天魔界戦

皇神凪斗

閑話 魔界にて

『魔界』
ある場所は木が自然発火を起こすほど熱く、
ある場所は水滴が一瞬で凍るほど冷たい。
とても人間の生きられる環境では無い場所だが悪魔達は各々の魔王に忠誠、あるいは共感を抱き住処に境界線を設け人間で言う所の『国』を創り出し人間のような世界で悪魔は日々を過ごす。
いつも戦いの耐えない魔界だったが『その時』は静かに状況が変わるのを待っていた。
『その時』とは、ロキとシャールが魔界に潜入した時である。
悪魔達はまだそれを知らない。しかし、人間が天使にも劣らない脅威となりえる事を知っていた。
そして、天使がそれを良しとしない事を分かっていた悪魔達は天界軍が攻め入るのを待っていた。

ロキとシャールは密かに悪魔を倒して回る。
一人の所に奇襲。目撃者は排除。
決して多くはない人数で弱い悪魔ばかりだが、全ての悪魔にロキの存在を感じさせることが出来た。
そして、死闘の末。とうとう魔王を一人倒す事に成功した。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。
魔力も体力もギリギリだった。これで最弱の魔王だと?ふざけた話だな・・・。」
「ハァ・・・ハァ・・・。では速く、人間界に戻らなければ・・・。」

「まあ、そう急ぐな。」

「「!?」」
いつの間にか背後に立っていた『ベリアル』
急に火柱が上がり、ロキとシャールが逃げるのを阻止する。
「(ヤバい・・・こいつはヤバい!よりにもよってこんな状態で見つかるとは。いや、例え全快した状態でも逃げ切れるかどうか・・・。)」
「どうした?言葉は分かるだろう?」
ロキは少しだけ振り返る素振りを見せ、ベリアルがそれを止め無いことを確認すると完全に振り返りベリアルの姿を確認する。
「何故・・・俺達を殺さない?」
「殺そうと思えばいつでも殺せる。だが、ただ殺しても面白くない。人間と話す機会はあまり無い。大抵は逃げるか、怒ったような恐れたような変な表情で向かってくるだけだからな。」
それを聞くとロキは─────

─────土下座をする。

「ロキ!?」
「・・・頼む。俺の命などどうでもいい。このシャールだけは逃がしてやって欲しい。」
「ふむ。(自分の命は捨てて、他人の命を乞う人間は初めて見たな。)
・・・お前は何故その女の為に命を賭けられる?」
「・・・・・・シャールがここに来たのは俺が付いて来いと言ったからだ。」
「ロキ!それはちがいます!」
「シャル。お前は俺に出会わなければこんな危険な目に遭うことは無かったはずだ。
つまり、ここで死ぬとしたら俺の所為だ!!
そんな事は許さない!例えこの命を捨ててもお前を救う。」
ベリアルはロキを深く見つめる。外見だけでなくその内面をも。
「(この男、呪いをかけられている。それはこの男にとって最も残酷な呪い。だがそれを女に悟らせないような演技・・・違うな。呪いなど跳ね除ける程の・・・。)」


「・・・フッ。クフフフフフッ!
女々しい男だが逆に気に入った。この先、お前達がどう未来を生きるのか見届けたくなった。」
「『達』?俺を殺さないのか?」
「あぁ、天使達は気に食わん。天使達の前で堂々と力を貸すことは出来んがそれ以外は協力してやろう。」

こうして、ロキとベリアルは契約を結んだ。



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