦、煙に隠れて⋯。」
「させねぇよ!『グランドクェイク』!」
アルマは魔法陣を纏った手で地面を叩く。
アルマを中心に爆音と共に振動が広がる。
そこにいる皆全員が堪らず地面へ張り付く。
「『刀身魔装』!」
アルマの剣を魔力が包む。包んだ魔力は細長く伸びる。
伸びた剣を男に向かって振りかぶる。
「くっ!『跳躍移動』!」
男は魔法陣を踏み台に飛んで回避する。
「!?⋯やるな!
でも⋯シャール!」
「はい!『大風輪』!」
シャールを中心に風が吹き荒れる。風はぐるぐると渦巻きながら煙を吸い込んでいく。
「な、おわぁぁあああ!!!」
飛んでいた男は風に巻き込まれ、高く打ち上げられる。そのままステージ外へ放り出されて消滅する。
「なるほど。これが狙いだったわけか。」
風も地震も収まり立ち上がるゼツが呟いた。
「地震を起こしたのは全員を地面へ張り付かせて、風魔法による同士討ちを避けるため!」
あいつ飛ばされた男に自分を狙わせたのは、魔法を使うのを邪魔されない為!」
相手の魔道士達も驚きと焦りで動揺していた。

そんな相手を見ながら、アルマは呟いた。
「でもまあ、時間切れ⋯だな。」



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