天魔界戦

皇神凪斗

第30話 殺しの技術

カイトの胸にサマエルの剣が突き刺さる。
ゴゾッ!と不可解な音が響き、カイトの動きが止まる。
「惜しかったな。
・・・最後の攻撃、かなりの痛手だったが俺を殺すにはやや浅い。俺に反撃の隙を与えたのがお前の敗因だ。」
サマエルがカイトから剣を引き抜こうとしたその時。

「・・・まだ、だ。」

「あ?何か言ったか?」
「俺の攻撃はまだ最後じゃない!!」
カイトは魔法を発動。サマエルが貫いたその身体が瞬く間に凍りついていく。
それはサマエルの剣をも同時に凍らせ、更にサマエルの腕をも凍らせた。
慌てて右手を離すサマエル。
「氷像の分身だと!?
本体は何処に?」
シュッ!と何かが通り過ぎる。サマエルが通り過ぎた影を目で追うと、視界に右腕が映る。
勿論、その腕はサマエルの腕だ。一瞬の隙でカイトはサマエルの右腕を切断した。
「違う!こいつも氷像だ!」
その腕を落としたのはまたしても氷像の分身だった。
サマエルは左手で氷像を破壊する。
「クソっ!本体は何処だ!」
サマエルは周りを見渡すがどこにも居ない。
サマエルの剣が突き刺さった氷像にヒビが入る。一瞬、見つめたがただの氷像を見ている訳にも行かずまた周りを見渡す。
ヒビから氷像が完璧に崩れる。
カイトの氷像が掴んでいた神槍も当然──────


────否、落ちなかった。

その氷像の中から肌色の手が覗く。その手はしっかりと神槍を握りしめ、サマエルの左腕を狙う。
気づいた時には遅かった。
サマエルの左腕が飛ぶ。
「(なんて奴だ!自身の身体を凍らせて氷像に擬態、凍った腕を本当の分身で切断。
そして、分身を俺に破壊させもう片方の腕を濡らす事で神槍の力で切断。
自分が貫かれた事を逆に利用して俺を嵌めるとは!)
舐めるな!この腕なんぞすぐに作り直して!」
「そうだ。お前の腕はすぐに作り直せる。
しかし、お前が何かを作るのは液体状態の溶岩で形を生成。個体化させて固定すると言ると言う手順。
そう・・・ここまで近づいてしまえば!!」
カイトは神槍を突き出す。
サマエルは溶岩で右腕を生成しながら神槍を掴もうとする。
「!?・・・まさか!」
「もう遅い!『引き裂け トリアイナ』!」
神槍は作りかけのサマエルの腕を引き裂き、サマエルの肩から体内へ侵入。

『心臓』を貫く。

「ガッ・・・。」
サマエルが血を吐き出す。
「『心眼』で見えていた。お前の体内には凄まじい魔力の塊がある。どうせそれが弱点だろう?」
「ヘッ・・・やるな。」
カイトが神槍を引き抜くとサマエルはよろめき、地面へバタりと倒れる。
そして、身体が液体化し血が溢れ始める。
「あぁ・・・人間、お前との戦い。悪くなかったぜ。」
「人間は下等生物・・・じゃなかったか?」
「お前が勝てたのは結局はその神器のおかげだ。だが強敵との戦いなら何でも歓迎、悪魔にとっては戦いこそが最高の娯楽。
最後に最高の戦いが出来た・・・満足だ。」
サマエルの身体は黒い塵になっていき、風に飛ばされ消えていった。

「良く分からんが・・・お前と戦った意味は大いにあった。
俺は強くなれたと実感を得ることが出来た。礼を言っておく。」


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