天魔界戦

皇神凪斗

第51話 迫り来る追手

ロキの体に巻きついた包帯には血が滲み、所々切れかけている。
街を様子を見た限り戦いながらここまで逃げてきたのだろう。
「何とかやってみる。」
アルマはおもむろに剣を取り出す。天界で天使から奪った物だ。
「お、おい!何する気だ!」
ゼツが慌ててアルマを制す。
「この剣には今、ミカエルが取り付いてる。ちょっと力を貸してもらおうと思ってな。」
《私の力が必要なのか?アルマ。》
「あぁ、俺に回復魔法を教えてくれ。治したいのはコイツだ。」
アルマは当然、ロキを指さす。
《分かった。剣に手を添えてくれ。》
言われた通りアルマが剣に手を添えると、剣に魔法陣が浮かぶ。その魔法陣に魔力で触れる。
「よし。『ヒーリング』!」
アルマがロキへ向け魔法を発動する。
ロキの身体の傷がある箇所に魔法陣が浮かぶ。
魔法陣から光が降り注ぎ、雪のように傷へ溶ける。
包帯の隙間から覗く傷がゆっくりと塞がっていく。
次第にロキの寝顔も落ち着いた表情へ変わっていく。
「・・・とりあえず傷は塞いだな。あとは・・・。」

ドンドンッ!っとドアを叩く音が聞こえた。
「失礼!管理政府の者だ!この辺に脱獄犯が逃げ込んだと言う情報を聞き、調査に来た!いるならドアを開けてくれないか!?」

「嫌なタイミングね。今私達の居場所がバレれば包囲されるわ。このまま大人しくしているしか無いわね。」

息を殺して数分待つと、複数の足跡が離れていくのが聞こえてきた。
「やり過ごしたか?」
「それじゃ、この隙に───────」

バンッ!と小さな爆発音が聞こえる。
直後、ドアの破片が廊下に散らばる。
差し込む陽の光。無理矢理こじ開けられたドアより入ってきたのは一人。

「逃げられると思ったか?ロキ、アルマ。」
それはルーズだった。



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